第24話 拉致
Side:水無月
五月下旬のある日の放課後。
私が教室で帰る準備をしていると、どういうつもりか一樹が話しかけてきた。
「な、なあ葵、ちょっと話しがあるんだけどいいか?」
「なによ。あんたと話すことなんてないんだけど」
「そう言わずに聞いてくれよ。俺あれから色々考えて、やっぱり悪いのは自分だって気づいたん
だ。だからお前に謝って仲直りがしたいんだよ」
「ふうん······口ではなんとでも言えるけどね」
「本気で反省してるんだって! 信じてくれよ!」
「まあそこまで言うなら仲直りしてあげてもいいわよ」
一樹の必死さに絆された私は、その謝罪を受け入れることにした。
もう十分反省してるみたいだし、私も言い過ぎたところがあったからね。
ここらへんで手打ちにしてあげましょうか。
「ありがとう葵! あ、そうだ! 仲直りの記念に、この後ファミレスに行かないか? お詫びになんでも好きなもの奢るからさ」
「そうね。ちょうどパンケーキが食べたい気分だったし、付き合ってあげるわよ」
「よし! それじゃあさっそく行こうぜ」
そうして私達は、学校を出てファミレスに向かうことにした。
「ねえ一樹、ここらへんに本当にファミレスなんてあるの?」
人気のない裏通りを先導して歩く一樹に、訝しんで尋ねた。
最近見つけたお薦めの穴場スポットらしいけど
、寂れていてそんなお店がある雰囲気ではない。
「もう少しで着くって」
本当かしら······もしかして、私騙されてるんじゃ······
そんな疑いを抱いた時だった。
背後から一台のバンが迫って来て、私達の側で急停車し、その車内から二人の若い男性が躍り出て来たのだ。
「えっ······なに······!?」
突然の事態に泡を食う私に、その若い二人の男性が襲いかかる。
瞬く間に羽交い締めにされて口に猿ぐつわを噛ませられた。
私は必死に身体をよじらせて抵抗するけど、男性の腕力に抗うことができるはずもなく、抱えられて車内に押し込まれた。
一緒にいた一樹は、助けてくれようとはせず、私が車で連れ去られるのを、ただ黙って見ているだけだった。
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