始まりの街と、お約束の洗礼(4回目)
女神(あの雑な人事担当)に見送られ、四度目の異世界に降り立った俺、相川悠人――改め、冒険者ユート。
始まりの街「アークライト」の門をくぐった瞬間、懐かしい喧騒が俺の五感を直撃した。
「へいらっしゃい! 焼きたての串焼きだよ! 一本どうだい!」
「南方の珍しい果物だ! 見てってくれ!」
「鍛冶屋『ドワーフの髭』! 新品の剣、入荷したぜ!」
(変わらねえなぁ……)
石畳のメインストリートを埋め尽くす人、人、人。
馬車の車輪が立てるゴトゴトという音。
そこかしこから漂ってくる、香辛料の匂いと、家畜の匂いと、そして人々の熱気。
1000年。
3度の人生。
俺が知る限り、この街は少なくとも3000年以上、この活気を保ち続けていることになる。
魔王が何度復活しようと、人類はたくましい。
(だからこそ、俺がしゃしゃり出る幕でもないんだよな)
俺は人波をかき分け、今日の第一目的地――冒険者ギルドへと足を向ける。
スローライフを満喫するにしても、身分証と日銭は必要だ。
諸国漫遊の資金稼ぎの拠点として、ギルド登録は必須だった。
見えてきたのは、街で一番デカい、丸太造りの武骨な建物。
『冒険者ギルド・アークライト支部』 巨大な剣と盾をクロスさせた看板が、青空を背景に誇らしげに掲げられている。
(さて、と。4度目の新人登録、行きますか)
ギギィ……と、重い木の扉を押して中に入る。
その瞬間、昼間の喧騒とは質の違う、むせ返るような熱気が俺を包んだ。
「「「乾杯!!」」」
ガシャァン!と荒々しくジョッキをぶつけ合う音。
昼日中だというのに、併設された酒場は満員御礼だ。
鎧姿のまま酒を煽る屈強な男たち。
短剣(ダガー)の手入れをしながら仲間と談笑する軽装の女たち。
羊皮紙の依頼書(クエストボード)の前で、ああでもないこうでもないと頭を悩ませる魔術師風の一団。
酒の匂い。
汗の匂い。
血と鉄の、微かな匂い。
そして、一攫千金を夢見る者たちの、欲望と希望が入り混じった独特の空気。
(ああ、懐かしい。これだよ、これ)
3度の人生で、嫌というほど嗅いだ匂いだ。
最初の人生(1周目)では、この空気に圧倒されて隅っこで震えていたっけ。
2周目(大賢者)では「酒臭い連中だ」と一歩引いて見ていたし、3周目(剣聖)では「ふん、鍛錬が足りん」とか中二病全開で見下していた。
だが、4周目の今は違う。
この混沌とした活気こそが、俺が守った(守らされてきた)世界の日常そのものなんだと、妙にしみじみと感じていた。
「(ま、感慨にふけるのは後だ。まずは登録、登録)」
俺は酒場の喧騒を抜け、奥にある受付カウンターへと向かう。
カウンターには、獣の耳を生やした「獣人」の職員たちがテキパキと冒険者たちの相手をしていた。
「あ、あの! ゴブリン討伐の報告で……!」
「はい、お疲れ様です! 討伐証明の耳と、ギルドカードをどうぞ!」
「Cランクへの昇格試験を受けたいんだが」
「はい、こちらの書類にご記入をお願いします! 試験官は……ああ、バルガス教官は今、遠征中ですね……」
どの窓口も忙しそうだ。
俺は一番空いていそうな列に並ぶ。
俺の前にいたゴツい斧使い(ドワーフ)の受付が終わり、俺の番が来た。
「はい、次の方どうぞー。ご用件は……って、あれ?」
俺の姿を認めた受付嬢が、ぴょこんと生えた狐色の耳を不思議そうに揺らし、大きな瞳をぱちくりとさせた。
(お、狐獣人か。可愛いな)
栗色の髪に、ピンと立った三角の耳。
ふわふわの尻尾が、椅子の後ろで楽しそうに揺れている。
年の頃は俺と同じか、少し上くらい。
二十歳前後だろうか。
ネームプレートには『コネット』と書かれている。
「あの……お客様? ここは冒険者ギルドですが、ご用件は……もしかして、お使いですか?」
コネットさんは、完璧な営業スマイルで小首をかしげた。
