第7話:森での暮らし
「ファスト~ふぁあすぅぅとぉ~」「あれ?しんでる?おーい」
俺の一日はエナに起こされるところから始まる。
32歳のいい大人が6歳の女の子に起こされるなんてダサすぎるが、とにかく俺は眠い。猫だからか朝に弱い。
「あ!やっと起きた!また夜更かししてたの?」
「にゃあー」
エナは朝に強い。朝早くに起きて森の木の実をとってきてくれる。
まだ小さいのにサバイバル能力に長けているのか、森での生活が長いからか、いつもたくさんの木の実をとってきてくれる。
俺?俺は今のところ何もしていない。猫だからできることも限られているからな
でも音やにおいには敏感だ。エナが動物に襲われないよう警戒している。
この世界には魔法があるみたいだけど、俺は何も使えない。まぁ猫だしな。
エナは顔と頭を洗う程度の水魔法が使えるが、戦ったりはできない。
攻撃魔法っていうのは誰かに使い方を教わらないとできないらしい。
師匠みたいなやつがいて、その師匠から魔法の使い方を継承してやっと使用できるようになるみたいだ。
エナとしばらく一緒に過ごしているが、この世界のことは何もわかっていない。
エナ自身もあまり知らないみたいだ。
でも一緒に暮らす中でエナという女の子については少しわかった。
まずドジだ。
ウサギを捕まえるための罠に自分で引っかかったりもするし、何もないところで転んで俺のしっぽを何回も踏んでいる。
一緒に暮らしている奴はいないみたいなので、やっぱりエナは孤児ということだろうか?
会話ができないから聞くこともできない
時々一人で泣いたりもしているみたいだけど、今の俺にできることはない。
でも2人で過ごすのは楽しい。
前世のころと比べたらありえないくらい充実している。
「今日は森の湖に行きます!」
湖かぁ。ちょっと家から離れるし不安だし面倒くさいなぁ…
「んんlちょっと嫌そうな顔してるー!」
ばれてる。
「湖の近くには美味しい果実があるの!一回だけ食べたことがあるんだけど、ファストにも食べてほしいなぁって!」
あぁ。なんていい子なんだ。俺には眩しすぎるよ。
よし。行こう。今すぐ行こう。
おいしい果実に釣られたわけじゃない。エナの笑顔が見たいから行くんだ
軽い荷物だけ持って湖に出発した。
「そういえば知ってる??昔は魔女と黒猫がこの世界にいて、いろんな国の人のために魔法を使ってたんだって!すっごくえらい魔女は4人いるみたいなんだけど、黒猫は一匹しか存在してなかったみたい!」
今日のエナはよくしゃべるな。ん?黒猫って言ったか?俺のこと?
「ファストは白猫だから黒猫とは関係ないのかなぁ。」
エナは色の区別ができないみたいで、全部白黒に見えるって前に言っていた。
だから俺のことも怖がらないのか…。って最初のころに安心したっけ…
もっと小さい頃は色が見えていたって聞いたけど…俺も目の病気のことには詳しくわからないから原因は知らない
いつか色がわかるようになったら…俺のことを怖がるんだろうか
でも今のエナの言い方だと、魔女と黒猫はいい奴じゃないのか?
「小さい時にお母さんから聞いた話だから、、、魔女と黒猫については詳しく知らないんだけどね」
エマの両親は魔女と黒猫を悪くは思っていなかったってことなのだろうか…少しは希望があるか?黒猫の俺でも・・・
「わたしお母さんとお父さんの記憶がほとんどなくて、いつの間にかこの森に一人だったの。でも今はファストがいるから大丈夫。私の家族だもんね!」
今ここにいないってことは…エナの両親はもう…。
俺がこの子を守らないとな。今は守られてる側だけど。
魔女と黒猫についてももっと知りたいし、何とかエナと話せる方法みつけないとな。
そんな方法あるのか?
考えても仕方ないか。
今はとにかく美味しい果実のことだけを考えよう
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