日が傾き、エルフたちが広場に集まってくる。大人たちは配られた飲み物や食べ物を口にし、笑顔で卓を囲み、子供たちは祭りの雰囲気にはしゃぎ回っている。そこに、里長のルシウスとリアベルが会場に入る。




「賑わっておるの」


「えぇ。本当に良かった」




目の前の光景をかみしめながら、二人は見渡す。




「ところで、あの二人はどこかのぅ」


「先にルナリアと来ているそうですが……」




二人はこの光景を見せてくれた功労者である二人を探し、キョロキョロと見回すがそれらしき姿は見えない。とりあえず、会場の中心目指して歩いて行くことにした二人は、住人達からの挨拶を返しながら、奥へと進んでいく。すると、テーブルにつき食事をとっているルナリアを見つけた。




「おぉルナリアここにいたか」


「里長、リアベルさんこんばんは」


「こんばんは、徹殿たちはどこに?」




ルナリアはリアベルの質問に、ため息をつきながら料理を配るテントを指さして答える。




「手伝うってきかなくて」




リアベルたちが指の先を辿るとそこには、どこか持ち出したのか、鉢巻を巻きニカッといい笑顔を浮かべながら料理を配る二人の姿が見える。




「なぜ二人が?」


「なんか、祭りは客より運営側の方が楽しいって言ってました」




半ば呆れたように言うルナリアは、テントの方へ歩いて行く。徹と誠に里長たちのことを伝えたのだろう、徹たちは視線を上げ、リアベル達の方見て会釈する。そのあと、テントの奥へと入っていく。徹たちは調理しているエルフ一人一人に感謝を伝え、テントを後にした。




「ルシウス殿、リアベル殿お待たせした」


「申し訳ない」


「いやいや、構わんよ。どんな形でも楽しんでくれているなら良い」




頭を下げる二人を里長が気にするなと肩を叩く。




「この光景が見れるのは二人のおかげだ、重ねて礼を言うありがとう」




今度は里長とリアベルが頭を下げる。




「頭を上げてください」


「もとはといえば俺たちのせいですから」




里長とリアベルは頭を上げると、徹たちと握手を交わす。




「私たちは君たちへの協力は惜しまない。いつでも頼ってくれ」


「君たちの使命にも微力ながら力を貸すつもりだ」


「「ありがとうございます」」


「まぁ、今日は君たちのための宴。最後まで楽しむといい。君たちをもてなしたい者も大勢いるようだしな」




そういって、徹たちの後ろを顎で指す。振り向くと、手伝いをしたテントのエルフたちが、たくさんの飲み物や様々な料理をもって徹たちを待ち構えている。




「ようこそ、エルフの里【アルボル】へ。英雄にして宗主メルクリス様の使徒よ。我々はそなたたちを歓迎しよう!」




里長が、大声で告げると、待ってましたとばかりに、徹たちにエルフたちが押し寄せる。準備を手伝っていた二人は、多くの住人たちに気に入られていたようだ。宴のにぎやかさは星々の瞬きに比例し増していく。

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