奴隷商人 第1章 フェニキア編2【古代ローマ】
🔴奴隷商人 (紀元前47年の物語①)第2章からの改訂版、https://bit.ly/3Ee6zMy
⚪️奴隷商人 (紀元前47年の物語①)第6章 クレオパトラ編 未公開
🔴新 奴隷商人 ア・ヌンナック編(紀元前47年の物語②)、https://bit.ly/3RFeUMj
🔴新 奴隷商人 アルテミス編(紀元前47年の物語③)、https://bit.ly/3F1UqdU
🔴新 奴隷商人 補足編(紀元前47年の物語④)、https://bit.ly/3SmueOh
🔴新 奴隷商人 ア・ヌンナック編 総集編Ⅰ、https://bit.ly/4mc6sRL 🅽🅴🆆!
🔴新 奴隷商人 ア・ヌンナック編 総集編Ⅱ、https://bit.ly/4ntXEaG 🅽🅴🆆!
🔴奴隷商人 第1章 フェニキア編 総集編Ⅰ、https://bit.ly/4gpI11J 🅽🅴🆆!
🔴奴隷商人 第1章 フェニキア編 総集編Ⅱ、https://bit.ly/46jhLRV 🅽🅴🆆!
🔴奴隷商人 第1章 フェニキア編 総集編Ⅲ、https://bit.ly/3KjRhZc 🅽🅴🆆!
🔴アルシノエ四世の生涯、https://bit.ly/4qHLfCB
奴隷商人 登場人物
ムラー :フェニキア人奴隷商人、知性体アルファのプローブユニット
森絵美 :知性体ベータに連れられて第2に来た第4の21世紀日本人女性
人類型知性体
エミー :黒海東岸のアディゲ人の族長の娘、巫女長
絵美/エミー :知性体の絵美に憑依された合体人格
アイリス :エジプト王家の娘、クレオパトラの異母妹、
知性体ベータの断片を持つ
ペトラ :エジプト王家の娘、クレオパトラの異母妹、アイリスの姉、
将来のペテロの妻、マリアの母
ペテロ :ムラーの港の漁師
マンディーサ :アイリスの侍女
キキ :20才の年増の娼婦
ジャバリ :ピティアスの海賊の手下
ソフィア :ムラーのハレムの奴隷頭、エチオピア人
ジュリア :ムラーのハレムの奴隷頭、ギリシャ人
ナルセス :ムラーのハレムの宦官長
アブドゥラ :ムラーのハレムの宦官長
パシレイオス :ムラーのハレムの宦官奴隷、エチオピア人
アルシノエ :アイリスたちの侍女頭
ピティアス :ムラーの手下の海賊の親玉
ムスカ :ムラーの手下、ベルベル人、アイリスに好意を持つ
クレオパトラ7世:エジプト女王、知性体ベータのプローブユニット
アヌビス :ジャッカル頭の半神半獣、クレオパトラの創造生物
トート :トキの頭の知恵の神の半神半獣、クレオパトラの創造生物
ホルス :隼の頭の守護神の半神半獣、クレオパトラの創造生物
イシス :エジプト王家の娘、クレオパトラの従姉妹
アフロダイテ号 :大スフィンクス攻撃のためのムラーの指揮するコルビタ船
アルテミス号 :大スフィンクス攻撃のためのピティアスの指揮するコルビタ船
.【奴隷商人 第1章 フェニキア編 総集編 目次】
.第1章 フェニキア編 総集編 Ⅰ
第1話 極超新星爆発
第2話 純粋知性体
第3話 奴隷市場1、奴隷市場ホール、紀元前47年
第4話 奴隷市場2、絵美の奴隷売買成立、紀元前47年
第5話 奴隷市場3、コーカサスの女、紀元前47年
第6話 ムラーの荘園、ムラーの家、紀元前47年
第7話 アヌビスとの戦闘、紀元前47年
第8話(1) エミーの初体験、紀元前47年
第8話(2) クリエンテス、紀元前47年
.第1章 フェニキア編 総集編 Ⅱ
第9話 古代ローマのブラジリアンワックス、紀元前47年
第10話 アヌビスの解剖、紀元前47年
第11話 窓ガラスがない!、紀元前47年
第12話 エジプトから盗んできたパピルスの文書、紀元前47年
第13話 古代ローマの不潔さ、紀元前47年
第14話 古代ローマの媚薬『シルフィウム』、紀元前47年
第15話 ジュリアとソフィアと、紀元前63年
第16話 見破られた!、紀元前50年
第17話 ピティアス、紀元前47年
.第1章 フェニキア編 総集編 Ⅲ
第18話 ペトラとアイリス、紀元前47年
第19話 知性体ベータのプローブユニット、紀元前50年
第20話 このドスケベのコーカサス女め!、紀元前46年
第21話 アイリスの三年前の回想、紀元前46年
◯ポンペイウス軍の海賊討伐とローマの暦の数え方
●第三期ポエニ戦争とそれに続く東地中海のヘレニズム国家との戦争
●ポンペイウス軍の海賊討伐
●人さらい
●説教
第22話 人さらい、紀元前46年
第23話 シーザー暗号、紀元前46年
第24話 合体技超能力の訓練、紀元前46年
第25話 クレオパトラと戦争する気?、紀元前46年
第26話 両性具有、紀元前46年
.第9話 古代ローマのブラジリアンワックス
今を去ること16年前、紀元前63年は彼らの住んでいるフェニキア地方にとって大きな出来事があった。
アレクサンダー大王の後継者の一人、セレウコス1世ニカトルが紀元前3世紀頃、シリア、バビロニア、アナトリア、イラン高原、バクトリアに跨る地域に築いた強大な王国がセレウコス朝である。
この王国は、ギリシア人部将とイラン貴族の女性との結婚を奨励したせいもあって、イラン人の血をもつギリシア人の王国であった。
セレウコスもバクトリア人の戦争捕虜であるアパマと結婚し、一子をもうけた。それがアンティオコス1世で、セレウコス朝の後継者となった。このようにセレウコス朝はギリシャ人とイラン人の血をもった王朝だった。
セレウコス朝は始祖のセレウコスがイラン人女性を妻としただけでなく、ギリシア人兵士とイラン人少女の結婚は他にも数多く行われていた。しかし、ギリシャ・イランの文化は、かなりの程度まで融け合わずにいたようで、新しい都市の文化は主としてギリシア的であり、古い町や村のものはほとんど純粋にイラン的なままであった。
文字も、支配者のマケドニア人がギリシア文字をもたらしたが、ギリシャ語、ギリシャ文字を解するのは一部のイラン人書記にとどまり、日常的にはまだアラム語とアラム文字が使われていた。
紀元前2世紀になると、イラン系のパルティアが東方で自立して有力となり、北方のバクトリアや小アジアのペルガモンも独立し、セレウコス朝は次第に領土も縮小し、衰退した。
またギリシア風のゼウス信仰を強要されたユダヤが反発して、紀元前167年にユダス=マカバイオスらが反乱を起こした。紀元前142年にはユダヤ人に自治を与えざるを得なかった。
このように、地方政権の自立が続き、セレウコス朝は領土を縮小する中、紀元前64年にローマのポンペイウス率いる軍によって滅ぼされ、ローマの支配地に組み入れられ、属州シリアとなった。
そういった支配者の変遷などフェニキア人のムラーやペテロにはあまり関係がない。ギリシャやペルシャからエジプトに至る回廊の接合地域のようなシリア・パレスチナ地方は、紀元前数千年の昔から覇者となった王国に蹂躙され続けていた。
ムラーやペテロらのフェニキア人は、「海の民」がカナン人を吸収合体してフェニキア人が誕生したという説もある。旧約聖書に登場するカナン人は、エジプトの文書に登場するフェニキア人と住む場所が同じことからカナン人=フェニキア人だという考えもある。
エーゲ文明に属するクレタ文明(前2000~前1400年頃)とミケーネ文明(前1600~前1200年頃)が後退した後に、地中海交易で栄えたフェニキア人は、先祖の「海の民」がカナン人を吸収合体しようと、逆であろうと、地中海周辺の人々に広く受け継がれている。彼らは、突出した交易能力で地中海全域に勢力を広げていたのだ。
紀元前64年のシリア地方に住んでいるフェニキア人は、ミケーネ文明滅亡以降、既に千数百年が経っていた。数十世代から百世代も経過しているのだ。海の民やカナン人の血に、地中海アフリカ沿岸部の血も、セレウコス朝シリアのギリシャやイランの血も混じっているだろう。彼らにとって、どの血が混ざっているなど関係ないのだ。フェニキア人はフェニキア人なのだから。
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ナルセスに連れられてパトラがやってきた。褐色の光沢を帯びた肌。黒く濃い眉。スッと直線に伸びる高い鼻梁。あ~、彼女、美人だわ。クレオパトラみたいね、と絵美は思った。
それにしても、ムラーの奴隷女はみんな肌がツルツルだわ。ムダ毛の処理はどうやっているのかしら?この時代のナイフじゃあ、ムダ毛をあんなにキレイに剃れないわよね?後で誰かに聞いてみよう。ジュリアに聞くと嫉妬しているので、他の誰かに聞こう、と思ったら、さっき紹介された丘の家の奴隷頭のソフィアが通りがかった。私は、ムラーとペテロにちょっと失礼と言って、ソフィアを呼び止めた。
「ソフィアさん、ちょっとお聞きしたいことがあるんだけど」と丁寧に聞いてみた。私はここでは新参者だし、ジュリアにはよく思われていない。奴隷頭二人を敵に回すのはマズイよね?
「ハイ、なんなりと、エミー様」
「ソフィアさん、エミーと呼んで頂戴」
「じゃあ、私もソフィアで」
「了解。ソフィア、私、田舎者のアディゲ族の出身でしょう。だから、先進国のフェニキアの女性のたしなみを知らないんですよ。それで」と小声で「あの、その、ムダ毛処理ってみなさんどうなさっているんです?」と聞いた。
「あら、ちょうどいいですわ。今から若い子にワックスを使おうと思って、ワックスを火にかけたんですよ。見てみます?」と言う。ワックス?
ムラーのハレムにソフィアに連れられて行った。この時代は、後世のよりも色は劣るが、アラビア風のタイルはかなり生産されているようだ。ポンペイの遺跡でも色とりどりだったね。床も壁もタイル貼りで、キレイだわ。20 m 四方の部屋だった。十数人の女の子がいた。ソフィアが、あの子とあの子はムラー様のハレムの子。あの子たちは奴隷の家の子と説明した。私とソフィアよりも年上の子はあまりいない。一番若いハレムの子なんて12歳だって。ムラー様の方針で、12歳以下はハレムにいれないそうだ。あまりに若い時に性交を経験すると、後で味が悪くなるって説明された。味が悪くなる?まあ、いいや。20世紀の倫理感を持ち出さないようにしよう。
数人がお腹が大きい。妊娠しているんだろう。20世紀なら、中学生くらいの女の子が妊娠している。こりゃあ、20世紀のロリコンを連れてきたら感動するんだろうな。まあ、いい、20世紀の倫理感を持ち出さない。
だって、彼女たちは40歳くらいまでしか生きられない。12歳だって、余命は28年ぐらい。妊娠できるのは健康状態が悪いだろうから、アラサー前までなのかな。だったら、12歳から妊娠し始めて24歳まで、12年しかない。
その間に6~9人の子供を産む。その3分の1が5歳前に死んでしまう。妊婦も出産時に半分近く死ぬんだろう。それを考えたら、確かに、中学生からせっせと子供を作らないといけないってことだ。
確かに、ハレムに来る間に通りかかった奴隷たちの家の前で、その家の奥さんたちが食事を作っていたが、もう老婆のようになっていた。40歳近くなると老婆になるのね。老けるのが早い。だから、この世界は、早熟じゃないと生き残れない。
でも、ジュリアとかソフィアは、18歳、20歳だが、若く見える。これは、ムラーの家でも、ハレム付きの女性は栄養状態がいいってことか?それに、葦の葉で作られた小屋とくらべて、ムラーの家は大理石、レンガで作られていて、タイル貼りで、清潔に出来ている。清潔な環境なら病気になる確率も低いということかしら?でも、じゃあ、18歳のこのエミーの体も健康そのもの。これも族長の娘だからってこと?20世紀の常識は捨てないといけないわね。
「エミー、こっちよ」とソフィアがタペストリーで仕切られた一画に私を連れて行く。そこは水場で、丈の高いベッドが4台置いてある。そこに少女が二人、仰向けになっている。別の少女が彼女たちのムダ毛をよく研いだ鉄製らしいナイフで剃っている。ナイフを使っているじゃない!
「ワックスじゃなくて、ナイフじゃないの?ソフィア」と聞くと「あれは前処理よ。あれだけじゃあ、毛穴のブツブツが残っちゃうでしょ」と答えた。
「次に、熱いタオルで肌を蒸すの」と壁際のタイル貼りでできたかまどで沸いている青銅製の鍋を指差す。「その隣りのがワックス」
私がその隣りの鍋を覗くと、これは蜜蝋?これがワックス?あれ、これって・・・
仰向けに横たわっている少女に別の少女が、熱いお湯にひたして絞った綿のタオルを下腹部に広げた。脚を広げさせられている。下腹部って言っても、そこ陰部よね?横たわっている少女は熱そうだ。
ソフィアが20世紀で言うアイランドスタイルのタイル張りのテーブルに幅広の包帯を広げた。ミイラに巻くようなヤツだ。そこに杓子でグツグツした蜜蝋を均等にたらしていく。フーフーと拭いて、半分固まるぐらいで、少女の陰部に包帯を貼る。少女はあまりの熱さに唇を噛み締めている。しばらくして、蜜蝋が固まったようで、ソフィアが遠慮なく、包帯を引き剥がす。手伝っていた少女二人がその女の子の手足を押さえつけている。あまりの痛さに少女が背をそらすが、手足を掴まれていて、動けない。
「ほら、エミー、これがムダ毛処理よ。じゃあ、エミー、あなたも横になってね」
あ~、聞くんじゃなかった。これは、20世紀の脱毛法のブラジリアンワックスじゃないか!私は、少女たちの手前、拒否もできず、泣く泣くベッドに仰向けになった。ソフィアがニタァ~と笑って「今まであまり脱毛してこなかったようね。でも、コーカサス人で、ムダ毛も薄いから、そんなに痛くないわよ。でも、全身くまなく脱毛しましょうね。ムラー様に抱かれるんだから、キレイにしておかないと。おケツの毛もキレイにしましょうね」と言う。
ソフィアに全身くまなく、やられた。すね毛はもちろんのこと、おケツの毛なんて、四つん這いにさせられて、脚を広げさせられて、肛門から縦筋、あそこまで、ベリッとやられた。ベリッ!!だった。全身が因幡の白うさぎになったのだ。私、肛門なんて他人に見せたことないのよ!
私の中のエミーが「絵美、あんた、なんてことを私の体にしているのよ!痛い!痛い!痛い!」と悲鳴をあげる。私だって悲鳴をあげた。でも、ソフィアは容赦なかった。「終わったわ。もう、全身、ツルッツルだわ」と嬉しそうに私の肌をなで上げた。痛い!
その後、香油を全身に塗られて、髪の毛をアップにされた。ギリシャ神話の女神のような服を着させられる。ソフィアが銅鏡を差し出して「さあ、エミー、見てご覧なさい。キレイよ」と言う。
鏡を見た。昨日の夜からだから、エミーをちゃんと昼間見たことがなかったのだ。え?エミーって、クロエ・グレース・モレッツみたいじゃない?と思った。私の中のエミーが「クロエ・グレース・モレッツって誰よ?褒めてんの?けなしてんの?」と言うので、20世紀の私の記憶を彼女に見せる。「ああ、未来のアクトレスね。褒められているのね。ありがとう、絵美」と言う。
ヘロヘロになって、ムラーの食事している母屋のベランダに戻った。ペテロは帰ったようだが、別のクリエンテスとムラーは食事していた。
「おお、エミー、見違えるようにキレイになったじゃないか?」と日本語で言う。
「ひどい目にあったわよ。古代のブラジリアンワックスでソフィアにいたぶられたのよ!」
「まあまあ、元がいいから、清潔になって、これは俺のハレムで一番美人だな」とムラーがニタニタして言う。
「『俺のハレムの中で』なんて言うな!私は、あなたのハレムに入ってないわよ」
「仕方ねえだろ。周りは、絵美のことを俺の正妻と勘違いしてるようだぜ。だから、調子を合わせて正妻の振りをしないと、ジュリアに床磨きをさせられるぞ」
「ソフィアは優しいけど、ジュリア、ジュリアとは仲良くしないといけないわね」
「う~ん、難しいかもしれんな。彼女は嫉妬深いから」
「困っちゃうなあ。そういうのは、エミーにやってもらおう。どうやってエミーと意識して交代するのか、方法も考えないとなあ・・・」
.第10話 アヌビスの解剖
長い朝食が終わった。8時半くらいだろうか?時計が必要だな。この時代だと、砂時計と日時計くらいしか思いつかないけど。
クリエンテスが何人も来た。オリーブオイルの絞り職人なんてのもいた。ロバを使って、石臼にロバを縛って、グルグルと臼を回して、オリーブを絞るんだそうだ。古代の遠心分離機ってやつだね。
「さて、絵美、そのキレイな衣装を着替えて、汚れていい普段着を着なさい」とムラーが言う」
「着替えるの?」
「そうだ。汚れ仕事をしないといけない。ヤツを、アヌビスを解剖する」
「え~、私が助手なの?」
「ナルセスとアブドゥラじゃあ、女々しくてダメだろう。ガタイの良い黒人奴隷のパシレイオスも手伝わせる。ジュリアにマスクを作らせた。肉きり包丁も研がせてある」
「そんなのやったことないわ。そういうことはエミーの方が向いていると思う」
「エミーとどう交代するんだ?それに、エミーは解剖学的な知識がない」
「私だってないわよ」
「少なくとも、20世紀の生物学の知識はあるだろ?それに犯罪心理学を専攻していたんだから、猟奇的な事件の写真だって見ていたんだろ?」
「そりゃあ、そうだけどさ・・・気が進まないなあ・・・」
着替えて、家畜小屋に行った。ガッシリとした黒人奴隷のパシレイオスがいて、私に未来の白衣みたいな服とマスクを渡された。ムラーが肉きり包丁というか、半月刀みたいなナイフ数丁を点検している。仕方ないなあ。白衣をはおり、マスクをした。
ムラーがアヌビスの屍体を覆っているシーツを剥いだ。これって、犬だよ、犬。犬の頭に人間の胴体、狼の後足をくっつけた姿だよ。エミーが私の中で『ええ~、昨日はよく見なかったけど、本当にあのアニビスだ!』と言う。
エミーが言うには、アヌビスは、セトの妻で妹のネフティスが、兄のオシリスとの不倫によって身篭もった子なんだそうだ。セトが敵視していたオシリスの子で、誕生後はすぐにネフティスによって葦の茂みに隠された。エジプトで崇拝されていたミイラづくりの神様だそうだ。
エミーの意識のイメージだと、セトという神様もジャッカルの頭をした神様だ。でも、母のネフティスも父のオシリスもヒューマノイドの姿形なのに、アヌビスは、父でもないセトみたいな半神半獣の姿形なんだろう?わからん。
「さて、絵美、始めようか」とムラー。
「お腹を割くの?」
「いや、頭をまずやろう。頭蓋骨を切ろう」と言う。
「ノコギリが必要じゃない?」
「いや、この額から鼻、顎を見てみろ。何か、頭蓋の真ん中で閉じ合わされているような感じがしないか?」確かに頭部の中心で合わせ目みたいなものがあった。
「これは力仕事だ。絵美は横にどいていろ」と日本語で言うと、フェニキア語で「パシレイオス、俺が半月刀をあてるから、お前は頭蓋を俺と一緒にこじ開けろ」と命令した。
「旦那様、これは神ではありませんか!そんなことをして、神の怒りが・・・」とパシレイオスが言う。
「問題ないぜ。第一、神がアブドゥラの柳刃で殺せるもんか。たとえ、神でも下級の神だ。心配ない」と言った。
ムラーがアヌビスの頭に半月刀をあててこじった。パシレイオスが刀の柄を持って助ける。何度もこじった。徐々に頭蓋が開いていく。私は吐き気がした。エミーは全然平気だ。
巨大なシャコガイみたいに頭蓋が左右にカパッと開いた。開胸器がないから、パシレイオスが頭蓋を左右に開くように保持している。
頭蓋骨の下の、あれは髄膜とか硬膜、くも膜って言ったかしら?大脳皮質を覆う膜が出てきた。ムラーがそれを慎重に切り開いていく。
くも膜の下の皮質が見えてくる。人間の脳と同じ構造なのかしら?私は朝食が逆流しそうになる。エミーが頑張ってと言う。パシレイオスは腰が引けている。
だんだん慣れてきた。
エミーがあんたも手伝いなよ、と言う。私はムラーに「私が脳を切り開くわ」と言った。「絵美、大丈夫か?」
「別に肉料理だと思えばいいんでしょ?」と小ぶりの半月刀で大脳皮質を切っていく。半月刀が固いものに当たった。骨?骨が脳内にあるわけがない。私は指を突っ込んで、大脳皮質を左右に開いた。
なんだ?これは?
脳内から現れたのは、血まみれのガラスの球だった。慎重に皮質を球から剥がしていく。球からは何百本ものワイヤーが出ていて、脳のいたるところに広がっていた。
なんなの?これ?
ムラーがそっとガラス球を脳内から取り出す。一緒にワイヤーも脳から抜けてきた。ムラーが水桶に球を浸して洗う。透明の球の中にあったのは、なんか、基盤とチップのようだった。基盤?チップ?この古代ローマで、半導体が半神半獣の脳の中にあるのよ!
