共に

 メルクリスが後光をしまい、居住まいを正して座り込んだ。




「あ、これ粗茶ですがどうぞ」




誠がお茶をメルクリスの前に置く。




「あ、お構いなく。それでですね、詳しい話なんですけど……その前にここに至る経緯をお話しても?」


「あ、お願いします」




誠もメルクリスの前に座る。メルクリスがちゃぶ台の前で手を動かすと、空中に雲が現れ、ドーナツ状に広がっていく。その穴は水面のようになっており、そこに誠とメルクリスが徹が神界へ来た当初の映像が映る。






「ギフトも神器も膨大な魔力もいらないので、私の親友を一緒に異世界へ連れて行ってください」


「へぁ?」


「そういうものいらないので、私の親友、上地 誠を一緒に転生させてください」


「うーーーーん、少々お待ちを」


メルクリスはしばらく考え込むと姿を消す。しばらくすると、メルクリスが返ってきた。


「どうでした?」


「とりあえず、その誠さんを連れていくことはできそうです。しかし、条件があります」


「ほう」


「誠さんの意思で異世界転生を希望する場合のみ、連れていくことができるそうです」


メルクリスの話を聞いた徹が、メルクリスに頭を下げる。


「ありがとうございます!」


「あ、あのまだ連れていけると決まったわけでは……」


「大丈夫大丈夫!さぁ行きましょう!」


映像がブツンと消えた。






雲が霧散し消え行く。




「映像でお見せした通り、誠さんが望むのであれば連れていくことができます。その……行きますか?私の世界ガイアランスに……徹さんは大丈夫しか言わないんですが……」


「行きます」


「へ?」




メルクリスは、驚きのあまり、素っ頓狂な声を上げる。




「だから言ったでしょ?大丈夫だって」


「あの?本当にいいんですか?」




再度確認するメルクリスに対し、誠は深く頭を下げる。




「私もガイアランスへ連れて行ってください」


「誠さん……理由を聞いても?」




メルクリスが理由を尋ねると、誠は顔を上げて徹を見る。徹は誠を見て笑っていた。


それを見て誠も自然と笑顔になる。




「こんなワクワクすること、徹にだけ独り占めにさせたくないからです。それに……こいつがいない世界はつまらない」




メルクリスは一つため息をつく。




「わかりました。お二人をガイアランスへ連れていきます」


「「ありがとうございます」」




二人がメルクリスに頭を下げる。




「お二人は本当に仲が良いんですね」




メルクリスは半ば呆れながら、少年のように喜ぶ二人を見る。この時、メルクリスは彼らの本性を見抜けなかった。それゆえに彼らが活躍するたび、胃薬のお世話になることをメルクリスはまだ知らない。


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