無理もない。
今の俺は、プロローグで女神に与えられた「異世界人丸出しのTシャツとジーンズ」ではなく、【無限収納(インベントリ)】に常備してある「最も目立たない予備の旅装束(地味な麻のシャツと革のズボン)」に着替えている。
武器らしい武器も見当たらない。
(伝説の聖剣も魔剣も、全部インベントリの中だ) どう見ても、街に遊びに来た観光客か、世間知らずの家出少年だろう。
「いえ、違います。冒険者の新人登録をお願いしたいんですが」
俺がそう言うと、コネットさんの営業スマイルが「えっ」という驚きに変わった。
彼女は心配そうにカウンターから身を乗り出し、声を潜める。
「こ、コン……! あの、失礼ですが、君、おいくつですか? 冒険者登録は、一応15歳からですが……」
「17歳です。大丈夫、年齢はクリアしてますよ」
「17歳……。そ、そうですか。ですが、冒険は本当に危険なお仕事ですよ? ゴブリンだって、街のチンピラとは比べ物にならないくらい強くて、その……遊びじゃないのよ?」
(うわ、出た。そのセリフ)
懐かしすぎる。 1000年前、1周目の俺が初めて登録に来た時も、当時の受付嬢(確かエルフのお姉さんだった)にまったく同じことを言われた。
(あの時は「遊びじゃないのは分かってます!」とかムキになって反論したっけな。青かった……)
4周目ともなると、彼女の言葉がテンプレートな脅しではなく、本気で新人を心配する優しさから来ていることが分かる。
俺は、練習してきた「人畜無害で、ちょっと世間知らずだけど、やる気はある少年」の笑顔(バージョン3.4)を完璧に顔に貼り付けた。
「はい、承知しています。故郷の村で、猪くらいは狩ったことあるんで。体力には自信あるんです」
「猪、ですか……」
コネットさんは、俺の(服の上からでは分からないが、3度の人生で最適化された)隠れ筋肉質な体格と、人畜無害な笑顔を値踏みするように見比べ、「うーん」と唸っている。
(あ、これは説得に時間かかるパターンか? めんどくさいな……)
そう思った、まさにその時だった。
「おい、コネットォ!」
静かなギルド内に響き渡る、酔っ払いのダミ声。
空気が、一瞬で凍った。
俺が声のした方(酒場エリア)に視線を向けると、一人の大男が、でっぷりとした腹を揺らしながらこちらに歩いてくるところだった。
身長は2メートル近い。
安物の革鎧は酒と脂で汚れ、腰に下げた大剣は手入れもされていないのか錆が浮いている。
典型的な、実力もないのに態度だけデカいタイプの冒険者だ。
(うわぁ……出たよ。ラノベのお約束、その2)
俺が内心でげんなりしていると、大男――ボルガと呼ばれたらしい――は、俺の隣のカウンターにドカッと乱暴に寄りかかった。
酒臭い息が、こちらにまで漂ってくる。
「よぉ、コネットちゃん。仕事熱心なのはいいが、俺の誘いはいつになったら受けてくれるんだ?」
「……ボルガさん。今、接客中です。ご用件がないなら、他の方の迷惑になりますので」
コネットさんは、さっきまでの心配そうな顔から一転、あからさまに嫌悪感を浮かべた顔で、しかし冷静に対応している。 プロだ。
「はっ、接客中だぁ? こんなヒョロいガキの相手より、俺の相手しろよ。俺はCランク冒険者のボルガ様だぞ?」
ボルガはニヤニヤと下品な笑いを浮かべ、カウンター越しにコネットさんの手を掴もうとする。
コネットさんが、尻尾の毛をぶわっと逆立て、素早く手を引いた。
「やめてください! セクハラです!」
「あぁ? 強い男に惚れるのが女の本能だろうが! なあ、俺様と一晩過ごせば――」
「(あー、もう、うるさいな……)」
こちとら4度目の人生設計で忙しいんだ。
スローライフ計画の第一歩を、こんなテンプレモブに邪魔されてたまるか。
俺はボルガを完全に無視し、コネットさんに笑顔を向け直した。
