20話

「……え? ユイ、女を探すって……?」


海聖が眉をひそめ、思わず口をつぐむ。

瑠維は肩を揺らして笑いをこらえられなかった。


「礼を言う? 何言ってんだよ……」

笑い声が小さく漏れる。


「おもしれぇな……」


夜の公園に、ざわつく笑いが混ざった。


「……あー、もしかして……

ユイにも春ってやつが来んのか?笑笑」


海聖が肩を叩き、口元に笑みを浮かべる。


「マジかよ。

俺ら、あいつの恋愛事情なんか聞いたことねぇぞ」


「いや、聞きたくもねぇけど……

こうなると、ちょっと興味湧くな」


瑠維はリュックを抱え直しながら、遠くで走り去った女をちらりと見る。


「……誰だよ、あの小さな女」

「……でも、ユイがあんなに気にすんの、初めて見た気がする」


二人は顔を見合わせ、笑いをこらえながら、

夜の公園に立つ総長を後ろから見守った。


「……おもしれぇ、マジで」


そう言いながらも、

胸の奥ではちょっとだけ、あの女が気になって仕方ない総長を、微かに楽しんでいる自分たちに気づいていた。

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