第3話 炎上
「俺はな、一応記者の端くれなんだ。」
「へえ…」
「今はな、まあ色々あって三文記事書いてる。まあ、ネットの娯楽記事ってのかな。ネタ拾って適当に話題のドラマやアニメやニュースなんかの面白可笑しい記事を上げて一定のアクセス数稼げればノルマ達成よ。」
「ふうん。楽しい?」
「うーん、まあ仕事だからな。仕事に楽しさ求められてもなあ。生活の為には楽しさは必要無いんだよ。」
「そう。何で記者になったの?」
「まあ、世の中の間違ってる真相を暴く!ペンは剣より強し!ってな。そんな青臭い思いもあったけどな。昔はな。」
「へえ。今は無いんだ。」
「まあ、大人には色々事情ってのが有るんだよ」
「まあ、僕は三田さんより長生きしてる大人だけどね。」
「あっ!そうだったな。あはは」
「でも、楽しく無くても記事を書いてるんだね。記事を書く事が好きなんだね。三田さんは。」
「そうだなあ。何でだろうなあ。ははは」
見た目子供の吸血鬼ミロに指摘されて、ハッとしてしまった。
何でこんな誰でも書ける記事を書いてまで記者に縋りついてるんだろうなあと。
娘が卒業するまでは…て理由を思っていたが、別に記者で無くても生活は出来る。
もう俺はどうする事も出来ないのに、なぜ未練がましく縋り付いているんだろうなあ。
ミロが指摘した様に記事を書く事が好きなのかなあ?
「何か自分から書きたいって記事は今は無いの?」
「うーん、まあ無い訳じゃないんだ。でもなあ、書いた所でまた潰されるだろうなあ。」
「へえ。潰されたんだ」
「まあなあ。所謂、知っちゃいけない事を知っちゃったって奴よ。書き終えて入稿までしていざ印刷って所まで行ったけどな、仕上がってみたら別の記事になってて、俺は今の部署に飛ばされてたってな。」
「ふうん。面白い記事だったんだろうね。」
「まあな。多分世間が大騒ぎする位にな。でも偉い人には面白く無かったんだろうな。」
「そう。もう面白い記事は書かないの?」
「そうだなあ。」
「面白い記事は書きたくは無いの?」
「そうだなあ。どうなんだろうなあ。」
「じゃあ、そろそろ日の出が近いから、また来月宜しくね。三田さん。食べ物とか不摂生しないでね。血が不味くなるからね。ふふふ」
そう言ってミロは立ち去った。
○○○○○○○○○○
「先輩、見ました?これ」
「何だ?」
『寺元議員、総裁選出馬表明』
「ふうん。」
「前に先輩この人のスクープ追ってませんでした?」
「そんな事もあったような無かったような…良く知ってんなお前。」
「まあ、俺も週刊誌出身なんで、先輩の噂は聞いてますよ。」
「成る程な。お前も飛ばされた口か?ははは」
「まあ、似たような物かもですね。」
「お前は鬼滅の牙でも読み込んどけ。もう炎上させんなよ。俺は呪術を実写化したら誰が良いかって考察して炎上狙ってアクセス数稼ぐから。」
「煽って稼いでどうするんですか…俺は五条は流星君かなって思いますが。」
「何気に乗っかってくんなよ。ははは」
寺元なあ…
○○○○○○○○○
「何ですかこれ!?なんで川中の不倫ネタになってるんですか!?」
「こっちの方が世間は喜ぶだろ。あの洗剤CMでお馴染みイクメン川中がまさかのセクシー女優とホテルで密会!?竿男に転職か!?ってな。」
「別にこのタイミングじゃ無くても良いんじゃ無いですか!?」
「ネタは鮮度とタイミングが必要だろ?川中が大河決まったこの最高のタイミング逃していつ出すってんだよ。川中炎上、暫くこのネタで繋げられるな。」
「…なら、俺の記事は次号に回るんですか?」
「お前の記事はな、永遠に載らない。」
「…」
「来月からお前はネット記事の部署に移動になった。」
「…」
「どうする?」
「分かりました…」
「そうか。」
「でも…俺は諦めません。」
「あんな、三田、俺は好きでこんな事してる訳じゃない。俺だって記者の端くれだ。お前の気持ちは痛い程よく分かる。でもな、これ以上関わるな。これだけで済まなくなるぞ。娘、まだ小さいだろう?奥さんも心配するぞ」
「…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます