第2話 こんなところに生まれて悲惨だな

「こんなところに生まれて悲惨だな」


歩道の隙間から生えた一本の雑草を見て、金持ちのクラスメイトが鼻で笑った。

ピカピカの革靴で、最新のスマホをいじりながら。


その横で、なぜか胸がチクリとした。

(わからないだろうな、こいつには)

風に揺れながらも真っ直ぐ天を向くその姿に、僕は目を奪われていた。


気づけば口にしていた。

「随所作主、立処皆真(ずいしょにしゅとなれば、りっしょかいしん)だよ」


奴は怪訝な顔をして言った。

「なんだよそれ。まあいいや、行こうぜ」


僕はもう一度、あの雑草を見た。

誰にも望まれなかった場所で、誰に媚びるでもなく、ただ堂々と生きている。


――それが、まぶしかった。



【禅語解説】


「随所作主、立処皆真(ずいしょにしゅとなれば、りっしょかいしん)」は、どこにいても自分らしくいれば、そこが大事な場所になるという意味の禅の言葉。


たとえば、学校でも家でも知らない場所でも、まわりにまかせるだけじゃなく、自分の考えでしっかり立っていれば、どんな場所でも大切な時間になるよ、という教え。


道ばたに咲く花も、だれかに見てもらえなくても、自分の力で生きていてすばらしい。そんなふうに、「今いる場所」を大切にする気もちが、この言葉にはこめられています。

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