24話

「れーちゃん、私、行くね?」


小さく声をかける。

返事はないけれど、いつもなら笑ってくれるれーちゃんの顔を思い浮かべる。


教室を抜け出し、屋上への階段を上る。

誰もいない屋上。


青い空が、広がっている。

風が柔らかく吹き抜け、制服の裾を揺らす。


青……好きだな。

綺麗で、パパに似てる目の色だから。

なんだか、胸の奥が少しだけ温かくなる。


リュックを下ろし、イヤフォンを耳に差し込む。

音楽が流れ始めると、自然と体が動き出す。


昨日のことも、怖かった気持ちも、全部頭の隅に追いやって。

ただ、リズムに合わせて、ステップを踏む。

手の動き、足の動き、体全体で音楽を感じる。


息が上がるのも、汗が流れるのも、全部気持ちいい。

この瞬間だけは、何もかも忘れられる。


――結斗のことも、怖い人だけど綺麗だった顔も、

ふとした瞬間に思い出すけど、

今はただ、この青の下で踊っていたい。


音楽と空と、自分の体だけ。

屋上の青は、私のすべてを包み込んでくれる。


そんな姿を、誰も見ていないと思った。


風と音楽だけが友達で、

屋上の青の中で、自由に踊っていた。

体も心も、思いきり解放されていたはずだった。




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