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数学の授業終盤に、教師は大量の課題プリント指定した。隣の席の女子は机にうっつぷし足をパタパタしながら「は〜〜だっる!明日までにできるわけなくない」ため息をついている。

教室中からわかりやすくため息が漏れだす。教師が目をつやりと光らせて「静かにしなさい、増やすわよ」とメガネを押し上げながら脅しにかかるのでクラスメイトたちは膨れっ面のまま仕方なく姿勢を正す。どこからか舌打ちが聞こえた。ぼくはまえを向いているが、みんなは教師の顔を睨めつけたり、反抗的に目をそらしていると想像できた。

生徒の反応なんてどこ吹く風の涼しい顔した教師が「今日はここまでにします」といい鼻を鳴らして教室を出ていく。

「ねー」袖をつんと引っ張られたので隣の席の女子の顔を見る。上目遣いで「ぼくくん、やってくんないかな」とぼくの机に数学課題のプリントをのせた。

他人から望まれたらやると決めていたぼくは「いいけど」と受け取ったプリントをかばんにしまう。「ええっ、いいの!」と隣の席の女子はただでさえ大きな目を零れ落ちそうなほど見開いて驚いていた。すぐにふにゃり破顔した。ご友人数人が隣の席にわらわらあつまりだす。「あのね、あのね、ぼくくんに課題代行してもらうの〜 ラッキー!」とはしゃぐ。隣の席を囲う数人は「は?」と疑問と羨望を織り交ぜたような複雑そうな顔でぼくを見ていた。

課題代行をするうちに、隣の席の女子はそのうち無言でぼくの机に数学以外にも課題プリントを置くようになった。

仕上げた課題プリントを手渡そうとしたら、「机の上でいいから」と冷たく言われた。

課題代行に頼る人数は増えた。

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