第18話 ギミックを探せ

 

 

 壁を触りながらゆっくり調査を進めていく。

 前回来たときも同じように探してはいたのだが、見逃しの可能性を否定することはできない。


「何かありそうな気がするんだよな」


[ダンジョンコアがあるからここが最奥だと……]

[ないだろうな]

[ドラグーンの後にここって段階で、先はないだろ]

[いやでも深層前のあそこは通路で来ていたし]

[もとからあっただけでは]


 チャット欄では[あるわけない]や[コアがある段階で最奥]といったコメントが多く流れているが、俺は何となくこの先が存在していると思っている。


「深層に入る前のあそこも3日くらい探して見つけたからな。ここはあそこより広いしもっと時間がかかるだろうな」


 ここより狭いあそこで3日かかったし、何ならもうその日数は超えていたりする。何かきっかけがあればすぐに見つかるかもしれないが、さすがにそう簡単に行くとも思えない。


[あそこで3日ってどんだけだよ]

[モンスターは出ないみたいだし、探すだけに集中すればいいんだけど、マジであるのか?]

[前がそうだからと言ってここも同じように次があるとは限らないのでは?]

[夢を見るのは自由である]


 指先の感触、魔力による探知、今自分に出来る探索方法を駆使しながらじっくり探っていく。前のところで見つけたダンジョンコアの台座も後で調べる予定だが、何となくあそこにはない気がしている。

 とはいえ、探しはするが。


[この時間何?]

[散るタイム?]

[散るwww]

[まあ実際同接減ってきているし、視聴者は散って行ってる]

[何かBGMでもあればいいんだが、調査中に雑音流すわけないしな]


 無言で壁を調べているだけの配信画面に嫌気がさしたのか、それともこれ以上見る必要がないと判断されたのか、腹ごしらえを終えた時に比べて視聴者数がどんどん減って行っているのが見て取れた。

 

 まあ、本当に壁を調査しているだけで他のことをしない配信を見ていても楽しくないのは間違いないので、これは仕方のないことだろう。


「うーん?」


 壁を調査している中でその中の一部分に少し違和感を覚える。しかし、ほんの少しの違和感で、確実にここがおかしいと言えるほどではない。


[お? 何かあったのか]

[(。´・ω・)ん?]

[マジで何かあったのか]

[あるわけないっしょ。勘違いよ]

[本当に何かあったら激アツなんだが]


 少しの違和感から俺が声を漏らし、壁を少し叩いたことで視聴者たちが何かあったことを察したらしく、チャット欄のコメントが反応し始めた。


「ここら辺にちょっと魔力的な違和感があるな。本当に少しだからこれくらいなら誤差の範囲と言われてしまったら否定できないが」


 本当に誤差と言われてしまえばその可能性を否定できない程度の違い。

 ダンジョンの中というのは地上にくらべ魔力は安定しているが、ずっと同じ状態なのかと言えばそんなわけもない。

 その変化を違和感として認識してしまっている可能性もある。


「何とも言えないが、この辺りには何か動かせるようなものはなさそうだ」


 違和感はあったが壁全体を調べてみた結果、ギミックを起動させるような存在は壁にはないようだ。後は地面と天井、台座くらいだが、さて次はどこを調査するか。


[そういえば、ここは初めて来たわけじゃないんだよな]

[何回も来てて見つからないのなら、普通にないのでは]

[ドラグーンも初討伐って感じではなかった]

[ここ何度目の調査だ?]

[2回目? 3回目?]


「今回で4回目だな。さっきの壁の違和感は今回初めて見つけたから、一応進展はしているぞ」


 前回も、その前も同じようにこの空間すべてを調査したが、今見つけた壁の違和感は今回初めて見つけたものである。


 なんというか今の壁の違和感といい、深層前の台座ギミックといい、絶対に1度では次の階層へ突破されないようになっている感じがする。

 台座にあったボタンだって何度も調べたはずなのに3日見つけることが出来なかったわけだし、ダンジョンが意図して見つからないように隠しているのではと邪推してしまう。


[4回目って結構来てて草]

[思ってたより来てるw]

[4回って、じゃあこいつあのドラグーン3体同じ回数だけ討伐してるってこと?]

[毎回調査するためにドラグーンを倒さないといけないという鬼畜ゲー]

[こいつにとってはそこまで鬼畜ってわけじゃないんじゃね?]


 とりあえず、次は地面を調べてみよう。壁と同じようにこれまでとは違うところがあるかもしれない。


 この空間の地面は割と滑らかな表面になっている。滑らかに処理されているため壁ほど自然感はない見た目だが、やはり岩の質感は残っているので、所々亀裂が見られる。

 こういう隙間に何かある可能性があるので、しっかり見ていく。

 

 地面の調査を始めたところだが、今の状態は配信映えしないどころか、男が地面にはいつくばって地味な作業をしているだけ光景を上から移している、最悪クラスの映像になっていることに気づく。


 さすがにこの状態で配信を続けるのはどうかと思い、カメラの位置を調節して、見栄えを少しでも良くなるように工夫してみた。


[放送事故並みの映像だったなwww]

[誰が男が地面に横たわっている映像を見たいと思うんだよw]

[まあ、やっている内容上仕方ないとは思うが、もう少し見ている側を気にしてくれ]

[カメラ移動したから多少マシになったけども]

[あれはあれでおもろいから個人的にはあり]


「すまん。さすがに今の状態が駄目だったのは俺でもわかる」


 今後配信しないからと言って、今回の配信をないがしろにするのはよくないので、しっかり謝罪はしておく。

 カメラの位置を動かしたことで少し内緒話をしているかのような距離感になっているが、まあ致し方ないだろう。


[壁を調べている段階で気づいてもろて]

[距離が近いですね]

[ダンジョン配信でこの距離はなかなかない]

[これでもっとイケメンだったらねぇ]

[これはこれで一緒に調査している感じにはなってていいかも?]


「すまんな。イケメンじゃなくて」


 顔については自覚があるから軽くそう返しておく。

 しかし、少し距離が近くなったことで批判されると思っていたが、思いのほか反応は悪くない。とはいえ、悪くないというだけで良いと言えるほどの反応でもないのだが。


 そんな感じで視聴者たちとたまに会話しながら地面の調査を進め、何も見つからなかったことで天井の調査もしたが、そこでも何も見つけることはできなかった。

 

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