晴れのち、竜

星宮 祈

プロローグ

 公歴六百××年。

 刺すような冷たい空気に耐えながら瞼を開くと、視界いっぱいに広がる景色に目を奪われる。竜の背から眺める世界は広く、とても美しかった。

 対照的に外の世界から眺めた故郷、ドラヴルは“冬の結界”に覆われ、白亜の美しい街並みも、どこか寂しく感じてしまう。


 はぁー、と白い息を吐きながら、外への憧憬に思いを馳せる。


「アニス、僕はいつかこの世界を巡って旅をするよ」


 アニスは僕の言葉に耳を傾けていた。


「ここに連れてきてくれてありがとう、今日のことは僕たち二人の秘密だからね!」



 これが僕、いや俺の一番古い記憶、あの景色は何百年経とうが忘れる事はないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る