エミーが知りたがるので、ざっと半導体とかCPUの説明をしてやる。
「絵美、そんな未来の代物が、なぜ、この古代の半神半獣の頭の中に入っているの?」と聞かれた。私だってわかりゃしないよ。
ムラーが捻っている。
それから、ムラーとパシレイオスと私は、アヌビスの胴体を解剖していった。脳以外で、このガラス球のようなものはなかった。つまり、脳内以外は、これは生物だ。信じられないが、生物だった。
「う~ん」とムラーが唸る。「こりゃ、ちょっと考えないとな。まあ、これまでだ。パシレイオス、屍体を縫っておいてくれ。それで布でくるんで、ナルセスとアブドゥラと一緒に埋葬しておいてくれ。この中にあったものとか、パシレイオス、誰にも言うんじゃないぞ」と彼に言う。
ムラーは、ガラス球を持って「絵美、ご苦労だった。さあ、行こうか」と言う。なにがなんだか、私にはわからない。ムラーもまだよくわかっていないようだ。
「昼飯前の行事にはちょうどいい。絵美、昼飯前にベッドに行こうか?」ととんでもないことを言う。
「ムラー、あなた、こんな後、セックスするつもり?」
「あれ?したくないの?昼飯前の運動をしないと」
「あ~、信じられない」
頭の中でエミーが「せっかくしてくれるんだから、しましょうよ。ねえ、交代してよ。絵美はやる気がないんでしょ?私ならできるわ」と言う。
「どうやって交代するのよ!」
「え~、念じたりして・・・あ!20世紀のハイタッチってやってみよう!」
「バカか、エミーは。ハイタッチ?意識の上でハイタッチ?」
「そうそう、ほら、パチンと!」
「やれやれ、そら、パチン!」
あ!交代しちゃった・・・やれやれ・・・
.第11話 窓ガラスがない!
純粋知性体の私/ぼくの話では、あるユニバースで、物理定数が変わる(光速とかプランク定数が0.1%変化するとか)ほどの極中性子星の爆発があって、物理定数の異なる別の宇宙が分岐した時、数十年間(例えば1980年代と2020年代程度)は、似たような人生を生きているほぼ同一人物が別の宇宙、マルチバースに存在しているという話だ。マルチバースを知った彼らはその人物を自分の『同位体』と言っているそうだ。
ここと別の宇宙の私や仲間は、そんな宇宙を第1、2、3、4ユニバースと名付けて、記憶転移装置というもので、第3から第1の同位体同士で記憶を転移させているらしい。なぜかというと、ガンマ線バーストが2035年に起こり、地球を直撃、種の大量絶滅が起こるのを知ったので、それを阻止しようとしているらしい。
私の第2ユニバースでの恋人の明彦は、第1、2、3ユニバースで、第1の2010年の自分から第2の1980年代の自分へ記憶を転移させている。彼は、第1、2、3、4ユニバースの彼の同位体が生存しているので、別の宇宙の自分の未来記憶を転移されても、ほぼ同一人物だから、あまり不都合がないのだろう。
しかし!しかしである!私、森絵美は、第1、3、4ユニバースでは生存しているが、1985年の時点で、第2ユニバースでは射殺されて死んでしまっているのだ。純粋知性体の私/ぼくは、第2の1985年の記憶を第2のまったくの別人の私の親友、神宮寺奈々に転移させて、奈々/絵美という一つの体に別の2つの人格を持つ人間にしてしまったようだ。同位体と違って、別の人間!別人格よ!
それで、彼女のクローンコピーの私は、知性体のプローブユニットによって、第2の1985年の日本人森絵美が、紀元前47年のコーカサス人のエミーの体に転移したのが今の状態だ!私は怒っているんです!
つまりだ、1986年の奈々/絵美は、同じ宇宙で親友同士で時代背景だって1年しか違わない。どうせ、奈々は明彦と寝るだろうけど(あのビッチめが!)、それは私も一緒に寝るのだから、多少は許せるのだ。
ところが、ここの私と来たら、1985年のニューヨークまでの記憶を持っていて、それが二千年も歴史を遡った、人種も違えば、人生もまったく違う18歳の白人金髪碧眼のコーカサス人の娘の体に入れられて、それで抱かれるのは、知性体が入ったフェニキア人なんである、のよ!わかる?なぜ、私だけこうなっちゃうかなあ?
この話のオチはどうなるのよ?私は、エミー/絵美の存在のまま、この紀元前の古代ローマ世界で死んでしまうのですか?もしかしたら、ムラーに処女をあげちゃったエミーは、避妊もしていないので、妊娠して、出産の時に死んじゃうかもしれないじゃないの!18歳の体で!私も一緒に!死なないにしても、5歳以上の平均寿命40歳代のこの世界で、後数年経ったら老化してババアとなって、20年後くらいには寿命で死んでしまうの!
どうしてくれるのよ!ムラー/知性体アルファ!
エミーに前面の人格が交代してしまって、セックスを知りはじめの中学生のように、エミーはムラー/知性体に犯されて、逝ってしまったので、ムラー/知性体の横に寝転がっているのは、また人格が交代した私、絵美なのだ。だから、18歳の娘の体を貪って、横に転がっているムラー/知性体にこういう文句を言うのは、私なんである。
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午前の燦々とした陽光が窓から入ってきて、空気は澄んで心地が良い。ムラーとエミーがセックスし終わったばかりなので、私/エミーのあそこもジンジンして良い余韻はある、
だけどなあ、窓ガラスがないもんなあ。窓には葦の茎で作ったスダレが垂れているだけ。エミーがアンアンすすり泣くのが外に聞こえたでしょうね。プライバシーをこの古代ローマに求めちゃいけないの?窓ガラスを作って欲しい!
おまけに、朝飯後のこういうセックスは、この時代では普通らしい。アンアン声が聞こえたって、みんな気にしやしない。
奴隷の家じゃあ雑魚寝だから、藁葺き小屋の一間の部屋の隣で十数人の子供がいる横で両親がアンアンしている。その子供だって、15歳とかで結婚したら、両親の横でアンアンするのだ。
少なくともムラーの家は、個室があって、壁は大理石貼り、ドアはある。タペストリーで音が筒抜けってことではない。
しかしだ、癪に障るのだ!
「そうでしょ?理不尽でしょ!どうしてくれるのよ!ムラー/知性体!どうオチをつけるのよ?」
「おいおい、キミとセックスしたばかりで・・・」
「私とじゃないです!エミーです!この小娘とです!」
「いやまあ、エミーとセックスして、その余韻に浸っているのに、文句を言うんじゃない、絵美」
「知性体が余韻なんて!」
「キミだって、レベルは低いが知性体で、アンアン言うじゃないか!」
「まあ、転移した人体の属性なんだから仕方ないわね、感じちゃうのは・・・」
「キミの質問に答えてあげよう。オチをどうするの!という質問だ。言ったように、俺たちは、エミーの部族のところにまず行く。それから中央アジア、前漢、朝鮮を経由して日本に行く」
「それで、日本に行って、最後はどうなるの?日本で私はこの体のまま、死んじゃうの?何千キロも旅するのよ!途中で死んじゃうかもしれないじゃない!」
「日本に行って、調査するって言ったじゃないか。それで、俺はこの体を抜けられるんだ」
「俺は、って、私は?私もエミーの体から抜けられるの?」
「俺は単なるプローブユニットなんで、機能限定、絵美をエミーの体から知性体として取り出すのは俺の本体しかできない。本体が戻るのを待つしかない」
「いつあなたの本体が戻ってくるのよ!」
「それはわからん。第4に行くとか、もしかすると、この第2の違う時代に行っているとか、俺にはわからん。俺の本体だから、気まぐれだ」
「冗談じゃないわよ!この時代の寿命は40年よ!後生きられても20年くらいでしょ?その間に本体が戻ってこないとどうするのよ?この体に入ったまま私は死ぬの?」
「寿命に関して言えば、基本的に紀元前の人類と20世紀の人類のDNAは違わない。違うのは、知識だ。この時代の人間は栄養素なんて知りゃしない。だから、長寿命になるような食事も取らず、不潔な環境で生きるから40歳代で死んでしまう。俺と絵美が気をつけて、食事に気を使い、病気にならなければ、20世紀の人間と同じような寿命になる。それから、俺がエミーの体の成長ホルモンと細胞老化因子を抑制した。体が無事であれば、誰だっけ?キミの言うクロエ・グレース・モレッツの姿のまま、理論的には120歳まで生きられるんだ」
「こら!エミー!わーい、とか喜ぶんじゃない!・・・ムラー、病気になったらどうせ死ぬでしょ?20世紀並の医者も病院もないんだから!」
「ガァガァ、叫ぶな!ま、これから、薬とか医療器具を作ろう。ペニシリンなどの抗生物質なら、この時代の器具でもできるだろう。医療器具も耐熱ガラス作りから初めて、作っていく。石鹸やシャンプーも欲しいんだろう?香水や化粧品も?」
「・・・まあ、今、ないものは仕方ないわね。ゴメン。でも、耐熱ガラスの前に、普通のガラスで窓を塞いで欲しいわ」
「キミの想像する薄い板ガラスは圧延機がないから無理だけど、小さい板ガラスを作らせて、ステンドグラスみたいなものは製造できる。防犯上問題だから、それはすぐにやろう」
.第12話 エジプトから盗んできたパピルスの文書
ムラーはサイドテーブルの上に置いてあったアヌビスの脳から取り出したガラス球を取り上げた。「しかし、これは、高度の工業製品の製造工場がないとできないものだ」
「ムラー、アヌビスはなぜあなたの書斎に忍び込んだの?」
「思いつくのは、エジプトに関するものは、ひとつだけ。海賊から買い受けたエジプトから盗んできたパピルスの文書だ」
「それは無事なの?」
「あいつは書斎を探っていたが、あそこにはないんだよ。そこにある」と窓のスダレを指さした。
「え?」
「そのスダレに貼り付けてあるだろう?海賊の野郎、パピルスを海水で濡らしやがったから、そのスダレにかけて干してあるのさ」
「ええ?このパピルスには何が書いてあるのよ?」
「まだ、読んでない。干しているって言ってるだろう?」
「乾いたら読めるの?象形文字よ、たぶん」
「ああ、この時代の言語はだいたいわかる」
「早く読んでよ。気になるじゃない?」
「20世紀の紙と違うんだ。パピルスだぜ?葦の茎だ。乾くのに時間がかかる」
「もぉ~」
「待っている間に、昼飯もまだだし、もう1回、どうだ?絵美?」
「セックスを覚えたての中学生みたい!」
「このエミーの体、かなり良いんだ。締まりがすごい!名器じゃないかな。ミミズ千匹だな」
「あなた、ろくでもない日本語を覚えているわね」
「ウネウネ動くんだよ。自分でわからないか?」
「・・・あなたのに絡みついて、中があなたのでイッパイになるのはわかるわ」
