俺はダンジョンボス説得屋【未来日本はダンジョン世界。俺はモンスターと交渉できる世界で唯一の交渉人】
喰寝丸太
第1話 借金取り
「
痛え。
口の中は鉄錆の味。
肋骨の何本か折れてるのか?
床に転がっていて、声が出ない。
助けてと声を上げているのは高校生ぐらいの少女。
「俺達はこれでも真っ当な金貸しだ。悪く思うなよ。おい、連れて行け」
「へい兄貴」
借金の取り立てらしい。
みた感じあばら家だな。
テレビで見たスラムがこんな感じだった。
「
「
中学生ぐらいの男の子が借金取りにしがみ付く。
「このガキ、噛みつきやがった!」
借金取りが中学生ぐらいの子供を容赦なく殴る。
「
子供は大事にしないといかん。
少子化は大問題なんだぞ。
国が亡ぶんだ。
「頭が活火山のあんた、とりあえずTKGでも食って落ち着こうや」
何か言わないといけないと思って言ってみた。
「はぁ……?」
全員の目が点になる。
なんかやっちまったらしい。
「
「てぃ、えっと、そのなんとらとは何だ?」
兄貴と言われてた借金取りが俺に訊く。
「TKGしらないのかよ。人生損しているぜ。【TKG】ってのはこんな奴」
玉子掛けご飯が目の前に現れた。
どんぶりのご飯から湯気が出ている。
生卵も醤油も完璧だ。
ご丁寧に割り箸も付いている。
「兄貴! こいつ、魔法を使いやがった」
「確かに美味そうだな。食って俺達が満足したら、今回は勘弁してやる」
見たところ、全員が日本人。
TKGが嫌いな日本人なんているわけない。
「兄貴、魔法は消えるんです」
「馬鹿、知ってるよ。水魔法の水は飲み水にならない。だが、魔道具の水は飲める。魔法のイメージが違うんだよ。この呪文は聞いたことがない。それに普通の魔法なら、もう消えているはずだ。坊主、全員分出せよ」
えっとさっきはどうやったかな。
「たしかこんな感じ。【TKG】、出たね。【TKG】【TKG】【TKG】。お替わり自由だぜ。さあ召し上がれ」
全員で玉子掛けご飯を食う。
「頂きます」
「頂きます」
「頂くぜ」
「兄貴が食うなら、俺も。頂きます」
「おう、堪能してくれ。じゃ、頂きます」
「うめえ。兄貴、うめえ」
「ああ。これなら、借金は返せそうだ」
「
何も泣くことないのにな。
「腹減ってるなら、もっと出せるぞ」
「
「うん、役立たずの怠け者のクズ男なんて言ってごめん。私のスキルだって、下級。
みんなお替わりを何杯も食べて、場の雰囲気は和らいだ。
「じゃな、ごっそさん。次の取り立ては1週間後だ。それまでに今回の分と利息を合わせて用意しておけ」
借金取りが出て行った。
ええと、俺って誰?
そう思った瞬間。
頭の中に記憶がどっと流れ込んだ。
永遠かと思われたが、一瞬だったらしい。
俺は
ここは西暦2325年の未来日本らしい。
前世の俺が死んでから、300年近くも経っているのかよ。
それにしては、なんというか荒廃しているな。
痛たたた。
折れた肋骨が痛い。
魔法があるんだったな。
「【治れ】。へっ、痛みはましになったけど……。治らない? 何で?」
それに一気に魔力が空になった。
「
おぼろげに覚えているが、詳しくは解らない。
今世の俺は魔法に興味がなかったらしい。
「詳しく」
「魔法の威力と効率を決めるのは呪文に使う魔法言語の神秘性と、規則の複雑さと、表現の多様性。祝詞と真言使いが魔法使いの2大流派ね」
ああ、思い出した。
八百万・クランと、マントラ・クランだな。
どっちもやばい奴らだ。
規則の複雑さと、表現の多様性はすぐに解った。
「神秘性ってのは?」
「その魔法言語を知る人間が少なければ少ないほど良いの。重要なのは意味が解らないとだめ。だから、祝詞と真言を聞いても意味を理解しないとその魔法言語は使えない。造語だと、神様が認めないと失敗するみたい。神様がそう言ったわけじゃないけど、そう言われているの」
思い出して来た。
魔法言語は登録しないと使えない。
神様に登録してるかは謎だが、とにかく世界のシステムがそうなっている。
俺の魔法言語は日本語。
『TKG』は前世なら、日本語として使われてた。
略語で造語でおまけにアルファベットだが、それなりに浸透してたからな。
どうやら、この世界に英語を使うのは俺ひとりらしい。
今世の俺が青空学校で教わった歴史では、争いの少ない世界にするように、神様が国、宗教、人種で世界を分けた。
日本人も学校で英語を習っていたはずだが、なぜ廃れたのだろう?
謎だが、そうなっているのだから仕方ない。
『TKG』の魔法効率が良いのは誰も知らないからだ。
誰も知らない日本語なのに、日本語として認められている。
矛盾だが、転生自体イレギュラーだからな。
『TKG』の魔法で出した食べ物が消えないのは、召喚だからだと思う。
魔力で創造したのではなくて、召喚。
この違いだな。
プログラマーにとってシステムの把握は普通の人より早い。
でないとやっていけないからな。
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