第17話 おっさん鍛冶師と銃の魔道具

「ニコラス・オバンドーの武器と、ジョルジーニョの魔道具。どちらが強いか、二人に勝負してもらって決めようではないか!」


 ……ちょっと待て。

 なんで俺が戦うことになってる?


「あの、ギルドマスター。ちょっとよろしいでしょうか?」

「どうしたんじゃ、ニコラス・オバンドー?」

「口論をしてたのはアメリアとジョルジーニョのはずです。どうして俺とジョルジーニョが戦う流れになってるんですか?」

「アメリアはおぬしの武器が優れていることを証明したいと思っておる。じゃがS級冒険者のアメリアが戦って勝利しても、アメリアが強いからという結論になってしまうじゃろ」


 確かに、アメリアが俺の斧を使って勝っても、みんなアメリアの力だと思うか。


「その点鍛冶師のおぬしが勝てば、おぬしの武器のすごさが皆に伝わると思ってのう。ちょうどおぬしも武器を持っているようじゃし、いい考えだと思うんじゃが?」

「いやまあ、一応ロングソードを持ってますけど」


 俺はただアメリアのいる冒険者ギルドを見学しに来ただけなのに。どうしてこんなことに……。

 とはいえ、ギルドマスターが決めた以上俺にはどうすることもできないか。


 それにここで俺が勝たないと、俺のことをすごいと言ってくれているアメリアの面子にも関わる。

 俺が負けることでアメリアに迷惑を掛けるわけにはいかない。


「わかりました。ジョルジーニョとの勝負、受けさせてもらいますよ」


 俺が勝負に乗った直後、ギルドマスターがジョルジーニョに問う。


「ジョルジーニョも勝負の件、了承してくれるかのう?」

「いいでしょう。戦う前から結果は見えてますがね」


 完全に見下した態度でジョルジーニョは俺に視線を向けてくる。

 こうして、俺は冒険者兼魔道鍛冶師のジョルジーニョと勝負をすることになった。


 〇〇〇


 ギルドの裏手にある訓練場のような場所にて。

 俺はジョルジーニョとの戦いに臨もうとしていた。


 既にギルドの裏手には、俺達の勝負を見ようという冒険者達が野次馬となって集まっている。


「それじゃあ行ってくるよ、アメリア」

「頑張れよ師匠。まあ、師匠なら余裕で勝てると思うけどな」

「相手は俺と違って戦いに慣れている冒険者なんだ。そう簡単には勝たせてくれないだろ」


 アメリアと言葉を交わしたのち、俺はジョルジーニョと向かい合う。


「おっさんも馬鹿な決断をしたもんだ。大人しくしてれば、痛い目に遭わずに済んだものを」


 二丁の銃の魔道具を取り出しながらジョルジーニョが喋る。

 こいつ、一応冒険者なんだよな?

 台詞が悪人みたいに聞こえるんだが。


「両者、準備は整ったようじゃな。それでは、始め!」


 ギルドマスターの合図で俺達の勝負の幕が開ける。

 先に動いたのはジョルジーニョのほうだった。


「食らいやがれ!」


 ジョルジーニョは銃の魔道具を二丁拳銃のようにして構える。

 それから水属性の魔力でできた弾を連続して射出してきた。

 水の魔力弾はロングソードを構えたまま動かない俺に命中。

 その後もジョルジーニョが放った水の魔力弾は次々と俺に当たっていった。


 皆には攻撃を避け切れずもろに食らったように見えていることだろう。

 けれども俺は最初から避けるつもりがなかった。

 避けなくても問題にならないから。


「見ろ! ニコラスとかいうおっさん、攻撃を全部食らったのにケロッとしてやがるぞ!」

「というか、ほとんど効いてなくないか?」

「どうなってるの!?」


 冒険者達の驚きの声が俺の耳に入ってくる。


 にしても、共通効果の防御力上昇と体力自動回復は本当に便利だ。

 俺には敵の攻撃をかわすほどの機敏さがない。けどこれらの能力があれば避けられないことはあまり問題にならない。何せダメージ軽減と自動回復によって、よほど威力のある攻撃でない限り実質ノーダメージにできるから。


「そっ、そんなはずはねぇ! 俺の魔力弾を食らって、無傷でいられるわけが」


 何かの間違いだと思っているらしいジョルジーニョは再び魔力弾を放ってくる。

 今度も攻撃は俺に命中したが、防御力上昇と体力自動回復のおかげでダメージは実質チャラになった。


「どうなってやがる! こいつは戦う力のない鍛冶師のはずだろ! なんで俺の攻撃が効かねぇんだ!」


 苛立ちを募らせるジョルジーニョに、俺は種明かしをする。


「防御力上昇の効果でダメージを軽減し、そのあと自動回復の効果で失った分の体力を回復してるのさ。あんたが俺の体力を減らすには、回復量を上回るくらいの強い技で攻撃する必要がある」