「それだよ!中で内粘膜がしまって、絡みついて、俺のに密着するんだ。それでさらに締めてくるから、我慢するのが大変だよ」
「・・・変なことを言うから、したくなってきたわ」
「そうだろう?」
「何?エミー?交代しろって?いやです!」
「なんだ、意識して交代できるようになったのか?」
「ええ、ハイタッチで・・・なんでもない・・・交代しません!絵美がお相手します!」
「どちらも俺は好きだな」
「同じ体だから違いはないでしょ?私でもエミーでも」
「いいや、反応が違う。27歳の経験のある日本人女性と、18歳の処女同然の女の子と、体を支配している意識と性格によって、体の反応も違うんだよ」
「・・・ねえ、ムラー、どっちが好きなの?私かエミーか・・・」
「優劣つけがたいな。絵美は普段と違ってセックスの時は積極的で普段とギャップがある。エミーは普段は凶暴な女戦士なのに、抱くと受け身になって、イジメがいがある。エミーはドMかもしれん。だから、エミーを抱く場合は嗜虐心が高まるし、絵美とではこっちがイジメられる。だから、優劣つけがたい。同じ体で、2つの味が味わえるなんて、他の女はいらねえな」
「それでよしとしておきましょう・・・え?エミー、何?『ドM』って何かって?ほら、こういう記憶映像よ・・・え?私って、抱かれるとこうなるの、だって?ムラーがそう言っているわよ。確かに、エミーのアンアンは可愛いわね。どうせ、私は27歳のおばさんですよ。フン!」
「内部会話は声に出さないで、黙ってやってくれないか?」
「ムラーにだけよ。他の人間にやったら、キチガイと思われるじゃない!」
「まあ、そうだな」
┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈
すぐ抱かれるのかと思ったら、ムラーが何か考えている。
「何よ、するんじゃないの?」
「ムードねえヤツだ。思いついたんだが、絵美はジュリアに嫌われてるだろ?」
「ソフィアは大人しい良い人だけど、ジュリアは性格がキツイし、あなたを私が取ったと思って嫉妬してる」
「アハハ、でもそりゃ、逆だ。抱くと、ソフィアは絵美みたいだし、ジュリアはエミーみたいだ。そうか。だから、ソフィアとジュリアと二人一緒に抱く感覚なんだな、絵美とエミーとやると」
「ジュリアって、ドMなの?」
「そうだ。だからな、俺とキミで一緒にジュリアを犯す。ジュリアの体で絵美の存在を覚えさせる」
「それって、3P?変態!イヤよ、ムラーがジュリアを抱くのを眺めるなんて!」
「この時代じゃあ普通だけどな。それにキミは眺めるだけじゃない。キミもジュリアを攻める。だから、三位一体ってことだ」
「う~ん・・・エミーは面白そうって言ってるわ。20世紀の性道徳を持ち出してもしょうがないのか」
「そうだ。キミがジュリアを攻めて、マウンティングを取ればいいんだよ」
「私、レズ行為なんてしたことがないわよ」
「その体にエミーと一緒に入っているんだ。一種のレズみたいなもんだ」
「・・・そうね、エミーが感じると私も感じるわけだし・・・」
「よし、ジュリアを呼ぼう」
「・・・ムラーのセックスの好みか・・・」
「俺じゃないよ、ムラーのオリジナルの方だ」
「・・・ウソついてない?」
ムラーがちょうど廊下を通りかかった奴隷女にジュリアを呼べと言った。
うれしそうにドアを開けたジュリアだったが、私が裸でいるのを見て眉間にシワを寄せた。「エミー・・・いえ、エミー様もご一緒だったんですね・・・」
「ああ、ジュリア、いつもながら、可愛いな。あのな、この3人でやりたいんだが・・・」とムラー。
「旦那様のご命令とあれば・・・」
「イヤそうだな?」
「ハッキリ言って、イヤです。旦那様がエミー様を抱くのを見るのもイヤですし、私が旦那様に抱かれるのをエミー様に見られるのもイヤです」
「ダメよ、ジュリア。ここにお座り」と私とムラーの間を指差す。ドMなんだから、命令されると従うのかしら?
「・・・わ、わかりました・・・エミー様」とジュリアがおずおずとベッドに座った。
ジュリアはギリシャ奴隷だ。丘の家の奴隷頭のソフィアは長身のエジプト人で漆黒の肌だが、ジュリアは、小柄で色白だ。私は枕の方にあとずさって、両足を広げた。「ジュリア、ここにおいで。私の脚の間にお座り」と命令した。昔、SM小説を読んだけど、こんな感じだったかな?エミーが中で、意識上の小鼻をふくらませてフンフンいっているのがわかる。やれやれだ。
「ジュリア、旦那様にお聞きしたよ。ジュリアはマゾ・・・え~、イジメられるのが好きなんだってね」と耳に息を吹きかけてやる。急に体の力が抜けてジュリアがグッタリした。「私もジュリアをイジメていいかしら?」と耳たぶを舐める。彼女がビクッとした。ちょっと噛んでやった。普段、性格のキツイ彼女がビクビクして声をあげる。
「ほら、ジュリア、股を開きなさい。旦那様にお前のあそこを広げて見せてやるんだよ」おおお!私、サドの素質、あるじゃないの?エミーが、交代して、交代してと言っている。うるさいな、後でね。そうだ、ソフィアの時はマゾのエミーの相手をさせよう。後でムラーに言おう。
ジュリアが素直にあそこを両手で開いた。「ジュリア、旦那様に私の恥ずかしいところを見てください、と言うんだ」ジュリアが小声で言った。ムラーも乗ってきたのか、広げられたあそこをジッと観察する。
「ほら、自分でいじってご覧」と私。
「エ、エミー様、お許しください」
「私の命令が聞けないのか!」とジュリアの首筋を甘噛した。
「アアア、いけません・・・アン、だ、旦那様・・・」
「ほら、いつもしてるんだろう?自分でお触り!」
「だ、旦那様、恥ずかしいです・・・こ、こうですか・・・いつもこうしています・・・」と豆を触って、指をいれてかき混ぜる。あら、すごいじゃない。って、エミー、感じて逝くんじゃない!エミーが感じると私も同じくなるんだよ。
ジュリアはしばらく自分でなぐさめて、逝ってしまう。脱力したジュリアを横たえた。「ムラー、次、どうするの?」と日本語で聞く。「ああ、そうだな。ジュリアは尻とかぶたれると喜ぶんだ」
ムラーはジュリアをうつ伏せにした。「ジュリア、俺のエミーが嫌いか?嫌いなのか?お前ふぜいが、エミーを嫌うのか?」とジュリアの尻をかなり強くぶった。ジュリアが体をヒクヒクさせる。私も悪ノリしてきた。
うつ伏せのジュリアの顔をあげさせて、私の股の間に頭を入れた。「さあ、ジュリア、私のをお舐め!さっきまで、旦那様のが入っていたところだよ。あんたの大事な大事な旦那様のが。旦那さまと私のトロトロを舐めてキレイにするんだ」ダメだなあ、私も変態になっちゃったよ。エミーは、頼むから、交代してと言う。ダメだね。初体験したばかりの娘にこれはできないだろう?
うつ伏せのまま、ジュリアの尻を抱えあげて、ムラーが挿入した。私はジュリアの顔を私のあそこに押し付けた。荒い息をしながら、ジュリアが舐めて、吸って、ムラーが乱暴にバックから突き続ける。その内、ジュリアが悶絶して気を失ってしまった。
ジュリアを横に転がして「ムラー、今度は私。私が上になるから」とムラーの上にまたがった。ジュリアが薄目で見ている。「ジュリア、よく見るのよ。私が旦那様をいたぶるのを」とジュリアの頬を親指と人差指で挟み付けて、見させた。目が潤んでいる。「ああ、エミー様。私も虐めてください」と言う。
なるほど。これがムラーの言うマウンティングなのか。奴隷社会でもマウンティングは必要なんだね、と思った。20世紀でもマウンティングはあるもんなあ。エミーが意識の中で自分でなぐさめてヒクヒクしてる。おいおい、私も感じてしまうよ。
それから、私とムラーで、ジュリアを昼飯までさんざんなぶった。ジュリアが私にひれ伏すようになった。あら、これ、癖になりそうだわ。適度にしておかないと。
.第13話 古代ローマの不潔さ
古代ローマのこの時代では、朝食はイエンタクルム、昼食はケーナ、夕食はウェスベルナと言った。一番ヘヴィーなのが昼食だ。時代が下がると、昼食にブランディウムが割り込んで、ケーナは夕食、ウェスベルナが夜食にずれこんだ。1日四食になった。もちろん、富裕階級の話で、奴隷階級は、イエンタクルムとケーナだけだ。
朝食はたいがい、パンと塩味のニンニクと水。果物やミルク、ナッツ。ワインも出ることがあった。パンと言ってもイースト抜きのパンだ。俺のところは偶然発見した自然のイーストで作ったパンを作る。
ミルクは羊かヤギの乳。朝にたくさん食べるのは育ちが悪いと思われる。俺はパトローヌスだから、朝食時は、食べ物の入ったスポルトゥラ(小鉢)をクリエンテスに配らなければいけない。
昼食は、パン、お粥、卵、チーズ。オートミール。
夕食は日暮れ前の四時とか五時。お粥と豆を煮たスープ、乾燥肉、魚。豆類。オリーブ。蜂蜜。
外で食事する時は、タベルナでとる。ファストフード店、バールだ。小麦のお粥。豚肉の串焼き。魚肉団子。オムレツなどがメニューとなる。
ある日の昼食、ケーナは、前菜は、サラダ、カタツムリ三個、固茹で卵二個だ。お粥、焼きズッキーニのソース和え、野生の花の球根の酢漬け。デザートは、アイス、果物。
夕食、ウェスベルナは、前菜は、オリーブ、塩漬けドグベリー、チコリのホースラディッシュ添え。チーズのモルタル、灰の中で火を通した焼き卵。茹で豚の腰肉、温野菜。木の実、イチジク、ナツメヤシの実(デーツ)、メロン、プラム、リンゴ、ブドウ、蜂の巣とワイン。スイカはアフリカ産だ。
豆は、ルピナス、ひよこ豆、そら豆、レンズ豆。月桂樹の葉。胡椒。押し麦入りお粥。大麦、米。
エジプト風の食事では、ビール。麦芽、ナツメヤシ(砂糖の代わり、糖分摂取)、蜂蜜、香辛料をまぜて醸造種を作る。パンを入れて、パンの乳酸菌で発酵させる。
富裕層は、未来の20世紀の食事とあまり変わらない。奴隷階級は、パンとビールに、ピクルス程度だ。1ヶ月に肉・魚が数度。これでは、平均寿命が40年というのもうなずける。
おまけに、狩りをしたりして、傷を負うと破傷風になったり、冬の寒さで肺炎やかぜ、インフルエンザ、急性気管支炎、結核になったりする。
紀元前430年にはアテネで疫病が発生した。人口の3分の2が死滅したという。腺ペストかエボラウイルスによるものだったと見られている。この時代でも、アフリカの近くだから、エボラはあるのだ。20世紀に突如発生したものではないのだ。
アフリカなど他の地域に比べて、古代ローマ帝国の版図は、上下水道、公衆トイレ、浴場などの衛生設備の整備が行われていて、マシな方だった。しかし、それも首都ローマと大都市だけであって、ローマの全区域をカバーするものではなく、ほとんどの住居は街路の排水口や下水道に接続されてはいなかった。
