原作知識を持って転生した先はモブ兵士の息子!? 〜滅ぶ運命にある村のフラグをへし折る為に、努力しまくったら最強の魔法使いになって、シナリオを書き換える!〜

イーグル

第1話 滅ぶ運命の村、転生した彼は絶対滅ぶルートを回避しようと決意する

 ──森の中で遊んでいたら、ふと思い出してしまう。


 僕は家に居てPCと向き合っていたはずだと。



 草むらの中にいた僕はそこから出て、目の前に広がる湖の前に来ると、水面に鏡のように映る今の自分自身を見た。


 僕の姿は覚えている。元々は24歳の成人男性で黒髪の日本育ちの日本人。

 それが僕こと倉部満(くらべ みつる)という人物のはずなのに、今映ってるのは明らかに違う。


 青く短めの髪でサラッとして大きな青い瞳、黒い半袖の服に青い半ズボン、何処からどう見ても可愛い男の子の姿で、身長は明らかに小さく成人男性には絶対に見えない。

 年齢としては小学生ぐらいか、多分10歳前後かな?


「え、えー?」


 驚きから漏れた僕の声は高く、まだ声変わりの時期を迎えていなかった。


「レイセ見ーっけ!」


 そこに僕以外の声が耳に聞こえ、振り返ると僕ぐらいの小さな男の子が2人立っている。どっちも活発そうな印象。

 僕を見て『レイセ』と言ったって事は、今の僕はレイセという名前の少年か。


「かくれんぼしてたのに出て来ちゃ駄目だろー? レームかくれんぼ上手いのに湖でボケーっと立ってたし!」


「ごめん、湖が綺麗で見惚れちゃってた」


 どうやら森でかくれんぼの最中だったらしく、僕は彼らと遊んでいたみたいだ。とりあえず僕は適当に理由を言って謝罪。


「え? レイセお前どうした?」


「どうしたって何が?」


 その時、僕の言葉を聞いた1人が驚いたような顔で、僕を見てくる。湖に見惚れたって理由じゃ不自然だったか?


「だってお前謝ってるし、何時もならうっせーな!

