第36話 長平の戦い
長平の戦いで、
趙が総攻撃を仕掛けると、秦軍の囮部隊の誘導に乗り、
秦軍の猛攻を受け、趙軍は長平城まで退却したが、長平城は秦軍に完全に包囲されていた。
補給を断たれた
焦りを募らせた
敗戦後、
強い恨みを抱いている、飢えた捕虜が将来の禍根になると
慌てて、ルール説明の箇所をタップした。今回のイベントのルールが、記載されていた。
秦の敵軍は、現在、
秦の敵軍は、秦軍の陣営の隙を突き、包囲網から抜け出す。ただし、補給が行き渡っていないため、時間が経過するほど、敵軍の戦闘力は、自動的に、衰退していく。
秦軍は、敵軍を逃さないように、互いに連携し、戦う。だが、正式な兵士でない、壮丁の男子が、軍に組み込まれるため、最初から、戦闘力は半減する。
ルールを読み、更に、疑念が深まった。
《コアラ》のアカウントの解析を行った時、《虎》は、
だが、今、始まろうとしている
同盟チャットを閲覧すると、大混乱に陥っていた。
『今日は、
『進軍加速器の備蓄をしていたのに、意味がなくなった』
『運営元の桜空ラボは、何を考えているんだ? もしかして、バグが生じたとか?』
『これから謝罪メールが届いて、
戦闘開始時刻まで、三十秒を切っていた。アプリ内に、謝罪メールなど、届いていない。
再度、仮想空間全体のマップを見た。長平城に、秦の敵軍が詰め込まれており、秦軍は長平城を取り囲んでいる。
間違いなく、架空世界上の
スマートフォンの画面の上部に、刻まれている時間を見詰めた。戦闘開始だ。
同盟チャットでは、動揺の声が溢れ続けている。ゲームは進行していく。
目の前の戦闘を眺めた。一瞬で、勝敗は決した。秦軍の勝利だった。
隣の陣営と、撤退していく敵軍に偵察部隊を送った。隣の陣営までの距離は、僅かだ。十秒以内に、偵察結果が、返ってきた。隣の陣営からの苦情も、同時に届いた。
個人チャットで、罵声を浴びせられた。
『味方を偵察するとか、お前、馬鹿か? 俺が、お前の目と鼻の先に来た敵を撃退してやったのに』
『すみません、操作ミスをしていました。偵察相手を間違えていました。これからは、気を付けます』
『無駄な時間を使うな。敵軍を逃すなよ』
目の前で、敗北した敵軍の偵察結果が、届いた。味方と敵の戦闘力を比較した。
全身に力が
チート・ツールが使用されている。
敵のほうが、味方よりも、戦闘力では勝っていた。イベントの序盤である今、味方である秦軍は、戦力が半減され、敵軍の戦闘力は、調整されていないはずだ。
まともに勝負していれば、敵が味方に勝利している。
手近に迫る敵軍を倒しつつ、周囲の戦闘を監視した。近くで戦闘が発生すれば、味方にも、敵にも、偵察隊を送った。
敵軍の様子も
執念深く、私の陣営に戦闘を仕掛ける敵軍に、二度、偵察部隊を送った。ルールに則れば、時間が経過するに連れて、敵軍は、戦闘力が弱まっていくはずだ。だが、偵察結果は、敵軍の戦闘力が、維持されている、と示していた。
だが、《コアラ》のアカウントが生きている間に、
秦軍が使用しているチート・ツールは、戦闘力の半減を防いでいる。敵軍が使用しているチート・ツールは、戦闘力の減少を食い止めている。《虎》のパソコン内で、開発されていたチート・ツールと、特徴が一致している。
仮想空間上の長平の戦いで、不正が
突然、同盟チャットの投稿の件数が、増えた。同盟チャットを覗くと、一人の人物が、やり玉に挙がっていた。
『ストレス限界突破人間は、何を言いたいんだ?』
『戦闘力が狂った。ストレス限界突破人間は、何をしたんだ?』
『ストレス限界突破人間って、《苛烈》の幹部だろう。他の同盟にも、迷惑を懸けるなんて、何をしているんだ!』
『ストレス限界突破人間の道連れは、御免だ!』
『どうして、ストレス限界突破人間を野放しにしていたのか、俺たちが、責められている!』
『盟主、全世界チャットで、ストレス限界突破人間の代わりに、謝罪してくれ』
『盟主である私に、代理で謝罪を行うように求められても、対応が困難です。何を謝ったら良いのか、状況が把握できていません』
『何で、自分の同盟の幹部をコントロールできていないんだ! 俺たちの責任になるぞ!』
全世界チャットを覗いた。
意見と言う名の罵詈雑言が、溢れ返っている。罵詈雑言の発生地点まで、スマートフォンの画面をスクロールしていった。
可愛くデフォルメ化された武将のアイコンがあった。
『私が、世界の秩序を正して見せる。悪人を粛清する。これまでの行いを後悔するが良い』
自身が聖人であるかのように、「ストレス限界突破人間」が、厳かに、宣言していた。
突然、隣の陣営の部隊が、敗れた。敵軍と敗北した味方に対して、偵察部隊を送った。偵察結果を見た。味方の戦闘力が、敵軍の戦闘力を勝っていたにも拘らず、味方が負けていた。隣の陣営の部隊の戦闘力が、ルール通り、半減され、負けていた。
チート・ツールが、機能しなくなっている。
チート対策ツールが、起動している。
《桜空ラボ》の社員で、チート行為を監視していた人物は、澄川だけだ。
「ストレス限界突破人間」は、澄川だ。
澄川が、チート対策ルーツを投入した。チート・ツールの効果を無効化している。
「《英雄の逆襲》で、革命が起きている。澄川が動いた。植村、見て!」
パソコンを睨んでいた植村のスーツの襟元を力一杯掴むと、引き寄せた。くぐもった植村の声が聞こえた。
「……離せ、息ができない」
スーツの襟元から手を離すと、植村が、盛大に、咳き込んだ。咳が治まると、植村は、私を睨み付けた。
私は、無言で、スマートフォンを指差した。植村が、スマートフォンを
「今になって、どうしたんだ? もっと前から、チート対策ツールを使用しても、良かっただろう」
「干支軍団がいなくなって、堂々と、チート対策ツールを使用できるようになったとか? これまでは、開発部の社員は、澄川を除いて、自社のゲームで犯罪を行っていたのだから」
「城ケ崎、俺が言うのもなんだが、操作を放棄しているから、城ケ崎の陣営が、ボコボコにされているぞ」
「今は、澄川の行動を追うほうが、大切でしょう?」
私の陣営から、火の手が上がっていた。頑張って育てた兵士が、負傷していく。
だが、現実世界で、本当に生きている人間のほうが、重要だ。
架空の戦場が消えた。秦軍と敵軍のポイントが、表示された。
秦軍が勝利した。MVPは、またもや、《苛烈》だった。正規の方法で努力していたプレーヤーもいたようだ。
流れ始めた映像に、目を疑った。
小雨が降り始めた。
剣の切っ先が、
映像が終わった。呆然としながらも、録画機能を停止した。
何故、
何故、月末に流れるはずの英雄の末路のエピローグ映像が流れたんだ?
何故、
今月の全てのイベントで、
何故、
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