古代ローマ人は入浴が好きだ。医師も患者に入浴を勧める。だが、健康者と病人が一緒に入浴することがあった。それに、風呂はいつも清掃されているわけじゃない。前日に入浴した病人と同じお湯に、翌日に入浴する健康者が使うことがしばしばで、病気をうつされることもある。
公衆トイレだって、海綿のスポンジを木の棒につけて、便を拭き取っている。トイレを使用しているすべての人々によって共有された。海綿の清掃は、単にバケツで水と塩または酢で洗うだけだ。これじゃあ、バクテリアが繁殖し放題だ。トイレからの病気伝染も起こる。
これじゃあ、俺も絵美/エミーも病気になっちまう。
まずは、衛生設備から改善しよう。俺の奴隷の死亡率も下がるというもの。だが、死すべき人間が死なないと、歴史の改変になっちまうかな?経験的には、その程度の改変は、宇宙が適当に吸収してしまうようだが、これの仕組みは純粋知性体でもまだ解明できていない。我々を超越するような存在がいるのかもしれない。
丘の家は、山上の貯水池から水を引いてくるので、水質はまずまず清潔だ。しかし、この海岸の家は公衆水道の水を引いているので、水質は疑問だ。まず、レバノン杉で炭を作らせて、活性炭として、浄水設備を設けさせないといけない。
それから、小樽に心臓弁のような開閉弁をつけポンプ代わりにして、人力かラバを使って高架水槽に揚水させよう。15メートルぐらいの高架水槽で、1.5 kg/cm^2 程度ならまずまずだ。絵美の言うウォシュレットは無理だが、ケツを洗う水栓なら設けられる。それなら汚い海綿スポンジも使う必要がなくなる。
重力式の水道を屋敷と周辺に設ければ、奴隷だってシャワーが使えるし、ハレムの風呂も貯め湯じゃなく、かけ流しの流しっぱなしにできるはずだ。
糞便処理だが、埋設の給水タンクから離したところに、セプティックタンクを設けて、濾過して海に放水すればいいだろう。
丘の家のオリーブの畑から作るオリーブオイルと海水から採った食塩から硫酸ソーダを作って、石灰石と石炭を混ぜて加熱して炭酸ソーダを作れば純度の高い石鹸、シャンプー、洗剤ができる。香料はレバノン杉やエジプトの白檀、ニッケイ、イリスを混ぜればいい。
これで、かなり衛生設備は改善されるはずだ。
絵美が手伝ってくれたおかげで、2ヶ月でこれらの衛生設備が俺の海岸の家と丘の家に完備された。耐熱ガラスも街のガラス職人に教えて製造できるようになった。それで、今や石鹸、シャンプー、洗剤も作れる。蒸留装置もできたので、アラビアの原油を買ってきて、灯油を作り、それで、夜間の照明も可能になった。かなり文化的な暮らしになった。抗生物質の製造は多少難しいが、数ヶ月かければペニシリンぐらいはできるだろう。
まだ、アメリカ大陸まで北欧のヴァイキングが到達していないので、マラリアの特効薬のキニーネを作るアカキナノキは旧大陸には持ち込まれていない。せめて、マラリア原虫を媒介する蚊に注意する。下水に蒸留した原油から取ったケロシンを撒いて油層を作り、ボウフラの繁殖を抑えた。
古代ローマでこれだけやるのは大変なことだった。絵美がいて助かった。いちいち、物理法則とか化学反応の説明をしなくていいのだから。
燃料が手に入ったのだから発電も、と思ったが止めておいた。衛生設備程度なら、俺とエミーがいなくなれば、その内廃れて歴史に埋没するだろうが、電気などをこの古代に発明したら、歴史がどう改変されるか、わかったもんじゃない。それで十分だ。絵美は、ヘアドライヤーが欲しいなどと抜かすが、そんなものは忘れろと言っておいた。
イタリアやスペインなら温泉もあるんだろうが、海沿いの街では温泉など出ない。それで、俺は灯油燃料でボイラーを作らせ、給湯器を設置した。これなら、浴場も流し湯で、貯め湯じゃなくなるから、清潔を保てる。浴場も改築して、45度くらいの湯音の高いもの、38度、冷水槽の3つの大きな浴場を作った。
家のハレムの連中や、奴隷たちも使えるくらい大きなものだ。彼らから伝染病をもらっちゃかなわないから、毎日入浴させるようにした。絵美が、日本の銭湯のルールを持ち出して、浴槽にはいる前に、ちゃんとケツも洗え、体も流せとガミガミ言っている。
風呂の噂を聞いて、俺のクリエンテスもたまに入浴を希望する。絵美が、垢がすごい!勘弁して!というので、インド原産のヘチマで垢すりを作った。絵美がヘチマ水から化粧水、鎮咳、利尿薬も作った。なるほど。人類というのはいろいろ工夫して生活しているのだな、と思う。
.第14話 古代ローマの媚薬『シルフィウム』
だんだん、古代ローマの生活にも慣れてきた。衛生設備も完備されて快適になってきた。トイレも個室のブースを作った。20世紀の東南アジアや南アジアにあるお尻洗いの水栓も設けた。これでトイレットペーパーがなくても、お尻は清潔だ。
ただ、ハレムの子たちや宦官、雑用をする奴隷の子に水栓を使わせる躾をするのが大変だった。こいつら、今まで、汚いお尻のまま生活してきたの!信じられない!ついでに、ビデみたいなものもムラーに作ってもらい、生理のときとか性交の後はあそこをキレイにするんだよ、と教えた・・・私が実技をした・・・トホホ。
最初はとまどったが、ハレムの仕組みも学んだ。ソフィアとジュリアを呼んで、どうセックスの順番を決めるのかを彼女たちに聞いた。意外と彼女たちはハレムの女や奴隷女たちの生理の間隔を把握しているようだ。もちろん、カレンダーにつけて管理しているわけじゃない。なんとなく、お前はそろそろだね、程度の管理だった。しかし、できちゃったが多すぎる。体調の悪い女が妊娠したら死んでしまうことだってある。
私はまず大きな黒板とチョークを作らせた。それで、ソフィアとジュリア、ハレムの女たち、奴隷女を集めて、体の仕組み、生理の仕組み、妊娠の仕組み、普段や妊娠時の健康管理を講義した。古代の保健体育。これ、人類最初だろうか?
この時代の医学用語はわからない。ムラーのデータベースでもそういう知識は蓄積していなかった。街からなんちゃって医者を呼んだ。この時代の医術を学ぶのではなく、医学用語、彼女たちにわかる単語を習うためだ。
人体の断面図とか解剖図みたいなものを書いて彼女たちに教える。ソフィアもジュリアもホォ~とかヘェ~とか言いながら、でも熱心に聞いている。さすがに、奴隷頭をやっているので、二人とも頭がいい。私の中のエミーももっと教えてと言う。
2ヶ月くらいで、奴隷女たち全員の生理間隔を把握した。未来の20世紀と同じく、生理の間隔と症状は人それぞれだった。10歳未満でセックスを始めた女の子は生理不順になりやすいのも統計的にわかった。だから、ムラーは12歳以下の女の子はハレムに入れないし、奴隷たちの家族にも12歳以下はセックスは止めとけ、と言うわけだ。
この時代、人類は早熟だ。栄養状態が悪いのに、初潮も精通もかなり早く来る。初潮を向かえるのは、体格のいい子で9~10歳。体格の悪い子でも12歳でほぼ初潮を済ませている。男の子も同様で、精通を向かえるのは10歳頃だ。
この未熟な、体だけ成長した女の子と男の子を一緒にしておくと、そりゃあセックスしてしまう。どの時代も一緒だ。10歳代前半の男の子がセックスを覚えたら、獣と一緒。みさかいなくやり始める。だから、時々、ソフィアとジュリアが12歳くらいの男の子の耳をつかんで、説教をしている。あの子はまだ若い、やっちゃダメだとか、血のつながった妹を犯すなとか言っている。
それでも我慢できるわけがない。そういう時は、30歳を過ぎ旦那が相手してくれないババア(!)を呼んでセックスさせている。そういうセックス小屋もあるのだ。江戸時代の薩摩藩でもそういうのがあったらしいが、やれやれだ。
夜も照明がなく、他に娯楽がなければ、そりゃ、やるわよね。おまけに一間の家で、両親や兄、姉夫婦が隣でバコバコしているのを見ていたら、そりゃあ溜まって、横に寝ている10歳の妹にも手をだすわけ。
ちゃんと管理していないと、誰の子かわからない子供や近親相姦で産まれた子供がバカスカ増えてしまう。ソフィアやジュリアみたいな奴隷頭は、ハレムだけじゃなく、他の奴隷家族のそういう面倒も見るってわけなんだなあ。
ムラーの長男はムラーが12歳の時に作った子供で、今18歳。小さいながらハレムも持っている。20歳になったら、別の家を持たせるのだそうだ。同じ家に住んでいたら、親の女に手をだすからなのだそうだ。
その他にも、17歳以下の子供が20人くらいいる。ムラーの子供だから、奴隷身分じゃない。産んだ母親は、奴隷身分のままの女もいれば、解放奴隷にする女もいる。漁師のペテロに嫁がせるパトラみたいに、解放奴隷にして、他家へ譲渡する女もいる。ムラーの一家(奴隷の家族も含めての大家族の一家)は女、男の出入りがかなりある。新陳代謝が激しいのだ。
さて、女性の生理用品。
汚い綿の雑巾!を消毒もしないで当てていたので、止めさせた。エジプト綿を買って、布ナプキンを作らせる。口でいうと簡単だが、布を織ることから始めないといけないのだ。服は粗いものでもいいが、布ナプキンなのだから、織り機の目も細かくさせて、肌触りをよくした。
布ナプキンを使用した後は、まず冷水で洗い、経血を流した後、熱湯消毒して天日干しにしてから使うことを教える。
消毒液も必要だったので、ムラーが耐熱ガラスのフラスコやビーカー、蒸発蒸留器を作らせたので、ワインを使って蒸留酒を作り、さらにアルコール濃度を上げるための分留器を工夫してみた。これで純度90%以上のエタノールが作れたので、布ナプキンの普段の消毒にも怪我の消毒にも使えるようになった。
石鹸、洗剤ができたので、漂白剤もその内作らないと。え~、次亜塩素酸ナトリウムとか過炭酸ナトリウムとか、私じゃできない。ムラーにお願いしてみよう。
時々、私の消毒液を盗んで、ワインやビールに混ぜて飲むヤツがいる。ムラーも味見と称して勝手に持っていく。やれやれ。すぐなくなってしまう。
ワイン原料じゃあ大量のエタノールは作れない。じゃがいもやさつまいもは南米原産だから、まだ旧大陸には存在しない。なにかないかと探したら、インド・東南アジア原産のタロイモを見つけた。日本で言う里芋みたいな芋だ。大量に買ってきて、ムラーのイーストで発酵させてもろみを作り蒸留してみると、うまくいった。丘の家でタロイモを栽培させてみよう。麦焼酎も将来はできるかもしれない。
避妊薬も探した。中央アジア横断なんて時にエミーが妊娠していたら大変なことになる。ムラーに聞いてみると、『シルフィウム』という薬草があるそうだ。地中海沿岸部の乾燥した丘陵地に自生するオオウイキョウの仲間に近い植物なんだって。樹液を濾過して薬草にする。