 とか言って怒ってたから……」


 2人は僕が謝った事自体に違和感を持っていたっぽい。


 そうか、このレイセっていうのは元々悪ガキみたいな感じなんだ。見た感じ可愛いけど人は見かけに寄らないな。

 かと言って突然彼らの言う通り「うっせーな!」って突然言うと、不自然な感じになりそう。


「いや、実は──さっきから腹痛くてよ、なんか調子悪いっぽいんだよな……」


 僕は体の調子が悪いフリをすれば、さりげなく俺と言って弱った悪ガキとして接する。


「それならそうと早く言えって! 帰ろう!」


「風邪なら酷くなる前に寝なきゃ駄目だろ!」


 幼い彼らを今が子供とはいえ、元は24の大人である僕が小さい子を騙してるみたいで罪悪感に襲われてしまう。でも今の状況を把握する為だ。


 自分にそう言い聞かせて僕は彼らと森を出て、家にまで連れてってもらう──。



「……何か頭ボーッとする。何処だっけこの場所?」


 知らない村に着いた僕は2人に付き添われながら、病人を装うと今の場所について聞く。


「本当に大丈夫か? 生まれ育って10年のコダイダ村を忘れるって相当だぞ」


 この村で生まれて10年、という事はレイセは今10歳だ。

 そっか、此処はコダイダ村って名前の村か……ん?何か聞いたような気がする。コダイダ村って──。


 まさかの可能性が頭を過ぎってしまい、僕は更に彼らへ聞く事が出来て質問していく事にした。


「なぁ、ひょっとしてエスポワ王国ってこの世界にあったりする?」


「は? エスポワ王国はあれだろ。国王のロードラーっていう立派な王様がいる国だって学校で教わったし」


「!!」


 コダイダ村、エスポワ王国、僕の中で確定する。

 いや、確定してしまった。


 今居るこの場所が滅ぶ運命にある村なのだと──。



「どうしたのレイセちゃん? ママ心配だわ……」


 2階建ての家へ帰って来て、ベッドに寝込む僕へ心配そうに寄り添う彼女はレイセの母親で『レイカ』。

 名前は僕を連れて来た友達2人が、レイカおばさんと言ってたので把握出来た。


 レイセぐらいの息子がいるのを思えば30代半ばっぽいけど、外見は20代でも通じるくらい若く、青い瞳の青い髪でストレートロングの美人。

 質素で控えめなベージュの服を纏う姿が美しく見える。

 今の僕の身長(130cm)より40cmぐらい高くて、そしておっぱいが揺れるぐらい大きい……って今それ言ってる場合じゃない!


「……ねぇママ、今って現和何年?」


「え!? 今は現和1193年だけど、今ママの事ママって!」


 あ、今の自分は悪ガキという設定が綺麗なお母さんを前に抜け落ちてた、普段のレイセは母親の事をママって呼んでなかったんだな。


 でもまぁ良いか。

 具合悪くて弱ってるせいで、こうなった事にしとけば良いし何より美人のお母さんに対して、口悪い事は言いたくなかったから。


「ああ〜、お城で兵士を務めるあの人に伝えたい〜!」


 母親レイカは感動した様子で部屋を後にした。

 そんなにママって言われる事が嬉しかったのかな、お城で兵士をするレイセの父親は何処かの国の兵士か。


 ってそれよりも現和1193年か。僕は頭の中で過去の記憶を遡る。



「本当に来ちゃったのか僕……漫画だけの事かと思ったのに」


 レイカママが部屋を後にしてから、呟いた僕が今いるのはゲームの世界。


『ブレイブガーディアンフォース』という剣と魔法のアクションRPGで、このゲームを僕は凄くやり込んだ。

 長いタイトルなので『ブレガース』と皆は略す。


 主人公を操作して仲間と共に向かって来る敵を次々と倒しまくる、アクション要素の強い爽快感あるゲームとして知られている。


 主人公の『勇者ルシオ』の元に仲間達が集い、共に力を合わせて悪を倒し、世界の平和を守る王道系のゲームだ。

『エスポワ王国』はルシオにとって拠点となる国で、物語の本拠地に当たる重要な場所。


 これだけじゃなく平和を取り戻すグッドエンドがあれば、世界を滅ばされたり勇者が闇堕ちしたりのバッドエンドがあって、好感度の高いキャラと個別のエンディングまで存在している。


 やり込み要素がある上にキャラ人気も高く、日本で爆発的な人気を誇るゲームの世界に、僕がまさかの転生。


 このゲームをやり込み、働いた給料をグッズや漫画に設定集と関係する物を買って、部屋を埋め尽くしていた僕はブレガースの大ファン。


 行ってみたいと思っていた世界に来れて万歳、と喜びたいけど呑気に喜ぶ状況じゃなくなってしまう。


「何でよりによってこの場所に来ちゃうんだよ……」


 僕の今居る『コダイダ村』は、ブレイブガーディアンフォースに出て来る村の一つ。

 ただし、この村はグッドエンド、バッドエンド、何処に行こうが村を滅ぼされて壊滅は避けられない。


 現和1193年から7年後、主人公ルシオの物語が始まる1200年となった年に、物語最大の敵である『魔王』が復活して、それに目を付けた『メフィスト帝国』が『魔王軍』と手を組み、世界を我が物にせんと利用を企む。


 そして力を見せつける為だけに、コダイダ村は壊滅させられる運命。


 バッドエンドは魔王軍や帝国に敗北のルートがあって、かなり悲惨なエンディングだった事を覚えてる。

 それだけ彼らは容赦無い破壊活動をこの村で行う訳だ。


「絶対その終わりは駄目だろ……!」


 憧れの世界に来て本来浮かれたいのに、それが許されない。後7年したらこの村は魔王軍、またはメフィスト帝国に滅ぼされてしまう。

 どっちになるかはルートによって異なるけど、滅ぼす者が変わるだけで大きな違いはない。


 僕が今転生したのは主人公でも強いキャラでもなく、何者か分からないモブキャラの可愛い子供。コダイダ村の出身で間違いないと思うけど誰だ……?


