第3話 精霊湖と昼寝

 次の精霊湖は中庭にある泉にある転移門だ。移動していると、入学式にレイドといた茶髪の女の子クラリスがいた。




「俺様を誰だと思っているんだ。ああ!コーザ子爵家のマルコ様だぞ。謝るにしても謝り方っていうものがあるだろうが!」


「ご……ごめん……なさい」




 めっちゃ絡まれている。あれは、身体を要求しているんだろうなあ。この世界の治安は元俺ディーベルドを含めて非常に悪い。クラリスは震えてものをいえなくなっている。レイドはどこに行ってんだ。お前のヒロインのピンチだぞ。辺りにはいなさそうだ。……仕方がない。




 俺は何気なくその騒動に近づいていくと、言い放った。




「邪魔だ。退け」


「ああん?だれに……ディーベルド・ミッドフィルド様!」


「だれに?なんだって?邪魔だから解散しろ」




 そういわれてマルコは速攻で逃げ出した。俺に目を付けられるのが怖かったのだろう。助けたはずのクラリスの震えがより一層ひどくなっている。なんかいっておくか。




「ここでは、俺を含めてろくでもないやつらが多い。目を付けられないように気をつけろ。レイドの傍にいるようにしろ」


「……はい」




 クラリスは俺らしからぬ言葉を聞いたとばかりに目を丸くしている。こんなものでいいだろう。




 俺は中庭にある泉に向かった。




 地図と照らし合わせると、どうやらこの門らしい。中庭にはいくつもの転移門があってややこしい。泉には蓮が浮かんでいる。さあ、まずは攻略からだな。俺は転移門をくぐった。




 精霊湖は洞窟の中にあるダンジョンだ。洞窟を探索していって、ボスのいる精霊湖を見つけなければならない。バットを剣で、スライムを魔法でやっつけつつ、精霊湖を目指した。




入り組んでいるしマップを微妙に忘れているせいで、何度か行き止まりにあった。ダメだ、記憶に薄いダンジョンだから結構忘れている。そうやって、1時間程度行き来していると、道中で倒れている女性がいた。




 どうやらランダムイベントまで実装されているようだ。ここで女性を助けると、学園における人気度が上昇するイベントだ。




「バットに咬まれて、毒が身体に回ってしまったの。解毒薬をくれないかしら」


「次から自分で準備しておくことだな」




 俺はマイナスになっている人気度を上げるために解毒薬をそっとおいてやった。せいぜいディーベルドに助けられたといいふらしてくれ。




 それからしばらくして精霊湖にたどり着いた。精霊湖は洞窟の中にも拘わらず青く輝いている。しばらく待っていると、水が自ら動きだして、形を創り出す。半馬半魚のヒッポカムポスだ。上半身が馬で下半身が魚である。決して逆ではない。




 さあ、ボス戦をはじめよう。ヒッポカムポスが突進してくる。横ステップで回避。その胴体に切りつける。ヒッポカムポスが上陸してきたことで湖の水かさが上がり、くるぶしまで水に浸かりはじめている。時間を掛ければ溺れることになるだろう。




 ヒッポカムポスが身体を震わせると水でできたいくつもの竜巻が襲い掛かってくる。上等だ。俺は竜巻の間をかいくぐって接近する。この身体のスペックは相当高いな。何事かを唱え続けているヒッポカムポスの首に剣を突き刺した。そして剣を手放して離れる。剣を目標にして魔法を詠唱する。




「雷矢サンダーアロー」




 水を通じてびりっと来たが、ヒッポカムポスの方が大ダメージだ。やがて、形を保ちきれず、姿が水に戻る。




『人間がうらめしい。我の宝物であるアインツベルの指輪を奪いおった人間がうらめしい』




 ヒッポカムポスの影響がなくなり、水かさがもとに戻った。あー。靴がぐちゃぐちゃだよ。俺はヒッポカムポスに呼び掛ける。




「ヒッポカムポスよ。アインツベルの指輪を取り戻してきた。出てきて話をしてくれないか?」


『なんだとっ!……いいだろう』




 再び半馬半魚の身体が現れた。俺はポケットからアインツベルの指輪を取り出した。




「これだろ?」


『まさしくっ!それを我に返してくれ』


「うん、返すけど頼みごとがあるんだ」


『……頼み事だと?』




 急にヒッポカムポスが不機嫌になった。人間に騙されて指輪を奪われたことがある彼にとって非常に不快な言葉なのだろう。




「そうだ。精霊の涙をわけてくれ」


『……なんだ。そのようなことでいいのか。だが、指輪が先だ』


「あいよ」




 指輪をヒッポカムポスの蹄の上においてやる。水に溶けるように指輪は消えた。




『取り戻したぞ!私の宝物を!よくやった人間!』


「光栄です。つきましては……」




 俺は空瓶を差し出した。




『よいよい。精霊の涙であったな』




 蹄を空瓶の上に置くと、ちょろちょろと水が出てくる。ゲームだと。精霊の涙を手に入れた!って感じだったから、ヒッポカムポスが泣いたのかと思ったけど違うのか。


まあ、これで3分の2を手に入れた。




『これで約束を守ったぞ。だが、我は良い気分だ。一度だけ我の名前を呼ぶ権利を与えよう』


「それはありがたい」




 精霊から名前を呼ぶ権利を貰うというのは、召喚する権利をもらったってことだ。水場で困ったことがあったら強大な力となるだろう。




『ではな人間。我が活躍できる場で呼ぶのだぞ』


「はーい」




 再び水になって還っていった。精霊湖の傍に帰還門が出現した。一度帰還した。




 俺は中庭のベンチで靴に入った水を出して、靴を乾かしている。ポカポカとした陽気が中庭を包んでいる。一応2つのダンジョンを攻略したことだし、一眠りしてもいいか。


 ベンチで横になって眠った。


 


 頭が柔らかいものに包まれている。目を覚ますと、シャーリーが膝枕してくれていた。俺はシャーリーの柔らかな太ももを堪能しながら聞く。




「なんでシャーリーが?」


「なんではこちらのセリフです。こんなベッドじゃ眠れないと、特注のベッドを部屋で使っているディーベルド様がこんなベンチで寝ているなんて珍しいですね」




 あの変なベッドはディーベルドの特注品だったのか。




「今は最上の枕があるけどね」


「もう膝枕はやめていいですか?」


「もうちょっとだけ。それでシャーリーは何で中庭に?」


「禁書庫の件を相談してきたら、帰りに貴方を見かけただけです」




 俺は上体を起こした。




「そっか。ありがとう。なんかすごい寝られた気分だ」


「それはよかったですね」


「うん。禁書庫の件もありがとう」


「いえ。ディーベルド様の願いを叶えるのが私の仕事ですから。明日には司書と同伴で入れるはずです」


「分かった」




 確認したら、靴もまだ湿っているが、使えないほどではない。今日中に貪欲の砂漠に向かおう。




「それじゃあ、シャーリー変なのに絡まれないようにな」


「貴方がいいますか」


「いいますよっと」




 立ち上がる。今日中に貪欲の砂漠もクリアしてしまおう。この身体のステータスならできないことではないはずだ。


 シャーリーに別れをつげて、校庭へと向かう。校庭の隅にある転移門が貪欲の砂漠への転移門だ。野球部とかのボールとか転移されないのかな。


 俺は転移門をくぐった。

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