『シルフィウム』は、咳、喉の痛み、消化不良、イボ、ヘビに噛まれたり、かんしゃくの発作にも効くという。それから、催淫と避妊の両方に効果がある完璧な媚薬なんだそうだ。経口避妊薬として、ヒヨコマメほどの量のシルフィウムを摂取する。また、シルフィウムの汁に浸した羊毛の房やスポンジを膣に挿入する避妊方法もあるようだ。
その他にも、熟していないアカシアの果実を蜂蜜とすりつぶしたナツメヤシと混ぜ、それを綿や植物繊維の布に浸して、タンポンのように膣に挿入するのも効果的なのだとか。シルフィウムもアカシアの果実も殺精子成分が含まれているのかもしれない。
探せば古代でもあるんだね。でも、できちゃったばっかだから、避妊とかあまり気にされていなかったのだろう。
シルフィウムは北アフリカ沿岸のキュレネという都市国家から取り寄せた。アカシアの木は、丘の家の農園に自生していたので、手作りにした。ソフィアとジュリアと相談して、妊娠させたら死んじゃう女とか、兄に犯されて10歳で妊娠してしまった女の子とか、どう処方するか決めた。もちろん、私は、エミーの体が妊娠するとマズイので、安全日じゃない時はシルフィウムを飲んで、シルフィウムの汁に浸したスポンジであそこの中に塗布した。シルフィウムって、使うとあそこがムズムズする。媚薬効果はあるようだ。
.第15話(1) ジュリアとソフィアと
アヌビスの狙っていたパピルスに書かれたエジプトの文書はまだ解けない。暗号だろうとムラーは言っている。この文書だけじゃなく、暗号鍵みたいな文書がないと解けないと言っている。私も、石版に書き写して、象形文字の意味を教えてもらって考えているが、さっぱりわからないので、諦めた。ムラーは海賊にもっと聞いてみると言うが、その海賊は航海に出ていて、まだ帰ってきていないのだ。
ある日の夜、パピルスに書き写した暗号を眺めていたが、やはりさっぱりわからない。コンピュターがあれば解読できるんだろうけど、古代ローマだ。あるわけがない。
私の寝室は、夜、明るくなった。灯油ができたので、ムラーが灯油ランタンを作ったのだ。20世紀のキャンプなんかで使うコールマンの加圧式のあれだ。使うには手間が多少かかる。ガスチャンバーとノズルの増し締めをしたり、マントルを取り付けるノズルの調整、空焼きなどをしないといけない。
手先が器用で、こういう仕事が好きな黒人奴隷のパシレイオスにメンテを任せている。まだ、それほど数を作れないので、ムラーの寝室、私のところとハレムの大部屋ぐらいしか設置できていない。密閉容器とネジを切るのが難しいらしいが、古代ローマでも作れてしまう。火災が怖いので、天井から吊るして、紐で上下して着火・消火ができるようにしている。
時々、パシレイオスが「奥様、夜、私が通いましょうか?」と言う。みんな私がムラーの正妻だと思っている。通う?あら?
そりゃあ、パシレイオスもアブドゥラ、ナルセスも宦官で玉なし竿付きだから、妊娠の心配がなく、後腐れなくセックスできるが、どうも知性体仲間のムラー以外とセックスする気にならない。奴隷頭のソフィアとジュリアが言うには、別に、溜まったら宦官となら正妻でもやっちゃっていいんですよ、と言う。この時代はそういうものなのか?
エミーは、ムラー以外の男にも興味を持っている。エミーが意識の前面に出た時、スキあらばやるかもしれないが、私はエミーに20世紀では一夫一婦制度なのよ。抵抗があるのよ。この時代では、ムラー以外の男とセックスするつもりはありません、と説明した。
エミーは、めんどくさい風習よね、別にムラーに隠れてやるわけでもなし。ムラーだって20人のハレムの女の面倒をみないといけないから、私たち(エミー/絵美)に順番が回ってくるのは何日かに1回なのよ。その間、やってもいいでしょう?と言う。
いやいや、私の倫理感では、それでは正妻の威厳は保てない、宦官でもやられちゃったら、女性への征服欲だって出てくるから、ダメ、と言った。エミーは、ケチ!と言って拗ねる。まあ、セックスを覚えたての18歳の古代の娘なんだからそうなるんだろうなあ。
さて、ムラーと私で3Pしてしまったジュリアだが・・・彼女は困った。レズでマゾに目覚めてしまったらしい。ムラーを見るよりも私を見る方が目が潤んでいる。困ったもんだとソフィアに相談したら、だったら、エミー様、私とあなたでジュリアを調教しましょうか?と言い出す。それも困ったもんだ。
ムラーが他のハレムの女の子を相手していて、執事のアブドゥラ、ナルセス、黒人奴隷のパシレイオスも相手がいる夜、ジュリアは私の部屋に忍んでくる。別に忍んでくる必要もないのだけど。
ある夜、私はジュリアが忍んでくるのを予想して、ソフィアも呼んでおいた。そっとドアを開けて、エミー様、と湿った声でことわって部屋に入ってきたジュリアは、ソフィアもいるのに驚いた。
ソフィアは、エジプト人だがエチオピア人の血も入っているようで、漆黒の肌だ。ヌビア人のような北アフリカや中央アフリカの黒人種は低く幅広い鼻だが、ソフィアの鼻は、鼻筋がスッキリとして高く小鼻が狭い。目が非常に大きい。20世紀ならトップモデルになれるだろう。ギリシャ奴隷のジュリアも可愛いが、ソフィアの氷のような美しさには負ける。
それで、ソフィアはドSで、ジュリアはドMなのだ。私がソフィアに、ジュリアが今晩辺り忍んでくるけどあなたも来る?と聞いたら、エミー様、それはジュリアをいたぶっていいってことですか?と聞くので、ジュリアは虐められるのが好きみたいだよ、と答えた。ソフィアは緑の目に残忍な色を浮かべて、お伺いいたします、と言った。おお、私はジュリアが求めるからするだけだけど、ソフィア、本当にドSの顔だよ。
「ジュリア、驚かなくていいよ。エミー様がご招待してくれたんだ。ジュリアが今晩来るからってね。だったら、私もお楽しみに参加したいわけさ」と舌なめずりをした。
「あああ、ソフィア、ダメ、許して。エミー様、お助けください」と助けてというわりに、ジュリアはソフィアにすがりつく。目が潤んでいる。こいつも、本当にドMの顔だよ。
脳内でエミーが、すごい!絵美、交代して!と言う。ダメだよ、18歳の小娘には刺激が強すぎるよと答えると、ジュリアだって18歳じゃない!という。あなたが表に出たら、私たちが二人いるってバレるでしょ?あなた、マゾなんだからと言うと、チェッと舌打ちする。見学してなさいね、エミー。私も見学。これ、ビデオに撮影して、20世紀で販売したらトップセールスをとれるかもね。
ソフィアは持ってきたなめし革のバックから、黒檀かしら?テカテカ光った張り型を取り出した。紀元前にもあんな大人のおもちゃがあるの?
「ほぉら、ジュリア、これはね、あんたの好きなパシレイオスの物を石膏で型取りして、職人に作らせたんだ。こんなのを突っ込まれたら、小柄なあんたは壊れちゃうかしらね?」とニタニタして言う。昼間、若い奴隷にあんなに優しいソフィアが人格が変わっている。同じ性向の同士を見つけたからかしら?
「ソフィア、お許しを。そんなものを私に挿れないで・・・」
「下さい、とお言い!」
「そんなものを私に挿れないで下さいませ!」と両手を握り合わせて跪いてお願いする。でも、ジュリア、ソフィアににじり寄っている。
「ダメだね。エミー様のお許しがあるんだ。今晩はお前をメチャクチャにしてやるよ」
さらに、ソフィアがバックからエジプトガラスの粉の入った小瓶を取り出した。あれは何?
「これが何か知ってるかい?バクトリア産のケシの実から採れる”opion”だよ。ぶどう酒に混ぜて飲んだら中毒になるからね。これをジュリア、あんたのあそこに塗るのさ」
”opion”?オピウム(アヘン)のことか。
.第15話(2) ジュリアとソフィアと
「ヒィ~、エミー様、エミー様、止めさせて下さい・・・」と言いながら、ジュリアは自分から服を脱いでベッドに横たわってしまう。昼間の若い奴隷を怒鳴りつけているジュリアからは想像できない。
ジュリアは自分から股を開いた。ソフィアはジュリアのあそこを左右に広げて、ピンクの粘膜に粉をなすりつけた。
しばらくは何も起こらない。ソフィアがジュリアの愛液とアヘンの粉にまみれたあそこに黒檀の張り型をそっと挿れて、ゆっくり出し入れしだした。ジュリアが腰をグラインドさせて、突き上げる。
「ああ、ソフィア、ソフィア、虐めてはイヤ、止めて」と言いながらお腹がヒクヒクなっている。抜き出した張り型にさらに粉をたらしてまた挿れる。角度を変えて、あそこの中の上の方を突いている。Gスポットのあたりかしら?おいおい、私、エッチだよ。エミーは意識の上で生唾を飲み込んでいる。小娘にこんなのをみせちゃいけないなあ。
この時代のアヘンだから、ケシの実の樹液をそのまま煮詰めたもので純度が低いのだろう。でも、だんだん、ジュリアの体に効き出したようだ。目がうつろになって、ヨダレを垂らし始めた。腰を突き出して背を反らしている。ソフィアは、腰を突き出す方向に合わせて、張り型をうまくあてがっている。ソフィア、慣れている。これ、奴隷の少女にも試しているんだろうか?私も生唾を飲み込んでしまう。
「エミー様、私のバックに張り型がもうひとつあります。それを私に使っていただけますか?お願いです」とソフィアが粘っこい口調で言う。ソフィアのあそこからも白いとろりとした液がしたたった。私も参加しちゃうの?
そう言えば、20世紀の頃、女子校だった。修学旅行で就寝時間になって、みんなが寝静まった後、私の布団に神宮寺奈々が忍んできて、あそこを触られて、私も強引に彼女のを触らせられたっけ。
「エミー様、アヘンの粉を貼り型にまぶして、挿れてください。お願い!我慢できません!」とジュリアをなぶりながら、ソフィアがあえいで私に懇願する。
こんなツルツルの張り型にどうアヘンの粉をまぶせばいいんだろう?と思っていたら、エミーが口に含んで舐めてツバをつければいいじゃん!絵美もバカだねえ、とエミーが言う。なるほど。
それにしても間近で見ると、この張り型、凶暴だ。ソフィアは、『パシレイオスの物を石膏で型取り』したって言ったけど、え~、あの黒人奴隷のパシレイオスの物って、こんななの?これ、キウリの大きさではない、小型の瓜じゃない!それも、半月刀並に反りかえっている!スゲエ!とエミーが言う。
私は口に入れた。太すぎて口にはいらないじゃない!仕方がないので、舌でペロペロ舐めて、ツバをたらした。こんなものだろうか?ガラス瓶からアヘンの粉を振りかけた。あ!イッパイ出たじゃない!
