(仮)凍てつく正義~少女の贖罪~
雛いちご
プロローグ
彼の名はニクス。
ようやく目的地である
辺りを見渡す。
目に映るのは、時そのものが
あの頃と何ひとつ変わらない光景。
ニクスの表情に、かすかな
懐かしさと痛みを胸に抱えながら、彼は奥に
――大聖堂内部。
左右には
一番奥の
「おっそいなぁ……ボクを待たせるなんて……」
その声には不機嫌さと、どこか甘えた響きが混じっている。
ニクスは急ぐこともなく、靴音をコツコツと響かせながら彼女のもとへと歩み寄る。
「おや、待たせてしまったようですね。……ウルナ」
穏やかな声でそう言うと、少女はぱっと立ち上がり、勢いよく抱きついてきた。
「もう、遅いよニクス!……三時間も待ったんだから!」
頬を膨らませながら、
「いや、それは……あなたが早く来すぎただけで――」
言いかけて、ニクスは
彼はそっとウルナの頭に手を置き、少しだけ距離を取る。
「コホン……次からは待たせないようにしますよ。それと、
「……二クスの鈍感」
聞き取れるかどうかの小さな声で呟くウルナ。
ニクスは微笑でそれを受け流し、彼女の頭を撫でた。
「改めて……おかえりなさい、ウルナ。また会えて嬉しいですよ」
ウルナの表情が
「ただいま、ニクス!」
「今回も使命を果たしてくれたようですね。お見事でした」
その言葉に、ウルナは誇らしげに胸を張る。
――ニクスとウルナ。
彼らはこの
その
中でもニクスは
今回の再会も、ウルナの任務報告が目的である。
「では
「うーん、つまんないな……せっかく会えたのに。どこか行こうよ」
「困りましたね……僕も少し忙しいんですよ」
「じゃあボクも手伝う!」
ニクスは小さく息を吐き、真剣な
「ではひとつだけ頼みましょう。ただし、油断は絶対にしないでくださいね」
「その言い方……まさか、
ウルナの瞳が好奇心に輝く。
ニクスは軽くため息をつき、静かに説明を続けた。
「場所は北部の山岳地帯。そこにA
「ふーん……A級なら、思いっきり力を使ってもいいってことだよね?」
ウルナの瞳は、波紋のように揺らめいている。
「えぇ。確実に仕留めてください」
ニクスの声は氷の刃のように冷たかった。
ウルナは勢いよく立ち上がり、大聖堂の扉へと駆けていく。
開かれた扉の前で、振り返りざまに手を振った。
「じゃあ、行ってきます!どこに連れてってくれるか、楽しみにしてるからね!」
ニクスは何も言わず、ただ穏やかな笑みで見送る。
静寂が戻った大聖堂で、彼は司教座の前に立ち、そっと目を閉じる。
脳裏に蘇る、遠い記憶の
初めて君たちと出会った日。
信じた王に裏切られた時。
そして悟った。
誰も傷つかぬ正義など……存在しない、と。
それでも、僕は願い、彼と共に
組織の名は、
それこそが、僕たちの正義の証。
これは、七聖天がまだ存在しなかった頃の物語だ。
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