孕ませ上手な6番様!
@MUI_WAKA
第1話 風邪を引いたら異世界でした
「よりによって頭痛がある風邪を引くとか最悪だわ〜」
(家で1人寂しく横になりながら呟く)
両親は仕事で家にいないけど学校には休む連絡をしてあるから心配することは無い。
「早く風邪を治して授業受けないとな⋯」
(授業を受けても成績が悪いのに受けなかったらと思うとぞっとする)
しばらく時間が経って昼食を取ろうとベッドから起き上がるところだった。
急に謎な光が部屋に浮かび上がってきて冬弥は目を疑った。
さらに耳が痛くなるような脳に響く高い音が聞こえてきた。
「勘弁してくれよ!今頭が痛いんだよ!」
「ちょ待ってヤバいかも…」
謎の光は弱まるどころか強くなっていき、冬弥の目が眩む。
音も強くなり冬弥は気絶してしまった。
♢
(ん?なんか騒がしいな)
まぶたが重い。頭もまだズキズキする。
それでも冬弥は、うっすらと聞こえる騒がしさに誘われてゆっくりと目を開けた。
「……え?」
視界に飛び込んできたのは、見慣れた自分の部屋ではなかった。
木で組まれた天井、石造りの壁。まるでゲームの世界に出てきそうな――いや、どう考えても現実離れした光景だ。
「ど、どこだよここ……?」
上半身を起こそうとしたその時。
「おい! こっちだ! こいつ生きてるぞ!」
「よかった……転移術式の事故じゃなかったのね……!」
耳に飛び込んでくるのは、聞き慣れない声。
冬弥が振り向くと、奇妙な服を着た男女が2人、慌てて駆け寄ってきた。
(だれ!? てか服のセンスどうなってるんだ!?)
男は鎧を着ていて、女の子はローブ姿。完全に“異世界のキャラ”そのものだった。
「気がついた? よかった……。あなた、突然魔法陣から落ちてきたのよ」
「お、落ちて……きた……?」
冬弥はフリーズした。
(いやいやいや……待て、落ちてきた? 魔法陣?ってことは――まさか)
「ここ……異世界……?」
「異世界?ここは『ディアスフィア』という王国よ。あなたがどこから来たのかは分からないけど……魔法の痕跡が身体に残ってる。相当強い術式に巻き込まれてるわ」
「いや、巻き込まれたって……俺、ただ風邪で寝込んでただけなんだけど……」
(自分で言ってて意味が分からない、だが事実だ)
「とりあえず、立てる?」
女の子が手を差し出してくれる。
冬弥はその手を取ろうとしたが――
(あっ、なんかフラッ……)
体がふらつき、バランスを崩した。
「わっ……!」
そのまま倒れ込むように彼女の胸へダイブ。
「きゃっ……ちょ、ちょっと!? 近い! 近いからっ!」
バフッと柔らかい感触が顔に当たる。
(あ、あわわ……!?)
風邪で弱っているせいで反応が遅れ、なかなか体を起こせない。
完全に事故。100%事故だ。
「す、すみません!!!」
ようやく離れた冬弥が土下座レベルで謝る。
頬を真っ赤にしたローブの少女は、ぷいっと顔をそらした。
「……べ、別に。怪我がなかったならいいけど……っ!」
その様子を見て、鎧の男が腹を抱えて笑い出した。
「はっはっは! すげぇな兄ちゃん、早速やらかすとは!」
「やらかしてないです!!事故です!!」
必死に否定する冬弥の頭の痛みは……なぜか少しだけ和らいでいた。
――どうやら本当に、風邪をひいたら異世界でした。
♢
しばらく休ませてもらい、改めて自己紹介をすることになった。
木造の部屋でベッドに腰かけた冬弥の前に、二人が立つ。
まず鎧の男が、胸をドンと叩く。
「よし! じゃあ俺から名乗るぜ! 俺の名前は ジーク。ディアスフィア王国の第二騎士団に所属してる戦士だ!」
「ジークさん……」
「さんはいいって! ジークで十分だ!」
続いて、ローブの少女が少し緊張した様子で前に出る。
「わ、私は ルミア。王立魔術学術院で魔法の研究をしているわ。あなたを保護したのは偶然だけど……その……無事でよかった」
最後が小声で、耳まで赤くなっている。
(やっぱりちょっとツンデレ寄りだな……)
冬弥は軽く苦笑しながら、深く頭を下げた。
「氷鷹冬弥です。ひだかとうや。あの……日本って国から来ました」
「ニホン?」
ジークが眉を上げる。
「聞いたことのない国ね……」
ルミアも真剣に冬弥を見つめている。
冬弥は喉を鳴らし、言葉を続ける。
「多分……この世界とは違う“別の世界”から来たんだと思います」
「やっぱり……異世界転移……」
ルミアが息を呑む。
「すげぇな、本当にあるんだなそんなこと!」
ジークは驚きながらも楽しそうだ。
ルミアが一歩近づき、冬弥の顔をのぞき込む。
「冬弥……あなたの身体には、まだ“転移魔法”の残滓が残っているわ。調べないと、また倒れる可能性があるの」
「えっ、ごめん……迷惑かけて」
「べ、別に迷惑なんて……! その……研究材料が増えたってだけだから……!」
(いや絶対迷惑って思ってるだろこれ……)
ジークは豪快に笑い、冬弥の背中をバンッと叩く。
「まあ気にすんな! この世界に来ちまったんなら、これからどうするか考えりゃいいんだ!」
頼もしい二人に囲まれながら、冬弥は少し安心したように息を吐いた。
これから何が待っているのか、まだ何も分からない。
だがこの瞬間、冬弥の異世界生活は確かに幕を開けたのだった。
――――――――――
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