これをソフィアのあそこにあてがう。反っている張り型なので、最初は上の方からあてがって。ソフィアが腰を振る。気持ちいいんだろうな。急に挿れるとなんだから、縦筋に沿って、上下してやる。クリに擦りつけてコネコネしたらどうだろう?
「エ、エミー様、気持ちいいです。でも、焦らさないで挿れて。お願い、挿れてください」と腰をくねらせて言う。ありゃ、ソフィアまでマゾ女になっちゃったよ!
ソフィアはソフィアで、ジュリアの乳首をひねり上げ、口を吸い、ツバをジュリアに飲ませ、張り型をこねくり回してジュリアを悶絶させている。まるで、黒豹が鹿の一種のインパラに襲いかかって、なぶり殺しにしているようだ。張り型を器用に出し入れしながら、ジュリアの体中を愛撫している。ジュリアは白目になって半分気絶しているみたいだ。
レズって、ああいうようにすればいいんだ?こら、エミー、そんなに興奮するんじゃない!私たちの体も感じてしまうだろう!
私もソフィアの真似をして、ゆっくりとソフィアのあそこに差し込んだ。中で締まるのか、抵抗が増す。そうか、これがムラーが言う締りってヤツなんだ。ソフィアのあそこから白い白濁液が出てきて、黒檀の張り型の表面にベットリとまとわりつく。部屋中に女のフェロモンの香りが満ちる。スゲエ!とエミーが言う。
ソフィアも体を痙攣させだした。二人ともアヘンが効きだして、感じ方がすごい。エミーが私も試したい!と言うので、あまえにはまだ早い!と言った。だって、エミーが試すってことは、私も試すってことなんだから。それにアヘンなんか試したら、中毒になるじゃん!
ソフィアは漆黒の体だが、あそこの内側はピンク色だ。あそこの周りが黒い皮膚で、開かれたあそこはピンク。すごいエロチックな光景。ジュリアのだって、ドピンクで、ジュリアはジュリアで、愛液が溢れ出して、太ももを伝っている。
しばらくして、ジュリアの手がソフィアの股間をまさぐって、私の手から張り型を奪って根本を握った。ソフィアのあそこに根本までねじ込む。ソフィアが背を反らせて痙攣した。ソフィアも負けじと張り型をこねくり回す。二人で張り型を出し入れして突っ込みあう。
レズって、男女の行為と違って果てしがないと聞いたが、二人とも射精したらおしまいの男性と違って、いつまでも絡み合っている。いまや、サドとかマゾとか関係なく、ジュリアがソフィアをなぶったりしている。
「ソフィア、よくも私の体をなぶってくれたわね。今度は私の番よ」と昼間の凶暴なジュリアになった。
今度はジュリアがソフィアの乳首を捻ったり、乱暴に片手で乳房を鷲掴みにしている。その間にも張り型をソフィアのあそこに突き立てている。もう、私のベッドは、二人の汗と体液でベトベトになった。二人とも何度逝ったのだろう。
ソフィアもジュリアもゴロリと仰向けになってあえいでいる。ソフィアがジュリアの髪の毛を愛おしそうになでていて、キスをした。
彼女たちの足元にペッタリ座っていて唖然としている私をソフィアが見た。さっき、ジュリアをいたぶり始めた時の残忍な緑の目になった。
「エミー様、あなた様もわたしたちと一緒に・・・」と私に手を伸ばしてくる。ジュリアも舌なめずりをして私を見た。
え?え?え?と思っている内に、二人に組み敷かれてしまった。「ダメ、ソフィア、ジュリア、パシレイオスの物で作った張り型は使わないで」と言った。あ!失言だ!「張り型を使わなければよろしいんですね?」とソフィア。
仰向けのまま二人に組み敷かれた私の下半身にジュリアが吸い付いて、私のあそこを舐めあげ、指を挿れられた。ヒィ~。ジュリアはガラス瓶から粉を出して、私のあそこになびりつける。ジュリアの小さな指が二本、私の中で動いている。人差し指と中指を曲げて、クリの後ろをこすっている。あ!ダメ!
ソフィアは私の唇に吸い付いて、ツバを私に飲ませる。乳房を鷲掴みにされて、乳首を捻り上げられた。黒い体が上半身に絡みつき、白い体が私の下半身に吸い付いている。気が遠くなる。
あ!交代しちゃった!エミーが意識の前面に出た。私はもうこの体のコントロールは出来ない。
エミーが「ああ、ソフィア、ジュリア、もっとちょうだい、もっと。私を虐めて。もっと虐めて」と言う。こら!エミー、ドMをさらけ出すんじゃない!と思うがどうしようもない。エミーのヤツ、自分から両足を大きく広げて、ジュリアの頭を押さえつけた。自分からソフィアの舌を吸って、ソフィアにもツバを飲ませる。エミーはソフィアの乳首を思いっきりひねり上げた。
今度はジュリアが体をすりあげて、私の、いいや、エミーの左に寄り添った。ソフィアは右。左右から、体中を触られ、舐められる。また、エミーが・・・いや、私も逝っちゃう。
またエミーと私は交代した。なんなの?エクスタシーを感じると、交代するの?ムラーとだったら、それほど交代しないのに、ジュリアとソフィアとでは、逝くたびに交代するの?
もう私だって止まらない。アヘンを塗られたあそこもジンジンする。私は、ソフィアとジュリアのクリトリスを左右両手でひねりあげて、指でかき回してやる。二人とものけぞった。ソフィアの頭にまたがって、私のあそこを舐めさせた。ジュリアの髪の毛をつかんで、無理やり私の乳首を舐めさせた。
何時間経った?もう真夜中も過ぎて朝が近いじゃないの!私の左右でゼイゼイ言っている二人の頬を叩いて「ソフィア、ジュリア、もう朝も近いわ!体もベトベトじゃない!お風呂に行って体を洗って、少し寝ないとムラーの旦那様に叱られるわ!」と二人を急き立てて、浴場に行った。三人で、いい匂いの石鹸で体を洗いあった。
部屋に戻ったが、ベッドは三人分の体液を吸い込んで使い物にならない。これ、捨てないとダメだわ。と思った。三人で(違う!エミーも入れて四人だ!)、床の絨毯の上で抱き合って眠った。
寝入りばな、ソフィアが私に囁いた。「エミー様、奥様、あの、あなたはお二人いるのですか?」と言われた。
「え?」
「エミー様は、お二人ですよね?エミー様の中にお二人いますよね?」
「それは・・・」
ジュリアも「ソフィアもそう思ったの?私もそう。エミー様、あなたはお二人ですね?」
見破られた!
.第16話 見破られた!
見破られた!
私はガバッと起き上がった。失敗した。驚いた素振りを示したら、認めたようなものじゃないの!
「ソフィア、ジュリア、お前たちは、なぜ、そんなとんでもないことを思いつくの?私が二人って、そんなことがあるわけがないでしょうに!」
ソフィアとジュリアも起き上がって、私の正面に座った。二人で顔を見合わせる。
ソフィアが「エミー様、私がおかしいな、と思った最初は、旦那様と話される時、別の言葉でお話しされていたからです。私もジュリアも多少はコーカサス語がわかります。それで、コーカサス語で奥様が話される時、旦那様は奥様を諭されるように説明するようにお話しなされます。まるで、年下の女の子に話されるように。ところが、私がわからないまったく別の言葉で奥様が旦那様にお話なされる時、奥様は旦那様と対等というのでしょうか、何でも知っているような素振りでお話されます。旦那様も奥様にご相談されるようにお話されます。そして、別の不思議な言葉で話される奥様の時、奥様は私たちの知らない知識を持っているように思われました」と言う。
「私もそう感じました。私は誰にも言っていませんが、ソフィアが言うことと同じことを思いました」とジュリアが言う。「今、私たちとしている間、奥様は、同じ体なのに、まるで、まるで・・・え~、違う人間のようなそぶりをなされて、コーカサス語を話す方?その人は、まるで、まるで・・・その体に見合った幼い女の子のような振る舞いをなされて、私たちのなすがままに体を委ねていました。仕草も多少乱暴で・・・でも、知らない言葉を話す方の奥様が出てくると、私たちをなぶって、自信と威厳をもって、私たちをコントロールなさった。これでは、まるで、同じ体にもうひとりの人間が入っているとしか、私には思えないのです」
あ~、バレちゃったね。どうするの?絵美?とエミーが聞く。どうしようかなあ。ムラーにこの時間に相談するわけにもいかない。変にウソをついても、彼女らの感じたことを説明するような話ができるわけじゃない。えい、しょうがない。
「ソフィア、ジュリア、わかりました。あなた方の言う通り、私は二人います。今の私は『絵美』、もう一人は『エミー』です。もともとは、私の体は、ムラー様があなた方に説明した通りのアディゲ人の族長の娘『エミー』のものです。18歳の巫女長でした。エミーは、海賊にさらわれ、ここフェニキアに奴隷として売りに出されたのです。奴隷市場で売りに出されたその時、私はムラー様によって、この体に入りました」
「奥様、旦那様がどうやったら、絵美様をエミー様の体に入れられるのですか?」とソフィア。
「私は・・・この世界の人間ではありません。今から二千年後の人間なのです」
「二千年・・・エジプトのギザの大ピラミッドが作られたのが、今から二千年前ですから、そのぐらい先の時間から絵美様は旅をされてきた、ということでございましょうか?」とジュリアが言う。
なるほど。20世紀の女性に同じような話をしても信じる訳がない。だが、この紀元前47年からさらに二千年遡った歴史がここにはあるんだ。それに、この神話と神が存在していることを信じる人々だから、20世紀のような教育が邪魔をして、教えられていないこと、自分の知らない科学的な現象を信じようとしない人々よりもすんなり理解するわけなんだ。
「ジュリアの言う通り、今から二千年前のピラミッドと同じく、今から二千年後の時代から私は旅してきました。ただね、二人とも信じられないでしょうが、この世界とほとんど同じ別の世界から私は来たの」
「奥様、絵美様、それはこのお皿の世界と同じお皿がもう一ひとつあると言うことでございますか?」とソフィアが聞いた。
え?絵美?何?何をイメージしたの?えええ?この世界、宇宙?ユニバース?何?あんたのイメージは、この世界は球じゃない!丸いの!なぜ、下にいる人間は落ちないの?重力?え?何?頭の中でエミーがクエスチョンマークを連発するので、後で説明してあげると言った。
そうか、古代のメソポタミア神話では、世界は平らな円盤状で大洋に浮いている。今から3~4百年前、ヘロドトスやプラトン、アリストテレスが地球球体説を唱え、百年ぐらい前に地動説もギリシャ人が説明したが、エミーが言うように、球体だったら、下の人間はなぜ虚空に落ちない?ということをうまく説明できなかったから、庶民の間では、古代のメソポタミアの話のまま、世界は平たいと思われているんだ。これは面倒だから平たいままにしておこう。
「そうよ、ソフィア。お前が想像するのと少々違うけれど、この世界と別の、ほとんど同じ世界があって、私はその世界の二千年後から来たのよ」
「・・・あの・・・お、奥様は、神、なのですか?」
「いいえ、ジュリア、私は神ではありません。神が、お前になぶられてアンアンするもんですか」
「絵美様は、神そのものでないとすると、大神ゼウスの人間の女性との落とし胤なのですか?」
絵美、絵美、ここで念動力でベットを宙に浮かせたらウッケル~。
やれやれ。エミー、あんたね、日本語で思考する時、どこで私の記憶を読んだのか知らないけど、まるで、私の時代のヤンキーみたいになってるわ。
え?ヤンキー?どれどれ?ええ?未来では、髪の毛を染めたり、こんなお化粧するんだ?もったいない。せっかくの黒髪をパツキンにしちゃって!あら?じゃあ、私も憧れの黒髪に染められるのね!
