孤児院の守り神~心を閉ざした元勇者は子どもたちの為に里親探します~

ゆる弥

第0話 終わりと始まり

 荒れ果てた暗い荒野。焦げ臭いに匂いが充満していて、いるだけで病になってしまいそうな場所。そんな太陽の光などない世界で輝きを放っているところがある。


 薄暗い城の中で、輝きを放っている勇者が居た。

 所々に裂傷を負い、頭からは血を流している。

 満身創痍の状態のようだ。


 勇者は剣に青い光を宿して対峙している黒き災いを懸命に攻撃している。

 その後ろに控えるのは、ピンクの輝きを放つ魔法使い。

 

「ロイ! みんなの意思をぶつけて! アタックブースト!」


「おぉぉおぉぉぉ!」


 勇者は体をピンクに光らせて黒き災いに肉薄する。何度も振るう剣に呼応するように、青い斬撃が飛んでいく。うめき声のようなものを挙げながら、その黒い何かは成すすべもなく地に伏した。


 徐々に足の指先から黒い煙になっていき、しばらくするとすべてが消えてなくなる。残ったのは魔王の心臓部と思われる魔石だけ。


「やったんだね。ロイ!」


「ユウミ。俺は、やったぞ! ただ……俺がもっと強かったらバンガ、ピリカ、ルーセントは無事だったかもしれないのに……くっ……」


 ロイは地面を拳で殴り、悔しそうに歯を食いしばっている。ユウミも悲痛な顔でロイの背中へ手を当て、必死になって奮い立たせようとしている。


「そんなに思いつめないで?」


「俺が剣を抜けば、誰かが死ぬ。魔王は倒した。もう剣を抜くことはないだろう」


 静かに立ち上がったロイは、悲しそうな顔をしたユウミと一緒にその城を出た。


 こうして、世界は平和になったのだ。


 それから二年の月日が流れた。

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