梨川さん宅の7面体パズル

二見あい

第1章 私とあなたの神さま手帳

無遥の哀歌

 ひとはみな、生きながら首輪をつけて。

 墓前に咲くは昔語り、記憶とことなるれのびたがる。


 あり水辺みずべで、波にまれず。

 水底みずのそこさなぎ夢見ゆめみ星観ほしみなごむ。揺らし、揺らる水面みなもが隠す月もある。つぶても今は届かず。


 かえるは死せず、寄せ合い身をに返して。

 朝陽あさひところのぞみ来て、ことの裏側、呑み込み珠玉たまつゆとする。なげきも今はむかし


 うまられて、同じ白馬はくまと呼ばれるのに。

 たがや蹄鉄ていてつを赤く染め、いえのため、こんこんと降り積もるおりたねく。春はいつか芽吹く。


 はいは埋もれて、日は満ちる。

 威を借りて、人にあらざる首塚くびづかは、ねこが番犬、鳴子なるこもならず。かみは白紙に、月にはむくろえない悲しみは消えない無遥むようひもづけられて。


 首輪の主人あるじはどこにもいない。

 墓前には、あなたのうたった夢がる。


 見るべきものはあなたの眼玉。

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