 父親が兵士みたいだけど──。


「!? まさか!」


 僕は思い出す。

 ゲームの作中にあったエスポワ城でのモブ兵士との会話を。


 その内容は「コダイダ村が……あそこには俺の愛する妻と息子が居たのに畜生……!!」と、故郷の家族が亡くなって深く悲しむ物だった。

 あの城で他にコダイダ村を滅ぼされて、同じように家族を失ったキャラはいないはず。


 となると僕の転生先は『モブ兵士の息子』。

 設定集とかファンブックにも載ってないモブ中のモブキャラとして、今この場に立ってる訳か。


「状況は分かったけど、これからどうすれば──」


 7年後に魔王軍、またはメフィスト帝国によって、この国は無残に滅んで無くなる。


 逃げるか?不正解。


 子供の足で逃げても遠くは逃げられないし、レイカに言って兵士の父親を頼り、移住を提案しても話が飛躍しまくりで信じてもらえそうにない。


 エスポワ王国に行って国王ロードラーを頼るか?不正解。


 いくら自国の国の兵士と言っても運良く王様には会えたとして、レイカ同様に信じてもらえるビジョンが浮かばない。


「ないない尽くしって感じだなぁ……」


 ヤバい、詰んだか?いや、諦めたら終わってしまう。


 折角憧れのブレガースの世界へ来たのに、このまま7年経過で滅びの運命を迎えて終わるのはごめんだ。

 とりあえず今の自分の状況を、もっと分かりやすく知りたい。


 ピッ


 すると頭の中で何か音が聞こえて、自分の目の前に画面が表示される。


「これって、ステータス画面?」


 今僕の前に現れたのはゲームで馴染みの『ステータス』で、僕は今の自分を確認。



 レイセ・クローゼ 村人


 レベル:1 HP12/12 MP3/3


 攻撃力:1


 防御力:1


 魔力:1


 魔法攻撃力:1


 魔法防御力:1


 素早さ:5


 器用さ:2


 幸運:14


 スキル 魔力注入



「ひっく!?」


 今の姿が弱い子供だから当たり前としても、同じレベル1スタートのルシオより全然低い数値。というか幸運がHPより高いって、生まれつき運が良いのかレイセって。


 こんなんじゃ初期モンスターのゴブリンとかも倒せなくて、ワンパンで倒れそう。


「ん? 魔力注入って──」


 その時、僕は自分の持つスキル『魔力注入』に注目。これは対象の相手に自らの持つ魔力を注ぐ言葉が出来る、『特殊スキル』で原作でもこのスキルを持つのは1人だけ。


 それをモブ兵士の息子、レイセが持っている。


「これだ!!」


 暗闇に閉ざされていた僕の目の前が、いきなり明るい光に照らされて道が見え始めた。


 このブレイブガーディアンフォースの世界では、物語に欠かせない重要な存在。それは『魔神ゴーレム』という神々が生み出したと言われる守護神だ。


 山のような大きさを誇り、ゲームで1、2を争う最強の力を持つ。ルートによって主人公の心強い仲間となれば、敵に操られて厄介過ぎる敵として立ち塞がる。

 巨大にして圧倒的な力で相手を無双する姿が多くのファンを引き寄せて、かなりの人気を持つ。


「ゴーレムを敵よりも、主人公(ルシオ)よりも早く手に入れて動かせれば……」


 このゲームをやり込んでいるので最強ゴーレムを目覚めさせ、動かす方法だけでなく場所も当然把握している。

 それはゴーレムに強い『魔力』を多く注ぎ込む事、これが可能なのは数少ない『特殊スキル』持ち、『特別なアイテム』の2つ。

 アイテムに関しては魔王軍かメフィスト帝国が用意して使う、敵にのみ許される狡い特権だ。