「あの、すみません。登録用紙、いただけますか?」
「え? あ、は、はい! こちらに……!」
俺の堂々とした(というか、完全にスルーした)態度に、コネットさんもボルガも一瞬虚を突かれた顔になる。
俺がペンを受け取り、名前(ユート)や出身地(適当な村の名前)をサラサラと書き込んでいると、背後でボルガの額に青筋が浮かぶのが分かった。
「……おい、テメェ」
地を這うような低い声。
「ガキが。俺様を無視してんじゃねえぞ」
ドゴォン! 重い音と共に、ボルガの巨大な拳が、俺の真横のカウンターに叩きつけられた。
木製のカウンターがメキメキと音を立てて軋む。
ギルド内が、水を打ったように静まり返った。
「ヒッ……!」
コネットさんが小さな悲鳴を上げる。
酒場で騒いでいた冒険者たちも、こちらを遠巻きに眺めている。
「うわ、またボルガが絡んでるよ」
「新人さん、可哀想に」
「Cランク相手じゃどうしようもねえな」
……そんなヒソヒソ声が聞こえてくる。
(あーあ。常習犯かよ。ギルドもなんでこんなの野放しにしてんだか)
ボルガは、俺がビビって腰を抜かすとでも思ったのだろう。
爬虫類のような目で俺を睨みつけ、勝ち誇ったように笑う。
「どうした、ガキ。怖くて声も出ねえか? 冒険者ギルドってのはなぁ、こういう場所なんだよ。お前みたいなガリガリの坊やが来るとこじゃねえ。オムツでも履いてママのおっぱいでも吸ってな!」
下品な哄笑。 それに対する俺の反応は――。
「(……で?)」
だった。
俺は書き終えた登録用紙をコネットさんに「はい」と手渡す。
そして、ようやく鬱陶しそうにボルガの方を振り向いた。
「すみません。今、大事な手続き中なんで。静かにしてもらえます?」
「……あ?」
ボルガの笑いが止まる。
俺が、この状況で、まったく、一ミリも動揺していないことが理解できなかったらしい。
「テメェ……今、俺様に、なんて言った?」
「『静かにしろ』って言ったんですよ。耳、遠いんですか? それとも、その脂の詰まった頭じゃ、簡単な日本語も理解できません?」
シン――……。
ギルド内の空気が、先ほどとは違う意味で凍りついた。
コネットさんが「(こ、コン!? この人、何を言ってるの!?)」と顔面蒼白になっている。
周りの冒険者たちも「(おいおい、死んだぞ、あのガキ)」「(ボルガを煽るとか、命知らずにも程がある)」と青ざめている。
ボルガは、一瞬キョトンとした後、顔を真っ赤に――いや、紫に染めて怒りに震え始めた。
「こ……この、クソガキがあああぁぁぁッ!!」
怒声と共に、丸太のような腕が振りかぶられる。
Cランク冒険者の、全力の殴打。
常人なら頭蓋骨が砕け飛ぶ一撃だ。
コネットさんが「危ないっ!」と叫ぶ。
だが。
(遅い。遅すぎる)
俺の目には、その拳がまるでスローモーションのように見えていた。
3度の人生で、魔王の放つ光速の魔法も、神獣の振り下ろす神速の爪も捌いてきたんだ。
人間の、それも鍛錬を怠ったCランクのパンチなど、止まって見えるに等しい。
俺は、一歩も動かない。
ただ、振り下ろされる拳の軌道に合わせ、すっ、と右手を差し出した。
パシッ。
乾いた、軽い音。
ボルガの全力の拳は、俺の開いた手のひらの真ん中で、ピタリと停止していた。
「「「「…………え?」」」」
ギルド中の人間の思考が停止したのが、空気で分かった。
ボルガ自身も、自分の拳が止められたことが信じられない、という顔で目を白黒させている。
「な……な、なんで……」
「(あ、やべ。掴む力の加減、間違えたか?)」
俺は内心で冷や汗をかく。
全力で殴ってきた相手の拳を、無造作に、片手で、しかも一歩も動かずに受け止める。
これがどれだけ異常なことか、俺は(ラノベ知識で)知っている。
(いかんいかん、目立ちすぎる。スローライフが遠のく!)
