一目ぼれした相手が次に会ったら二人になってました。

みそとんこつみたいな人

プロローグ

四月-

それは年度の始まりであり、環境が大きく変わる時期である。特に高校においては入学式や新学年、クラス替え、新しい先生との出会いなど多くの変化が起き、生徒は初々しい気持ちでこれからの一年を頑張ろうと意気込んだりする。


が、

「どーーーーーーーーーーーーーでもいいっすわ」


無論、俺には関係ない

    

俺の名は白石直人しらいしなおと。高校2年生。中学では一応友達はいたが、高校入学とともになかなかクラスの輪に溶け込むことができず、それを周りのせいにした結果そのままろくに誰とも話さずに時が過ぎていき、今では絶賛ぼっち生活を送っている。


「行きたくない…嫌だ、しんどい、世界が暗い」


通学路には高校生活で初めて後輩ができることにワクワクを募らせた同学年の奴らや、ついに最高学年になったことと今年受験という立場から責任感を持ってしっかりとしているが、どこか興奮を抑えられない高3生が意気揚々と満開の桜の木から落ちる花びらの間を歩いている。


そんな中俺だけが絶望の淵に立たされていた。うぅ…ほんとに世界が暗くなってきた。


「学校の何がいいんだよ…」


よく高校生(特に陽キャ)って「マジ学校だりー(笑)」みたいなこと言うくせに実際学校ではめちゃくちゃ楽しそうにしてんじゃねぇかよ。俺ぐらい嫌になってからそういうこと言いやがれ。


「はぁ、まあこんなこと言っても何にもなんねえし行くか…ふあぁ」

俺は肩をガックシ落としてため息をついた後、グぅと伸びをして仕方なくいつもよりうるさいだけのただの歩道を進んでいった。


まあ今日は午前中だけだし速攻で帰ってアニメでも見るか。何見ようかな、そういえばまだ第2期見てないな。いやでもあれもなかなか…


「あ、あのっ」


でも第1期をもう一周してからのほうがいいな。うんうん、そうしよう。じゃあ今日は第1期かな。


「あのっ、そこのあなた!」


ぱふっと俺の左肩に誰かの手が置かれた。びっくりした俺は振り向いてその手の主を確認しようとする。


するとそこには美少女がいた。というかそこら辺の女優と大差ないくらいの美少女が。髪型はロングヘアーで、透き通るような肌、愛嬌のあるくりっとした瞳にすらっと整った鼻。誰がどう見ても美少女だ。


「あっ気づいてくれた…」


彼女は俺と目が合うと、安心したのかかわいらしく微笑む。

その瞬間、


俺は世界の時が止まった錯覚を覚えた。


さっきまで暗く感じていた世界は一気に明るくなり、桜の花を彼女が纏っているかのように落ち、後ろから射す太陽の光が彼女自身を表しているように見えた。まるで世界が彼女のために動いているかのように。俺はしばらく彼女を見ていた。つまり見惚れていたのだ。


そんな硬直する俺を見て彼女はびっくりしたように「どうしたんですか?」と問いかけてくる。


「え、あ…いや、」


俺はその問いかけにしっかりと答える事ができなかった。(あくまで見惚れていたからであり別に普段女性と会話する機会がないからとかではないからね?うん、まじで。)


「あ、それでそれで」


「はい、これ落としましたよ」


彼女はハンカチを取り出して俺の前に差し出した。あ、これ俺のハンカチだ。途中で落としたのか。


そこでやっと俺は我に返り、感謝を伝えながらハンカチを受け取った。


「ありがとうございます…」


「いやいや!そんな感謝されることじゃないですよ!」


彼女は大げさに手のひらをぶんぶん振って否定する。か、かわいい…って駄目だやっぱり見惚れてしまう自分がいる。


「ねえどうしたの~早くしないと遅れちゃうよ」


すると俺の背中側の方から誰かが呼ぶ声がした。おそらくこの子の友達かな。するとハンカチを拾ってくれた美少女は「あっごめん!今行く」と言って俺に軽くお辞儀をしてから俺の横を通り過ぎていった。


「…」


彼女が去ってしばらくした後も、俺はその場で振り向いたまま立ち尽くしていた。なんでだろうか、ずっと脳内にさっきの子が出てくる。たった30秒ほどしか話していないのに彼女のことを考えると胸が変な感じだ。なんなんだこれ。

そこで俺の中で一つの考えが生まれる。


いやでも、俺が流石にそんなことになるはずが…



俺はぼっちで女子とかかわることなんかなくて一生この感情は知らずに生きていくはずなんだ。



これとは無縁なはずなんだ。




でも、




これはやっぱそうなのか…?




俺はつばを飲み込む







「恋、なのか…?」

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