毀れる私の傾国
湯沢綾汰
東京駅の囚人
近い将来のお話。私たち日本国民は様々な問題に直面することになった。
老年人口は右肩上がり、それとは対になり労働力人口は減少した。
また、世界中での環境問題。それは改善することなく地球を崩す。
その混乱の中、我が国日本は大きな戦争を起こしてしまったのだ。
かつて、大きな日の丸を掲げていた日本は、ある戦争で東日本と西日本で分裂し、お互いが国を作り上げてしまった。
東日本は
今はもう、この国には桜は咲かない。謙虚で勤勉な国民はもういない…。
_ここは東国、山梨県の限界集落。
そこに住んでいた男子高校生、
「じゃあね、元気でおりょしな。延ちゃん」
「はい。皆様、お世話になりました」
集落中の住人がお見送りをしてくれた。
この狭い環境下では、みんな家族のような存在だ。
それが今の僕にはとても暖かいことだった。
近くのバス停へ向かう。バスは一日三本くらいしか来ない。このような生活とも、もうおさらばだ。
周りの県と比較すると東京には近めな場所に位置するが、やはり人口はとても少ない。
この地域も過疎化が進んでしまった。
(数十年もすれば、この故郷もなくなってしまうのか…)
車窓から見える山々と静寂の曇り空を仰ぐと心の中でざわめきが起きる。
_バスを乗り継ぎ、やっと山梨駅に到着する。そこからリニア中央新幹線に乗り、東京駅を目指す。
やはりリニアは速い。予約するのには手間がかかったが、なんとか東京まで行けそうでよかった。
ここまでは。
そんな呑気なことを考えながら、これから始まる高校生活に胸を躍らせていたのだ。
『まもなく、終点 東京です。
中央線、山手線、京浜東北線、東北・高崎・常磐線、総武線、京葉線、東北・上越・北陸新幹線と地下鉄線は、お乗り換えです。
お降りのときは、足元にご注意ください。
今回もリニア中央新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました。』
お決まりの車内アナウンス。これを聞くだけで修学旅行気分が味わえる。
やっと東京駅だ。長時間の一人旅はやはり疲れるが、達成感も大きい。
綺麗な駅舎の中。そんな開放感を感じながら中央線の改札を探す。
が、そう簡単には見つからない。それに、初めてのスマホの操作もあまり慣れていない。
誰かに聞こうか…。
いや、聞きづらいのは事実だ。
東京は便利さ、綺麗さの反面、思いやりが薄いと婆ちゃんから聞いた。
ここの人々は来る前から冷たいと教え込まれていた。
ぎゅむ…。
急に背中に違和感が生じる。重さと圧迫感。
それに気付くのに数秒、間があった。
誰かにバックハグをされている。
「会いたかったよー!」
陽気な女性の声がする。この場合、おおよそ人違いだ。
声をかける。
「人違いです」
そんな声色に自分でも冷たいと感じた。が、その言葉は女性の手のひらによって静止される。
そういえば、背中にけして人間ではない感触があった。
それが気になり、後ろを向こうとする。
「後ろを見たら殺す」
ひどく冷淡な声だった。
そしてこの状況が自分にいかに不利かが理解できた。
後ろに突き刺さっているのはおそらく拳銃。
女性の目的はわからないが、自分は_
東京駅の
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