第2話 今度は不思議な転校生!? ジュンちゃん登場!
「はぁ…………」
休みを挟んで週明け、わたしはちょっと鬱になりながら学校に行った。
できれば休みたかったけどママが心配するから頑張った。
転校して2週間だけどまだ友達もいない。
教室についたわたしは暗い顔してたと思う。
無視されてるわけじゃないけど、空気みたいに誰も気にしてくれないから心細くてしょうがない。
朝礼がはじまるまえに見る必要もない国語の教科書を読む。
だって、何かしてないと落ち着かないし変な目で見られちゃうもん。
けどわたしはクラスメイトがいつもと違った様子なのに気がついた。
会話を聞いてると「転校生がくるって!」「また~?」なんて言ってる。
言いながらカーストの高い女子たちが笑ってた。
ウミちゃんとナナミちゃん、それにサリちゃん。
笑いながら、こっちを見てコソコソ何か言ってた。
本当だったら転校生が来るなんて友達が増える気がして嬉しい話だけど、そんな気分にはなれなかった。
キイちゃんがわたしの事をロイ先生にちくってからみんなのわたしを見る目が変わった気がする。
カーストの上にいる女子たちがたまにわたしについてコソコソ話をして笑ってるの。
もしかしてほんとにイジメられちゃうかも。
そう思うと心が苦しくなって、頭が真っ白になった。
メリーさんと会ってた時はあんなに楽しかったのになんでこんな。
ひどいよメリーさん。
わたしはもう会えない友達の事を思い浮かべて涙が出そうになるのを必死でこらえた。
もう、死にたい。
死んじゃえばわたしも幽霊になってまたメリーさんと遊べるかな。
そんな事を思っていたら、チャイムが鳴ってロイ先生が入って来た。
ハァ、病んじゃうよ。
「みんな~~~静かに~~~」
いつもみたいに「優しい先生」のお手本みたいな声と笑顔でロイ先生が入って来た。
「先生! 転校生、転校生は!?」
騒いでいるのは男子のハマジ。
本当は松尾だけどまる子ちゃんのクラスのキャラクターに顔が似てるからそんなあだ名になったみたい。
「ハマジくん。あまり騒ぐと新しいクラスメイトが緊張しちゃうよ」
先生は笑いながらハマジを落ち着かせなると、ドアの外で待ってるらしい転校生に「入って」と声をかけた。
ドアが開いた瞬間、みんなが「わあっ」って声を弾ませた。
正直、私も少し驚いて声が出た。
「ミソラさん。自己紹介、できるかな?」
「はい」
ミソラって転校生の女の子は、これまた綺麗な声で返事をすると黒板に自分の名前を書いた。
転校に慣れてるのか、ちっともビクビクした様子がない。
わたしの時なんて、はじめての転校だから緊張しちゃって先生に言われるまで黒板に名前を書くなんてことも忘れてたのに。
「ミソラジュンです。よろしくお願いいたします。」
御空潤、ってまたまた綺麗に黒板に自分の名前を書くとジュンさんはニコっと笑った。
か、かわいい!
メリーさんが外国人の可愛さだとしたら、ジュンさんは純日本人の可愛さだね。
長く伸ばしてキュッって伸ばした艶々の黒髪なんて、どんなシャンプー使ってるのかわからない。
わたしなんて薬局でお母さんが買ってきたCMで見たシャンプーを使ってる。
きっと高くないやつ。
背も高いし足も細いし、こういう子が芸能人になるんだろうな。
インスタやってたらめちゃくちゃフォロワーいそう。
「はい! はい! インスタやってますか!?」
一番早く声出したのはマサキくん。
クラスで一番チャラいって言われてるのを聞いた。
マサキくんの質問がきっかけになってお決まりの質問攻撃がはじまる。
わたしのときもそうだったけどね。
「好きなアイドルいる!?」
「彼氏いたことありますか!?」
「鬼滅見てる!?」
ジュンさんはみんなからの質問にも動じずニコニコしてる。
わたしの時みたいな困った笑いじゃない。
「そんなにいっぺんに質問してもジュンさん答えられないよ。聖徳太子じゃないんだからね」
先生もニコニコしてみんなを落ち着かせると、
「1時間目の授業は国語だったね。みんなのおかげで教科書が進んでるから、ちょっと打ち解けるためにレクリエーションの時間にしようか」
クラスのみんなは大盛り上がり。
私の時とテンション違うじゃん!
