第11話 監督の逃亡と脚本家最終決戦
💥 監督、遂にギブアップ!
場所:制作会議室
時間:深夜
プロデューサー:「では、次のプロット、**『入田親誠の粛清』**の場面。宗麟が『大義』をもって血の呪いを断ち切るか、それとも『業』に取り憑かれて冷酷な王となるか…両先生に試作を…」
大下ユージ:「当然、『大義』ですよ。若き王が、苦渋の涙と共に奸臣を斬り、新たな時代を築く…」
鷹山:「ふざけるな!王になった途端に、自分に手を貸した入田を、『前当主暗殺の首謀者』という濡れ衣で殺す。これが『呪い』でなくて何だ!?義鎮の顔は、血に濡れた玉座の上で冷たい仮面に変わるんです!」
両脚本家は再び激しい口論となり、互いの脚本を机に叩きつけ合う。
監督(伊武雅刀):(疲労困憊の表情で、突然立ち上がり)「ああ、もうやってらんねーよ!」
全員が沈黙する中、監督が怒鳴りつける。
監督:「窪田だの向井だの、呪いだの大義だの、お前たちの文学論争に付き合ってる暇はない!視聴者が求めてるのは、面白いドラマだ!俺はもう、どっちの脚本で撮るのか、どっちの宗麟で撮るのか、自分で決められねぇ!」
監督はヘッドホンを投げつけ、会議室のドアを乱暴に開ける。
監督:「キャスティングもテーマも演出も、**全部お前たちで決めろ!**俺は、その最終決定稿が上がるまで、沖縄で三線でも弾いてるわ!」
そう言い残し、監督は文字通り会議室から**「逃亡」**した。
📜 脚本バトル・ラウンド2:入田親誠の粛清
監督の丸投げにより、プロデューサーは緊急策として、両脚本家に「入田親誠の粛清」シーンのプロットをそれぞれ提出させ、その**「熱量」と「斬新さ」**で採用を決めることになった。
🥊 大下ユージ案:「大義の涙」
大下ユージは、大衆が共感する**「悲劇のヒーロー」**としての宗麟を描く。
📌 テーマ: 『苦渋の決断』
大友義鎮(福士蒼汰)は、クーデターの立役者である**入田親誠(國村隼)**を前に、苦悩の表情を浮かべる。
義鎮(福士蒼汰):「親誠…そなたは我が命を救った恩人。だが、大友家再興のため、そなたは父上(義鑑)暗殺の汚名を被らねばならぬ。」
入田親誠は、義鎮の決断を静かに受け入れる。
入田親誠(國村隼):「若殿…すべては大友家のために。どうか、この血をもって大義を立て、よき王となってくだされ。」
入田は自刃。義鎮は、その死を涙ながらに見つめ、**「この血を決して無駄にはしない」**と誓う。血は流れるが、画面は未来への希望に満ちて終わる。
🔪 鷹山案:「仮面の王」
鷹山は、宗麟の**「冷徹な王への変貌」**を描き、視聴者に強烈な違和感と衝撃を与えることを狙う。
📌 テーマ: 『最初の裏切り』
大友義鎮(窪田正孝)は、入田親誠と対峙するが、その顔には一切の感情がない。まるで能面のように冷たい。
義鎮(窪田正孝):「親誠。お前は父を殺した。故に死ね。」
入田親誠(國村隼):「若殿…それは濡れ衣!私は貴方のために…!」
義鎮:「必要ない。儂の即位は、父の遺言によって成された。そこに、謀反の血は要らぬ。お前は、邪魔になった。」
義鎮は、自ら刀を取り、入田を斬り捨てる。その刀を家臣が慌てて拭うが、義鎮は血を拭うことさえ許さない。血まみれの刀を携えたまま、義鎮は家臣団に告げる。
義鎮(冷たく):「聞け。儂の王道に、『情』は無用。逆らう者、すべてはこの刀の錆となる。」
画面は、血の海と、誰も義鎮に逆らえない絶対的な恐怖で満たされ、後のキリシタン宗麟の**『異様なカリスマ性』**の萌芽を見せて終わる。
⚖️ 結論と次の舞台
プロデューサーは、二つのプロットを前に、頭を抱える。
プロデューサー:「大下案は安心感があるが、鷹山案は…ものすごい爪痕を残すぞ。これは、大河ドラマ史上、最もエグい主人公になるかもしれない…。」
最終的に、プロデューサーは、話題性と文学性を優先し、鷹山案をベースに、大下案の**「義鎮の苦悩の描写」を一部加味するという折衷案**で決定を下す。
ナレーション:「監督不在のまま、大友宗麟の初陣は、**『呪われた王』の物語として幕を開けることになった。そして、脚本家の戦いは、宗麟の次なる試練、『領国拡大と家臣団の統制』**へと引き継がれていく――。」
次は、大友宗麟が当主となった後の最初の課題、**「二階崩れ後の領国統治と家臣団の再編」**を描くことになります。
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