第16話 今一番深いところで腹ごしらえ 後

 

 

 コンロのスイッチを入れて上に置かれた鉄板を熱する。そして適当に持って来ていた油を薄く引く。

 そして下処理を終えた肉に軽く塩コショウで味付けし、そのまま鉄板の上に置いた。


[にくー!]

[音がヤベェ]

[なんで肉の焼ける音ってこんなに腹がすくんだろうか]

[油薄くしか伸ばしてなかったのに、焼き始めた途端めちゃくちゃ出て来てんじゃん]

[飯テロは許されない]


 鉄板の上で肉が焼かれる音と共にドラゴニクスの肉の匂いがあたりに漂う。

 すでにかなり空腹状態になっていたため、すぐにでも目の前の肉にかぶりつきたいところだが、まだ片面すら焼けていない。


 一応牛肉同様、生状態でも食べることはできるが、ドラゴニクスの肉は生で食べるよりもしっかり目に火を通した方が旨い。

 ただ、少し欲張ったことで切り分けた肉が分厚くなってしまい、少し工夫をしながら焼いて行かないと中まで熱が入らない。

 

 じっと肉を見つめ、焼き加減を確認する。鉄板の上に置かれた4枚の肉で焼きむらが出ないよう気を付けつつ適宜、焼く位置を調整しながら火を通していき、良い感じの焼き目になったところで側面に焼き色を付けた後、裏返してもう片面を焼いていく。


[肉が焼ける音ー]

[良い焼き色だ(о'¬'о)ジュルリ]

[油のテカリがすごいな]

[バーベキュー用のコンロでここまで焼くとか、こいつ慣れてやがる……!]

[肉食いたくなるから飯テロやは止めろ!! 今は夜なんだよ!!!]


 鉄板に肉を押し付けつつじっくり焼いていく。


「尻尾はミディアムレアくらいがちょうどいいんだよな」


 完全に火を通してしまうといくら柔らかい肉でも少し硬くなってしまう。

 ある程度焼き目がついたところでコンロの火力を弱くし、肉の上にカバーを乗せて余熱で蒸し焼きにしていく。


[こいつ凝り性だ!]

[ああああああああ]

[ステーキ買ってきまああぁす!]

[なんでダンジョンの中でこんな調理してんだよ]

[絶対うまい奴]


「肉だけじゃ物足りないから適当に野菜でも出しておくか」


 肉を蒸し焼にしている間、手持ち無沙汰になったため、鞄の中に入れておいた野菜を取り出し、それを切っていく。

 白米も欲しいところだがさすがに炊く時間までは待てないので、今回はお預けだ。


[こいつ最初からここで飯食うつもりでいたのか?]

[サラダまで準備し始めてて草]

[マジで視聴者に喧嘩売ってんだろ]

[食事のバランスは大事だからな(◎_◎)]

[肉が圧倒的に多いけどな]

[ソースはどうするんだ]


「そのままでも十分旨いからソースは使わない。ま、単純に作るのが面倒ってのもあるが」


 適当に作ったサラダの準備も終わったので、肉の状態を確認する。


「いい感じだな」


 軽く肉を押し中の状態を確認すれば十分熱が通っていることが分かったので、コンロの火を止める。

 

[もう絶対うまいやん]

[焼き色完璧]

[見ているだけでもよだれ出てくる]

[ここに来てドローン君の肉ドアップ撮影]

[ドローン君わかっているけど分かってない(# ゚Д゚)]


 焼いた4枚の肉の内、半分を食べやすいように切り分け、残りはそのままの状態にしておく。


「我ながら完璧だな」


 肉の切り口から覗く焼き色と、しっかり熱が通っていながら肉らしい赤色の対比がちょうどいい焼き具合だ。


[マジで腹が減る]

[匂いなんて来ないのに何か肉の匂いがする気がする]

[断面が美しい(о'¬'о)]

[絶対うまい(絶対うまい)]

[焼き面の脂というかテカリ方がやばい]

[切っていないやつはかぶりつき用か?]


 肉はさらに移さず鉄板の上に置いた状態にして、先ほど作ったサラダを片手に椅子に座り、さっそく食事を始める。


「そんじゃ、いただきます」


 初めにサラダに手を付けてから肉を食い始める。

 程よい食感と肉汁、軽く塩コショウで味を付けただけにもかかわらず強いうまみを感じる。

 黙々と何を話すわけでもなく肉を食べていく。


[食レポはよ]

[人が旨そうに飯食っているだけの映像を30万人以上が見ているってどういう状況なんだ?]

[飯作り始めてから多少減ったけど、それでも30万以上いるという恐怖]

[ああああ、厚めのステーキかぶりつきとか羨ましすぎるううう]

[というか、これ全部食べるつもりなのか? 体積からして全部は無理な気がするが]


「問題なく全部食えるぞ。それと肉はうまい。切ってなくても簡単にかみ切れるくらい柔らかいし、かむたびに肉汁というかうまみがあふれてきて最高」


 食べつつチャット欄のコメントを確認し、口の中に物が無くなったタイミングで言葉を返していく。

 肉の合間につまむサラダもなかなかに旨い。地上の自宅にある畑で栽培した物だが、収穫して時間も経っていないため新鮮だ。自画自賛になるが最高の出来である。


[フォークで刺した途端にあふれ出る肉汁。持ち上げただけで滴る肉汁。噛むことでより溢れる肉汁兼うまみ……やばい]

[想像させんじゃねぇええええ]

[野菜もなかなか美味そうなのよね]

[ちゃんと野菜も食べているのはいいんだが、肉が多すぎるw これ全部で何キロあるんだよ]

[サイズ見れば1枚1キロくらいだろうから、4キロちょい? いや厚みを考えると倍近いか?]


 ちょこちょこコメントに対して反応しつつ視聴者の反応を見ながら、快調に食事を進め、ドラゴニクスの尻尾ステーキを最後まで堪能した。

 

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