いや、今、余計なことを脳内で考えるんじゃない!黙ってなさい!
ハァイ!
私がエミーと話して黙っていたので、彼女たちは私がゼウスの落とし胤のヘラクレスみたいな半神だと思い込んだらしい。正座してひれ伏して、私を拝んだ。止めて欲しい!
「二人とも、私を拝まないで、いつものようにして頂戴!」
「絵美様、わたくしたち、このことは誰にも言いません。天地神明にかけてお誓いいたします。わたくしたちに神罰などお与えくださらないで下さい。わたくしたちは、生涯、あなた様の下僕としてお使えいたします」
「・・・わかりました。ソフィア、ジュリア、私もこの世界に疎いのです。私/エミーを守ってくださいね」
「承知いたしました。よろしくお願いいたします」とまた拝まれた。
「普段どおりに振る舞って頂戴。くれぐれも他言無用ですよ」
「ハハア」
一件落着ね、絵美とエミーが言う。まいったな。ムラーにどう言おうかしら?そういえば、ソフィアとジュリアは、ムラーも私と同じ存在と思うのかしらね?
「ムラー様には私から説明いたします。ムラー様に余計なことを言わないこと。普段どおりに接して下さい」
「わかりました」
.第17話 ピティアス
朝食の時、ムラーに昨晩から早朝にかけてのソフィアとジュリアとの話をした。ふ~ん、とムラーは顎をなでていた。
「おもしれえな」
「面白いの?バレたのよ!」
「いや、いいんじゃないか?どうせなら、エミーの言うように念動力でベッドでも浮かせてみればよかったんだよ。もっと効果的じゃないか?」
「ハァ?何いってんの?」
「二人は、キミがゼウスの落とし胤の半神だとでも思っているんだろ?超人的な能力を使えると思ってる。だから、念動力でも使えばもっと信じ込んだはずだ」
「う~ん、だから、何?」
「つまりだ、これで、奴隷頭二人とも、絵美に忠誠を尽くす、信じられる下僕をこの世界に持ったということだ。いいじゃないか。二人とも、絵美の言うことはなんでも聞くぞ。それこそ、真の奴隷だぞ」
「人道的じゃないわよ」
「20世紀の倫理観は忘れな。それで、もうすぐ、俺の手下の海賊頭目、ピティアスが戻ってくる。ヤツにアヌビスの狙っていた文書と対になる暗号鍵の文書がないか、聞いてみるつもりだ。それで、必要なら、俺たちはエジプトに行く」
「エジプト?」
「ああ、アレキサンドリアにまず船で行くことになるかもしれん。砂漠を旅することになるかもしれん」
「砂漠?歩くのはイヤ!」
「バカだな。ラクダに乗って行くんだよ」
「臭そうね?」
「臭いよ、ラクダは。それで、俺とキミだけじゃあ、ラクダの世話だって面倒だ。ラクダの世話したことがあるか?絵美?」
「あるわけないでしょ!・・・エミーはあると言ってるけど・・・」
「だから、身の回りの世話やラクダの世話とか、危ない時の護身の護衛を連れて行く」
「なるほど」
「それで、ソフィアとジュリアを連れて行く。パシレイオスは巨漢だから頼りになる。アブドゥラ、ナルセスはナイフ使いだ」
「7人ね」
「いや、もう一人、女を連れて行く」
「女を?」
「漁師のペテロに嫁がせるパトラの妹がいる。アイリスという娘だ。この姉妹はエジプト人だから、エジプトのコプト語なんかの言語が喋れるし、地の利もわかっている。だから、アイリスがいいんじゃないかと思っている」
「8人か」
「そう、ちょうど、男4人、女4人だろ?絵美は、アブドゥラ、ナルセス、パシレイオスに抱かれたいとは思っていないんだろ?」
「なんか、イヤだわ」
「20世紀の一夫一婦制度だな。俺は他の女とも遠慮しないけどな」
「古代ローマだから我慢する」
「なら、相手は俺だけだ。アブドゥラ、ナルセス、パシレイオスには、ソフィア、ジュリア、アイリスが相手すれば良い。ソフィアは鞭の名手だ」
「そうでしょうね、鞭。革のレオタードが似合いそうよ」
「ジュリアは弓がうまい。アイリスは吹き矢だ。エミーはツーハンドの手斧。ばっちりだ。絵美もエミーに習って、体術と手斧の使い方を習え」
「あ~あ、私も人を殺すようになるんだ」
「殺さなければ殺されるぜ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
知性体と絵美がこの世界に現れる16年前、第三次ミトリダテス戦争(紀元前75年~63年)の頃、ハリカルナッソス(現トルコのボドルム)近辺を拠点にしていたギリシャ系海賊頭目のピティアスもポンペイウスの軍団に蹴散らされた海賊の一人だ。ローマ軍に海賊村を焼かれ、家族・親族・手下共もほとんどローマ兵に殺された。
命からがら、ピティアスは生き残った手下八名と小舟に乗って南へ逃走した。しかし、アナトリア半島の南岸もキプロス島も現在のシリア地中海沿岸もどこまで行ってもローマ支配下に変わりはない。何度もローマ軍に追いかけられて、最後に、命からがらベイルートの北の小さな漁港にたどり着いた。
その小さな漁港は、フェニキアの奴隷商人、ムラーの一族が支配していた地域であった。ムラーの一族は漁港からその一帯の丘陵地帯までを領地としていた。領地の漁民から一報を受けた14歳のムラーは、手下にピティアス一味を捕らえさせた。
ムラーは、漁港の倉庫で後ろ手に縛り上げられたピティアス一味と対面した。
ピティアスはムラーに「もうこうなったら旦那、ローマに突き出して儂の首にかかった賞金をもらってくだされ。もう儂も逃げ回るのに疲れ切った。ただ儂の手下にはできるなら情けをかけてやってほしい」という。
ムラーは「俺はフェニキア人だ。ローマに義理立てする必要はない。おまえの首にかかったはした金の賞金をもらっても俺に得はないさね。ピティアスよ、俺の下で働くというなら、手下ともども、俺の配下に加えてやってもいいのだぞ」とピティアスに言った。
「旦那、あんたの下で働くと言っても、儂らは所詮海賊だ。商人の真似はできない。しかも、儂の配下はいまや八人しかいない。船だってありゃしない。何をどう働けば良いんだね?」
「考えたんだがね、ピティアス、ここから北に五キロほど行ったところに小さな半島が有る。そこそこの入り江もある。半島の根本は断崖で囲まれていて、海からしか半島に近づけないのさ。入り江の奥には2アクタス(現在のエーカー、約4,000平米✕2)ほどの平地がある。そこにおまえらの拠点を築け。レバノン杉は俺の領地に山程あるから造船をするに不足はない。最初に小さな船を作って、どこかからか女どもをかっさらってこい。それで子供を作れ。最初のうちは、俺が資金援助をしてやろう」
「それで旦那にはどんな得があるんですかい?」とピティアスが俺に聞く。
「そうだな、ポントス王国はこうもポンペイウスに負けたら、領地支配もゆるむだろう。黒海東岸との交易と奴隷収集をお前に頼もうかと思っている」
「ああ、旦那、黒海東岸はコーカサスだ。特に、アディゲ人(チェルケス人)は金髪碧眼、ベッピン揃いだ。ベッピンを集めて旦那に献上しまさあ。高く売れますぜ。上物だとアウレウス金貨五十枚(現代の250万円)ほどの価値はありまさあ」
「俺は奴隷売買にはあまり興味はないさね。たまに私のハレムに補充するベッピンを献上してくれればいい。残りはお前が売ればよろしいよ」
「それじゃあ、儂らに賭けて、旦那はどう儲けるんですかい?」
「コーカサスのカフカス地方でな、カラハナソウ(唐花草、ホップ)というつる科の草がある。その雌花を農民に作らせてここに運んでほしいのだ。それから大麦も。おまえら海賊は、交易船を襲って手っ取り早く儲けようとするからローマに目をつけられるんだ。交易と奴隷収集をしていればローマに目をつけられることはない。俺がベイルートのローマの護民官に言って、交易のライセンスを取得してやろう。そうすれば、ローマの正規の交易船だと旗も立てられる。まあ、まずは、船を作って、アディゲ人(チェルケス人)の女でもさらってこい。それで、おまえらの一族を増やすんだよ。そうすれば、半島で隠れ住むこともなくなるさ」
「そのホップっていう草の雌花と大麦で何をなさるんで?」
「ビールを作るんだよ。エジプト産のビールはゲロみたいな味だからな。カフカス産の上物の大麦でビールを作る。ホップは、ビールを濾した後に加えて苦味と香りを加えるんだ。その製法をカフカスの商人から聞いて試してみたいと思っていたのだ。カフカス由来のビールができたらお前らにもふるまうぞ。もう、上物のワインは試作してある。ワインを蒸留した火酒(ブランディー)も研究中だ。大麦麦芽のビールのもろみからも火酒(ウイスキー)ができる。これを売れば、一瓶、デナリウス銀貨二枚(約三千円)で売れるだろう。百本で銀貨二百枚、アウレウス金貨八枚(三十万円)の売上げだ。交易船を襲ったり、奴隷商売をするよりも、ローマ法に則って、正規の商売で大儲けできるんだよ」
「旦那、旦那は儂らと違って、気長な商売をなさるんだね?」
「お前らみたいに宵越しの銭は持たない、って生活じゃあ、一族は幸福になるまいよ。後は、俺の執事どもと相談して、杉を手に入れて、工具を調達しろ。船を作り、女をさらってきて、一族を増やせ」
これがムラーとピティアスの出会いだった。第三次ミトリダテス戦争末期(紀元前63年頃)の頃だ。今を去ること十六年前である。
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