それからはクラスのひとりひとりが自己紹介。
2回目だからみんな慣れてきたのかお調子者のキンジくんなんか一発ギャグなんて披露してた。
わたしの時で懲りたのか、変なゲームもなし。
ジュンさんは転校生として最高のスタートって感じ。
同じ転校生なのに私っていったい……。
現実ってキビシー!
○
帰りの会が終わった時、先生に職員室に呼ばれた。
隣にはジュンさんもいる。
早く帰りたいのになんだろう。もう。
「花巻さんにお願いがあってね。ジュンさんに
学校を案内してあげてほしいんだ」
えぇ? なんでわたしに!?
「花巻さんも同じ転校生だから、話も合うと思ってさ」
なーんかぼっちになりかけてるわたしを先生として気にしてるのが見えてやだなあ。
「私からもおねがいします」
ジュンさんはそう言って笑う。
笑った顔はやっぱりかわいいし、それにちょっと大人っぽい。
だんだん悪い気がしなくなってきた。
「じゃあ、よろしくね。終わったら先生に報告すること。いいね」
あらら、勝手に決めちゃったよこの先生。
まあ、いいけどね。
「よろしくお願いします」
ジュンさんはそう言ってぺこりとお辞儀。
なんだか良い匂いがする。
匂いまで完璧じゃん。
わたしは心のなかで苦笑いしながらジュンさんを案内することにした。
○
案内って言っても、わたしだってまだ転校してそんなに経ってない。
「ここが音楽室」
「そうなんですね」
「ここは理科室」
「そうなんですね」
「ええと、家庭科室はこっちだったかな」
「そうなんですか? 家庭科室は2階だったような……」
「パソコン室は3階、だったはず」
「そうなんですか? さっき通ったような…」
ジュンさんのほうが全然詳しいじゃん!
これじゃなんのための案内なのかこれじゃわかんないよ。
「と、図書室はこっち! これは絶対こっち!」
わたしはなんだかバカバカしくなって図書室を案内して案内は終わりにしようと思った。
きっとジュンさんにバカな子だって思われてるよ。
とほほ。
「ね! 図書室は合ってたでしょ? わたし、本好きだから!」
本が好きというよりも、ただ昼休みの時間にボッチなのが辛くて図書室に逃げてたのが本当のことだけどね……。
「そうなんですね」
ジュンさんはニコニコ優しそうな顔で答えた。
どことなくロイ先生のあの笑顔に似ている。
大人の優しさスマイルだ。
「色んな本があって、おもしろいよ」
かいけつゾロリとか、黒魔女さんが通るとか、ブラックジャックとか。
ブラックジャックは漫画だけど。
適当に本を見回ってると。
「翔さん」
「翔でいいよ。それかショコで。あだ名なんだ」
「それじゃあ、ショコちゃん。ショコちゃんって、霊感があるんですか?」
「へぇえ??」
ジュンさんに意外なことを言われてわたしは驚いた。
「サリちゃんが言ってました。ショコちゃんには霊感があるって」
どうやらサリちゃんがそんな事を言っていたらしい。
わたしが幽霊マンションに行った話から勝手に霊感少女にされているみたい。
なんとなく、霊感少女(笑)みたいなかんじなんだろうけどさ……。
「あるにはあるというか、あるみたいだけど.........」
メリーさんが見えるんだから自信満々に「あるよ!」って言いたいけど、わたしは困っちゃった。
だって霊感があるって証明できないもん。
もしかして、ジュンさんはわたしを笑いものにしようとしてるんじゃないの。
もうウミちゃんたちのグループに入っててさ。
ヒガイモウソウってやつだけど嫌な気持ちになった。
だけどジュンさんは目をキラキラ輝かせて、
「そうなんですね! 私、幽霊とか怖い話が大好きなの。ねえ、友達になりましょ?」
わたしの手を握ってきたんだ。
ひえ! 手がスベスベだよジュンさん!
美少女って手まで完璧なんだ……。
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