俺は慌てて「うわっ、危なっ!」と、わざとらしく驚いたフリをし、掴んだ拳を大げさに押し返す。
「な、何するんですか、いきなり! 暴力反対!」
ボルガは、俺に押し返された勢いで、たたらを踏む。
彼はまだ混乱していた。
自分の全力の一撃が、なぜ、こんなヒョロいガキに止められたのか。
「(よし、今のうちに登録を……)」
俺がコネットさんに向き直ろうとした、その時。
「ふざけんじゃねえぞオオオォォッ!!」
ボルガが逆ギレした。
(だろうな、とは思ったけど)
今度は腰に下げていた大剣(錆びてるやつ)を引き抜き、無造作に振りかぶってくる。
「死ねやぁッ!!」
ギルド内での抜刀は、問答無用の重罪だ。 周囲から「馬鹿野郎!」「やめろボルガ!」という怒声が飛ぶが、酒と怒りで我を忘れたボルガには届かない。
(あーあ。もう、知らない)
今度こそ、面倒くさい。 大剣が俺の頭上に振り下ろされる、その刹那。
俺は、ボルガの重心――その軸足に、自分のつま先を「コン」と軽く、本当に軽く、当てるだけ(・・・)にした。
「へ?」
ボルガの間抜けた声。 次の瞬間、彼は自分の体重を支えきれなくなり、盛大にバランスを崩した。
「う、お、わああああぁぁぁっ!?」
振り下ろすはずだった大剣は明後日の方向にすっぽ抜け、ボルガ本人は巨大なダルマのようにゴロンゴロンと床を転がり、酒場のテーブルに激突した。
ガシャアアァァァン!!
ジョッキや皿が派手に砕け散る。
ボルガはテーブルの残骸の下で、目を回して完全に伸びていた。
「「「「…………」」」」
再び、静寂。
全ての視線が、俺に集中する。
俺は、キョトンとした顔(もちろん演技だ)で、両手を軽く上げた。
「え、と……。正当防衛、ですよね?」
「…………」
「……あいつが、勝手に転んだだけ、というか……」
誰も、何も言えない。
そりゃそうだ。
屈強なCランク冒険者が、Fランク志望のヒョロい少年に触れられた(ように見えた)だけで、勝手に転んで気絶したのだ。
意味が分からないだろう。
(よし、完璧な『護身術』だ。俺は悪くない)
俺が一人で納得していると、最初に我に返ったのはコネットさんだった。
「あ……あ……」
彼女は、わなわなと震える指で俺を指差す。
「あ、貴方……本当に、何者なんですか……!?」
「いえ、ですから、ただの新人冒険者・・・「コンにちはー!!」……?」
コネットさんの絶叫を遮るように、ギルドの扉が勢いよく開いた。
底抜けに明るい、快活な少女の声。
「ごっめーん、コネット! 遅れた! 今日のオススメ依頼、まだ残ってるー?」
そこに立っていたのは、軽装の革鎧に身を包み、腰に二本の短剣を下げた、茶色のセミロングがよく似合う少女だった。
(ん? 誰だ?)
