第1話 退屈の極限
「優勝は――シィ=タドコロ!」
「素晴らしい!」
「またあの少年か!」
会場のあちこちから、賞賛と嫉妬の入り混じった声が飛ぶ。ぼくは期待に応えるように笑みを浮かべ、
「……はぁ。レベルが低すぎる」
ため息をひとつ。数学コンテストのトロフィーをベッドに放り投げる。
窓の外は灰色の空。
「もっと面白いこと、ないかな――」
そう呟いたとき、頭の中で声がした。
『きみ、数字は好きかい?』
「誰?」
辺りを見回すが誰もいない。
だとすると――幻聴か。
『幻聴じゃないよ。おれは
「12? それは名前じゃなくて数字だろ?」
『そう――数字。おれは数字の12。それが名前さ。――意味が分からないって顔してるね。ま、来れば分かるよ。おれたちが住む
数次空間?
「……いいよ、行っても。ちょうど退屈してたところだし」
『そう来なくっちゃ! ちょっと待ってな』
12は嬉しそうに声を弾ませる。
そして、ぼくの身体は次第に光りだす。
――だんだん光が収まると――
「いらっしゃい。こっちの世界へ」
目の前には、
「ようこそ数次空間へ。改めて、はじめまして。おれは12」
「シィ=タドコロ。よろしく」
ぼくは握手を返した。周りを見渡すと、そこはごく普通の部屋。瞬間移動したことは驚きだが、想像より普通すぎる光景だった。
「……それにしても、数次空間って言われてもピンとこないんだけど――ま、いいや。それより、なんでぼくを呼んだわけ?」
「あぁ、きみの意識がこの世界を理解しやすいように処理してるんだ。でも、細かいことには興味ないかな。じゃあ早速、本題に入ろう」
12はひと息つき、真顔になった。
「ざっくり言えば、この世界は一部の特権階級が支配しているんだ。でも、おれはそれが気に入らない。だから、きみに力を借りたいんだ――<人間>の、きみに。<革命>を起こすために」
「革命? またずいぶん物騒だな」
ぼくは肩をすくめる。
「ごめん。ぼくが役に立てるとは思えない。そういうのは、もっと戦闘に適した人を連れてきなよ」
それに正直、特権階級とか政治とか、
「おっと、説明が悪かったかな」
12は口元をゆるめた。
「きみに興味を持ってもらうにはこう言うべきだった。おれはね、<素数>の支配を打ち壊したいんだ」
「素数? 数字の?」
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