26話

結斗 said


朝、目が覚めたときから最悪だった。


行く気もない学校へ、

瑠維に無理やり車に押し込まれ、

エンジンの振動に体を預けるしかない。


昨日の怪我の痛みも残っている。

それに、あの女の情報も手に入らない。

焦りとイライラが、胸の奥でぐつぐつと煮えたぎる。


学校に着き、いつもの溜まり場へ。

端の特別な教室に、幹部たちが集まっている。

学園長は、黒唯皇帝の5代前の先代──渋谷大夢。

この学校には、何かと俺たちに便宜を図ってくれるらしい。


部屋には、幹部5人。

そして、大男──鳴海麗も同席していた。

「ナル、起きろよ」と海聖が声をかける。

「れーちゃーん」と瑠維が呼ぶと、蹴りを入れる。

ナルは、自分の名前で呼ばれるのが嫌いだ。

俺も人のことは言えないが、なんだか可笑しい。


くだらないやりとりを眺めながら、

窓から天を仰ぐ。


頭の中は、昨日の女でいっぱいだ。


肌の色、青い瞳、細い指先、

震える手で俺の傷を拭いてくれたあの手の感触。

声のトーン、必死な表情、

全てが鮮明に覚えている。


(……なんで、こんなに……気になるんだ……)


思考を振り切ろうとしても、

視界の端に浮かぶ彼女の姿が、勝手に脳裏を占領する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る