第12話
──つかさは緩む頬を必死で引き締めている。
待ち合わせ時間よりも二十分前に到着し、一番のりは自分だと思っていたら、駅前広場には既に飛鳥と新菜の姿があった。
しかも、なんだか良い雰囲気だ。
もう少し、二人の様子を堪能しようと思ったつかさは、声を掛けるのを止め、二人の姿を物陰から見つめる。
飛鳥と新菜は気まずさを携えながらも、時に楽しそうに、時に顔を赤らめながら会話している。
いっそのこと、待ち合わせ時間ギリギリまで二人の見学をしようかと思った、その時。
「お、おはよう」
唐突に隣から声がした。
つかさはビクリ、と肩を震わせ、声がした左側を見ると、新琉が立っている。
「……おはよ」
「……あの二人の邪魔はできないよね」
新琉が言うと、つかさは「うん」と答える。
それから、しばらく無言の時間が流れる。
「僕、炭酸買ってくるね!」
「へ? あ、はい。どうぞ」
新琉はコンビニへと走っていき、ものの二、三分でまた帰ってきた。
「はい!」
新琉はつかさへ、今買ってきた炭酸飲料を差し出す。
「……私に買ってきたの?」
「うん!」
「……い、いいよ。大丈夫。自分で飲んで」
つかさは頑として差し出された炭酸飲料を受け取ろうとはしない。
「アハハ! いいよ! 気にしないで」
新琉はつかさの素っ気ない態度に気を悪くする様子はない。
むしろ、嬉しそうに笑い、あくまでも突き返された炭酸飲料を受け取るつもりはないらしい。
「それに、僕、炭酸飲めないし」
(そうなの? ……なんで買ったんだろう……私も炭酸嫌いだったら、どうするつもりだったんだろう……)
つかさは内心、困惑する。
だが実際のところ、つかさは炭酸飲料が大好きだ。
新琉に声を掛けられる前も、コンビニに行って買ってこようか、でも飛鳥達のことが気になるし、と考えていたところだ。
さすがにこれ以上押し問答を続ける訳にはいかないと思ったつかさは、「じゃあ、お金払うよ」と言ってバッグの中の財布に手をのばす。
「勝手に買ってきたんだから、いらないよ」
新琉は笑顔で、しかし少し頑固さも感じられる口調で言った。
「……ありがと」と呟き、炭酸飲料の蓋を開ける。
「どういたしまして!」
新琉の
そして、思わず手にした炭酸飲料をゴキュゴキュと喉を鳴らしながら飲んだ。
「おはよー」
待ち合わせ時間の五分前に新琉とつかさが揃って現れた。
「さっき、コンビニのトコで会ったんだ」
そう言った新琉と斜め後ろに立つつかさのことを、好奇心を含んだ目で見てしまうのは仕方のないことなのだ、と飛鳥は自分に言い聞かせる。
つかさとの関係を取り持つ約束をした新琉の気持ちはもちろんのこと、つかさの方も新琉に好意を持っていることは、長い付き合いの飛鳥からすると明白だ。
だから、思わず口に出してつかさを怒らせてしまった訳で、今日は絶対に余計なことは言わない、と飛鳥は自分に強く言い聞かせた。
新菜の方も、双子の兄である新琉がつかさに出会って間もなく好意を持ったことにはすぐ気がついた。
つかさも新琉の好意に気づいた時の反応からして、飛鳥が指摘した通り、きっと新琉に好意を持っていると新菜は考えている。
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