 けど今回はそんな特権を使わせる気は無い。僕がゴーレムを動かし、コダイダ村が滅ぶフラグを回避する。その為に残された猶予は7年程。


「今から魔法の勉強しまくって魔力を高めるしかない」


 不幸中の幸いか、このレイセには多少の魔力があって、『魔法』を覚える素質を持っている。それを7年間限界突破の勢いで鍛えれば、ゴーレムに魔力を注げるぐらいの力が身に付くかもしれない。


 今から7年魔法の勉強全振りで頑張ろうと、決意した所で僕はベッドから飛び出して家の外に出ようとしていた。


「あれ、レイセちゃんー? もう大丈夫なのー?」


「大丈夫ー、図書館行ってすぐ戻るからー!」


 レイカママにそう言って、僕は目的地へ急いで向かう。此処がコダイダ村なら、滅ぶ前の村の姿は設定集に載ってるのを見た覚えがある。

 その記憶を頼りに、村の中央にある大きく立派な建物へ真っ直ぐ向かう。


 確かこの場所は『図書館』で分厚い設定資料集によると、様々な本が載ってると聞く。という事は魔法に関する本もありそうだ。

 僕はあってほしいと願いながら図書館に訪れ、本を探す。

 その時、初歩的な魔法の本が見えれば、すぐにそれを手にとって本を読み始める。

 他の利用者もいるので極力静かに。


 元の世界で日本語ぐらいしか分かんないから、全然読めない言葉で並んでたらどうしようと思ったけど、不思議と読めて頭にスッと入っていく。

 これはレイセ自身が現地の文字と慣れ親しんだせいかな。


「魔法に大事なのは集中力、精神力、そしてイメージ力。具現化させてコントロールする事が大事──」


 初歩の魔法について書かれた事を理解し、頭の中でイメージしてみる。

 自分が炎を出す勇ましき姿を。


「んんん〜〜……!」


 僕は目を閉じて右掌を開き、強く念じた。自らの心へ炎を出せ!この危機を本気で乗り越えるなら、それぐらい出してみろ!と。


 ボウッ


「 !!」


 右手の指先から感覚が伝わると僕は目を開く。

 すると僕の右手人差し指からロウソクのような火が灯されていた。

 夢でもなんでもない、確かに今自分の手で火を作り出したんだ。


 小さいけど魔法への第一歩を踏み出し、僕はなんだか凄く楽しくなってくる。

 攻撃魔法とは程遠く、か細い火だけど自分の手で生み出すと、こんなに嬉しいのか。


「魔法楽しい……!」


 魔法への手応えを感じると僕は時間を忘れ、ひたすら魔法の本を読み進めていく。

 勿論最大の目的は忘れていない。


 コダイダ村が滅ぶフラグをへし折る為に、強くなって魔神ゴーレムをこの手で動かす。


 僕は勿論死にたくないし、あの綺麗な母親が村と共に消える所なんか見たくない。

 そして勇者ルシオ達、原作キャラ達に会えないまま死ぬなんて嫌だ。

 ルシオがヒロインと結ばれる姿を見たいし、キャラの皆と話してみたい!


 その為にメフィスト帝国と魔王軍を絶対叩き潰して、村の滅亡ルートを回避してやる!

 グッドエンドを超える超グッドエンドを迎えてやるんだ!絶対に!!


「レイセちゃ〜ん、ご飯の時間よ〜。今日はシチュー作ったから〜」


 強い決意の後、マイペースなレイカママの呼ぶ声。


 この後、一緒に手を繋いで家へ帰ってきてシチューを食べたら滅茶苦茶美味しかった。

 これが日々の僕の癒しになりそう。


 ついでにマザコンにもなっちゃうかもしれない──。



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