メリーさんがきた!! 私は小学生霊能探偵!(助手だけど……)

葛川忍

0章 メリーさんがでた!

第1話 わたし、メリーさん!

  わたし花巻翔! ママにはショコって呼ばれてるんだ。

小学6年生! 身長142cm。友達は、ゼロ!

つまり、ぼっち! とほほ……。

こ、これにはわけがあってね。

だってまさかパパの仕事で6年生になるのに東京に引っ越しなんて、そんなのってあんまりじゃん!

東京の子たちってちっともこっちと仲良くしてくれようとしないし。

今わたしはクラスでぼっち。

トイレにいっしょに来てくれる子もいない。

けどわたしコミュ障じゃないよ! 

前の学校ではちゃんと友達いたんだから!

しかも、転校した日に先生がみんなと仲良くなれるようにってゲーム大会みたいなのをしてくれたんだけどさ。

それが全然盛り上がらなくてもう最悪!

わたしって初めて会うと怖く見えるらしい。

乾かすの楽だから短くしたショートカットのせいで男っぽく見えるからかなあ?

前の学校じゃ「ボーイッシュで可愛い!」 って評判だったのに。

とにかく、このままじゃボッチのまま卒業しなきゃいけなくなっちゃう。

そんなのって絶対イヤじゃん!

だからわたしは考えた。

何かみんなが注目するような事をすればきっとみんな見直すはずだって。

それが、全てのはじまりだった。


  4月14日の月曜日。

放課後、町のはずれは夕陽でオレンジ色。

わたしの目の前には暗くて不気味な建物があった。


「ここが噂の心霊スポットだね」


幽霊マンションだ。

灰色をした3階建てで、1階はシャッターがあって駐車場かな? 


わたしはこのマンションのウワサを新聞係として確かめるために階段をあがりはじめた。

わたしのクラスにはいろんな係があって、なにかをしなきゃいけない。

新聞係はクラス新聞っていう壁に貼る新聞を作る係。

もうひとり新聞係がいるんだけどずっと学校を休んでる。

不登校ってやつなのかな?

それにしても幽霊マンションっていうくらいだから不気味だわ。

夕方で暗くなってきたのに電気はついてない。

壁も汚くて、ヒビだらけで植物が巻き付いてる。

なんだかきたないなあ。

ゴキブリとかいたらやだなあ。

そういえばウワサっていうのは、このマンションの3階に怖い何かが住んでるんだって。

クラスの話を盗み聞きしたけど、幽霊が住んでるとか、犯罪者が勝手に住んでるとか、スパイがいるとか。

一番怖いのは犯罪者。

けどもし本当に犯罪者がいるってわかったらすぐに警察に通報するつもりだよ。

そしたら私ってヒーロー?

スパイはよくわからないけど、犯罪者と似たようなもんでしょ。

警察に通報するのは変わらない。

そう考えると幽霊が住んでるなんてのは一番おかしいよ。

だってさ、家に住むときって不動産屋に行くんでしょ?

幽霊がどうやって部屋に住めるのかわからないよ。

幽霊なんて怖くないね。

前の学校で友達と夜の神社に肝試した時もへっちゃら。

男子のほうがビビってた。

幽霊なんか信じてない。

どっちかと言えばママに怒られる方が怖い。

そんな事を考えながらなるべく足音をたてないように3階まであがった。

階段を上がるとすぐにドアがあった。

電気メーターっていう機械が動いてる。


「誰か、住んでるんだ……」


わたしは勇気を出して人の気配がないかもう一度確認してドアノブに手をかける。

音が鳴らないようにゆっくり回して引いた。


「鍵、かかってない」


私はちょっとビビった。

だって誰かいたら怖いじゃん!

ビビったけど、息を小さくしてドアをゆっくり開けた。

怖くなったらすぐ防犯ブザーを引いて逃げよう……。

部屋の中は薄暗いけど、誰かが暮らしてる部屋みたい。

ソファにテーブル、冷蔵庫に電子レンジ。

けどなんか倉庫みたいな部屋だなあ。

暗くて灰色だし。

わたしは部屋の写真を撮りまくった。

この写真を幽霊マンションに入った証拠にするんだ。

そしたらわたし、見ちゃった。


「て、鉄砲?」


テーブルの上に本物にしか見えない鉄砲が置いてある。

木で作られた猟師さんが持ってるようななやつ。

こんなのもう、絶対犯罪者じゃん。

もちろん写真をパシャパシャ撮った。

ビビりながら写真を撮ってると。

ガチャ!


「えっ!?」


ドアを開ける音がしてわたしは心臓が飛び出るほど驚いた。

誰か帰ってきたんだ!


「……………………君、誰?」


そこには顎に短い髭の生えたおじさんがいた。

髪で目が全部隠れてて見えない怪しいおじさんだ。

ひえええええ! 最悪のタイミング!



  どうしよどうしよう!

おじさんがドアの前にいるから逃げ場がない!


「来ないで! お巡りさん呼ぶよ! ブザーだって鳴らすんだから!!」


わたしは防犯ブザーを手に持っておじさんに見せた。


「おいおい。なんだってんだ」


おじさんは少しだけ焦ってるように見えた。

警察を呼ばれたらまずいのかも。

もしおじさんが怒って捕まえようとしてきたらどうしよう。

そしたら、まず防犯ブザーを鳴らす!

警察に電話しながら逃げて、最悪窓から逃げなきゃ。


「おじさん犯罪者でしょ!? ちょっとでも変なことしようとしたらこれだからね! 大人しくわたしを逃がしたほうがいいよ!」


私はこれでもかとばかりに防犯ブザーを目の前にかかげてみせた。

これってちょっと映画みたいな状況じゃない?


「勘弁してくれよ。俺はどうすりゃいいんだよ」


だけどおじさんは本当に困ってるみたいに頭を掻いた。

けどママが言ってた。

男は狼だって。

狼みたいにシュッと来てガッって噛みつくかもしれない。

油断はできない。

わたしがどう逃げようか考えていたら。


「も~~~~。うるさいわねえ。何事なのよ?」


部屋の中のもうひとつのドアが開いて、眼を擦りながらひとりの女の子が出て来た。

外国人の女の子だ!

お人形さんみたいに可愛い女の子。

クルっとした金髪の毛先が耳のほうでフサっと丸まった変わった髪型の、青い眼の女の子。

寝起きなのか、可愛らしいパジャマを着ている。

なんでこんな子がこんなところに?


「まさか…………誘拐犯!?」


それ以外ないじゃん!

私は警察に電話しようとスマホを手に持った。

だけどおじさんは私を見て驚いた顔をして、意外な事を言ったんだ。


「お、お嬢ちゃん、あいつが見えるのか?」


「な、なに言ってるの?」


意味がわからない。

あいつって女の子のことだよね?

金髪の女の子のほうを見ると、驚いたような顔をしてこっちを見ている。


「わ、私が見えるの!? 嘘!? 信じらんない!!」


女の子は興奮して私の周りをクルクル回ってわたしを見てはしゃいでる。

な、なんなのよ?


「うんうん。なるほど! 確かにそういう雰囲気あるじゃない! すごいわよあなた!」


「なになに!? なに言ってるの!?」


わたしが困ってオドオドしていると女の子は信じられない事を言ったんだ。


「私、メリーさん! あっちはジョージ! 私、幽霊なの!」

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