「今までの攻撃じゃ弱すぎて痛くもかゆくもないってか。調子に乗りやがって!」

「そこまでは言ってないんだが……」


 曲解してさらに怒りを増幅させるジョルジーニョに俺は呆れる。


「いいぜ。そこまで言うなら本気の攻撃を食らわせてやる!」


 ふいにジョルジーニョは二丁の銃の魔道具を重ね合わせる。

 そして合図のようなものを叫んだ。


「我が銃よ、一つとなれ!」


 直後、銃の魔道具から眩い光が溢れ出す。

 光が消えた頃には、二丁の銃は一丁の細長い銃に変貌していた。

 その姿は、まるでライフル銃のようで。


「どうだ? これが俺の魔道具の最終形態だ!」


 やがてジョルジーニョの魔道具にどんどん魔力が溜め込まれていく。


 今度の攻撃は防御力上昇の効果があっても相当なダメージになりそうだな。

 となると攻撃を食らわないようにする必要があるが、俺の身体能力ではかわせるか怪しい。

 であれば攻撃を防ぐ術が必要になるが、何かいい方法はあるだろうか?


 待てよ。【竜剣・焔】の能力で防御すればよくないか?

 これまでは攻撃のときしか【竜剣・焔】を使ってこなかった。

 けど使い方次第では防御手段にもなり得るのではないか?


「吹き飛べっ! ニコラス・オバンドォォォォォォ!」


 ジョルジーニョの魔道具から水の魔力で構成されたビームが射出される。

 その攻撃が来る前に俺はロングソードを振るい、自分の前に炎の壁を築く。

 直後、ビームが炎の壁と接触した。


 炎の壁と水の魔力で構成されたビーム。

 互いに競り合う音がこだまし続ける中、あるときを境に音が聞こえなくなる。


 やがて炎が消えると、水の魔力で構成されたビームもなくなっていた。

 場に残されたのは、白いもやのような水蒸気だけで。


「ばっ、馬鹿な……! 炎の熱で蒸発させただと!? 」


 驚愕のあまりジョルジーニョの声が震える。


 どうやら俺が築いた炎の壁はジョルジーニョの攻撃を蒸発させたらしい。

 炎の壁で覆われていたから全然気付かなかった。


 熱で蒸発させて攻撃そのものを無効化するとは。

 防御面も優秀みたいだな、【竜剣・焔】は。


「さて、そろそろ終わらせるか」


 俺はロングソードを振りぬく構えを取る。

 そのままジョルジーニョに狙いを定め、再び【竜剣・焔】の魔法を発動した。


「せい!」


 掛け声と共に竜が繰り出すものと同じ火力の炎がジョルジーニョへと迫る。

 やがて炎は容赦なくジョルジーニョを包み込んだ。


「あぎゃあああああああああああ!」


 竜の炎に焼かれたジョルジーニョは黒焦げになり、そのまま地面に突っ伏す。

 この瞬間、勝負は決した。


「そこまで! この勝負、ニコラス・オバンドーの勝ちじゃ!」


 ギルドマスターが決着を告げると、観戦していた冒険者達が少し興奮した様子で喋り出す。


「何だよあの炎! えげつないにも程があるだろ!」

「A級冒険者でもあるジョルジーニョに圧勝しちまうなんて……!」

「アメリアさんの言ってた通り、ニコラスさんの武器には神話級の魔法が付与されてたんだね!」


 何? ジョルジーニョってA級冒険者だったのか?

 そのわりにはあまり強く感じなかったが。


「すごいな師匠! さっきの攻撃なんてドラゴンのブレス並だったぞ!」


 勝利後、アメリアが目を輝かせながら俺のもとに駆け寄ってくる。


「まあ、実際竜の炎だからなあれは」

「どういうことだ?」

「俺のロングソードには【竜剣・焔】という魔法効果が付与されている。こいつは竜が操る炎と同じものを放てる魔法なんだ」

「師匠はドラゴンの炎を操れるのか! そんな破壊力抜群の魔法が付与された武器を作れるなんて、師匠の才能には脱帽するぜ!」


 何はともあれ、勝負に勝つことができてよかった。

 これでアメリアの面子を潰さずに済む。 

 


 

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