日々の世話


 畑では、きゅうりがすくすくと育っていました。櫓を組んだ支柱に沿って上へ上へと順調に蔓を伸ばし、黄色い花を咲かせています。あと数週間もすれば実がなることでしょう。


「アピィちゃんのおかげですね」

「ぽふぃ~」


 スイィも同意します。


 わたくしが世話をできない日も、アピィが灌水装置を操作してくれるおかげで、こうして野菜は元気に育つのです。


 けれど、それだけでは野菜の健康は保てません。


「うわキモっ!」


 エイヤが飛び退きます。


 きゅうりの一株に蟻がたかっていました。よく見ると葉の裏にびっしりと小さな虫が付いています。これは文献にあるアブラムシでしょうか。実物は初めて見ます。


「……虫取りの末裔、出番ですよ」

「イヤァ」

「まったく。タテマエを守る素振りぐらいは見せてくださいよ」

「無理無理無理無理」


 仕方ありません。


「エイヤは草むしりをしていてください。虫は、わたくしが」

「うむ、善きに計らえ」


 遠巻きに腕を組んで、お父様の真似をするエイヤです。


「……」


 面倒なことは下々にやらせるところはそっくりですが、不敬にもほどがあります。


 さて、エイヤは放っておいて、葉の虫を捕っていきましょう。葉を一枚一枚めくりながら、絵筆の筆先や麻布で擦り、虫を落としていきます。


「ぽふぃ♪」


 スイィも一緒に虫を捕ってくれます。口腕で掬うように捕まえては、幻海に口腕を突っ込みます。そうすると、幻海に行けない虫たちは現に取り残され、そのまま地に落ちてしまうのです。


「はぁぴ?」


 小屋から顔を出したアピィが、しげしげと野菜を見つめます。やがて、スイィに続き、虫を捕りはじめました。


「ぽふぃ」

「はぁぴ!」


 物理干渉をすれば消耗するスイボにとっては、例えアブラムシであっても荷が重い作業です。あとでご褒美をたっぷりとあげなければなりません。



 仕上げに、薄めた酢を葉に吹きつけていきます。これで少しは害虫や病気を防いでくれるでしょう。

 

「アピィちゃん、水やりをお願いします」

「はぁぴ?」

「スキル【ファンクション】アピィちゃん水やり」


```csharp


public async Task アピィちゃん水やり(SwiboContext context, CancellationToken cancellationToken)

{

var apii = await context.Swibos.FindByNameAsync<SwiboBot>("アピィ", cancellationToken);

var home = await context.Homes

.FindByNameAsync("アピィちゃんの作業小屋", cancellationToken);



await apii.SummonToAsync(home, cancellationToken);

await apii.PressAsync(cancellationToken);

}


```


「はぁぴ♪」


 アピィは幻海に潜り、作業小屋の中で再び顕現します。そしてレバーを押すと、畑に小さな噴水が上がりました。


 その後も、順調にきゅうりは成長し、実が大きくなっていきました。しかし、もう少しで最初の収穫というところで、大事件が起きたのです。


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