俺が首をかしげていると、その少女――ヒロインっぽいオーラを放つ少女は、ギルド内の異様な雰囲気と、床で伸びているボルガに気づき、目を丸くした。
「うわ、何これ。ボルガじゃん。またコネットに絡んで、返り討ちにでもあったの?」
「ち、違います、クロエさん! この人が……この人が……!」
コネットさんが俺を指差す。
クロエと呼ばれた少女が、興味深そうに俺を見た。
「へえ? ボクは盗賊のクロエだ。よろしくな! ……あんたが、あのボルガを? 見かけによらず、やるじゃん!」
ニカッと笑うクロエ。
その笑顔は、太陽のように眩しかった。
(……クロエ。盗賊。ボクっ娘……意外とかわいい……アリ、だな……)
その後、ギルドマスター(いかついドワーフだった)が出てきて事情聴取となったが、ボルガが先に抜刀したこと、そして周囲の冒険者全員が「あいつ(ボルガ)が100%悪い」「あの新人君は悪くない。むしろ見事な体捌きだった」と証言してくれたおかげで、俺にお咎めは一切なかった。
ボルガはCランク剥奪の上、器物破損とコネットさんへの度重なる迷惑行為の賠償で、当分タダ働きが決定したらしい。
「ざまあみろ!」
「いい気味だ!」
ボルガが衛兵に引きずられていく背中に、他の冒険者たちから容赦ない罵声が飛ぶ。
どうやら、よっぽど嫌われていたようだ。
「(ま、一件落着、と)」
俺はカウンターに戻り、いまだに興奮冷めやらぬ様子のコネットさんに、改めて登録用紙を差し出した。
「あ、あの……ユート、さん。本当に、ありがとうございました!」
コネットさんは、深々と頭を下げる。
その狐耳も、尻尾も、感謝を全身で表すようにペコンとしおれていた。
「いえいえ。俺は何もしてませんよ。彼が勝手に転んだだけです」
「うう……謙遜しないでください! カッコよかったです!」
(いや、マジで転ばせただけなんだけど……)
コネットさんは頬を赤らめ、潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
(あ、これはちょっと面倒なフラグが立ったかもしれない)
俺が苦笑いしていると、彼女は慌てて手続きを再開した。
「こ、コン! 失礼しました! ええと、登録ですね! Fランク冒険者証、発行します!」
コネットさんが奥の魔道具を操作すると、すぐに一枚の銅製プレートが出てきた。
そこには『ユート』という名前と『Rank:F』の文字が刻まれている。
「はい、どうぞ! これがユートさんのギルドカードです! 絶対になくさないでくださいね!」
「ありがとうございます。大事にします」
ついに手に入れた、4枚目のギルドカード。
感慨は……まあ、別にない。
ただ、これでようやくスタートラインに立てた、という安堵感はあった。
「あの、ユートさん!」
ギルドを出ようとする俺を、コネットさんが呼び止めた。
「はい?」
「もし、何か困ったことがあったら、いつでも私に聞きに来てくださいね! Fランク向けの依頼の斡旋とか、宿の紹介とか……私でよければ、何でもしますから!」
「(何でも、か……)」
ラノベだったら期待してしまうセリフだが、俺はもう酸いも甘いも噛み分けた(つもりの)4周目だ。
彼女の好意は、純粋な「お礼」と「新人へのサポート精神」だろう。
俺は、再び人畜無害な笑顔(バージョン3.4)を浮かべる。
「ありがとうございます、コネットさん。助かります。じゃあ、また」
「は、はい! お気をつけて!」
ぶんぶんと尻尾を振って見送ってくれるコネットさん。
……と、その後ろで、さっきのボクっ娘盗賊・クロエが、ニヤニヤしながら俺とコネットさんを交互に見ているのに気づいたが、今はスルーしておこう。
ギギィ……と扉を開け、再び街の喧騒の中へ。
(ふぅ。何はともあれ、登録完了)
Fランク冒険者、ユート。
最強の力を隠し、平凡な冒険者として生きる。
「(まずは宿探し……の前に、腹ごしらえだな)」
3度の人生で培った【料理】スキルが、インベントリの中でうずいている。
あのボルガの騒ぎで、ちょうど昼時を逃してしまった。腹が、減った。
「(市場で食材の相場でも確認するか。この世界の醤油は、確か……)」
そんなことを考えながら歩き出した俺の、波乱万丈な(望んでない)スローライフが、今、静かに(?)始まったのだった。
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