『勇者さま? いやいやこっちが魔王だろ』
魔王の囁き
第1話
第1話 勇者、初手で外道をかます
勇者アルドと旅に出て三日。
俺――ギールは、すでに旅を後悔していた。
というか、この勇者、外見だけは金髪碧眼の爽やか系なのに、
中身が魔王より魔王だ。
「ギール。あの森に魔族が潜んでいるらしい」
「ええ、まあ。斥候がそう言ってましたけど……どうします?」
「決まっているだろう。――焼く」
「…………は?」
そう言うや否や、勇者アルドは聖剣を地面に突き立て、
あたり一帯を覆うほどの浄化の炎を放った。
ボウッッッッ!!
「ぎゃぁぁあああああ!!!」
「助けてぇええ!!」
悲鳴が……ダメだ、聞こえてしまう。
いや、魔族なのは分かるけど!!
「アルド様!? 殲滅の勢いが魔王軍の総攻撃なんですが!!」
「ギール。あれは魔族だろう?」
「魔族ですが! 焼き尽くす前に会話とか交渉とか――!!」
「魔族に交渉など不要だ。根絶こそ平和への最短だ」
平然と言うな。
――おかしい。
俺、勇者の世話役に任命されたよな?
魔王の補佐官じゃなかったよな?
そう混乱していると、森の奥から村人たちが駆けてきた。
「た、助けていただきありがとうございました勇者さま!!」
「森に潜む魔族が毎晩家畜を盗んでいったんです!」
「まさか……森ごと消し飛ばしてくださるなんて……!」
いやそこ褒めるところか!?
「勇者さまはなんと慈悲深い……!!」
「私たちの悩みを、一瞬で解決してくださった!!」
――やめろ。
そんなキラキラした目で見るな。
本人が一番慈悲から遠いんだから。
「当然のことをしたまでだ」
アルドは爽やかに笑う。
……なぜだ。
なぜこの男、どれだけ外道ムーブをしても称賛がついて回るんだ?
「ギール。宿はどこだ」
「あ、はい。あの村の方に……」
「よし。今夜は祝勝会だ。魔族殲滅祝いだ」
お前が魔王だと俺は思う。
そしてこういう日に限って、村人たちは宴を開き、
勝手に「勇者様ばんざ〜い!」みたいなノリになる。
アルドは微笑んでいる。
この男にとっては日常なんだろう。
だが俺は確信した。
――勇者アルドを止められるのは、世話役の俺しかいない。
だってこのペースで行くと、
魔族より先に人間の方が絶滅する。
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