帰路 後編
「えっ?奏 今なんて言った?」
「だから舞田恵麻ですよね?知ってますよ。今日会いましたし」
「そ、そうか....けど奏でとあの子は接点ないよな?普通科と音楽科で学科も違うだろ?」
「たまたまですよ。
自分が毎日放課後に音楽室で歌を歌っているんです。 それを彼女がかなり前から知っていた。
興味を持った。
それで偶然、今日、お昼休みに近くを通ったから声を掛けてきた。
それだけです。」
「そうだったのか。それじゃ奏、あの子の印象はどうだった?」
「最初は『活発な女の子』ただそれだけでした。」
「なんだ?他にもありそうだなぁ」
「ありますよ。
放課後また急に現れて、長々と話を聞かされて、歌を聴かされました。歌、下手でしたよ」
「奏も聴いたのか、けど勘弁してくれ歌はどうにでもなる!それよりも大事なのは彼女の想いなーー」
片寄さんの言葉を遮り喋る
「ーー彼女の想いは聞きました。自分も驚きましたよ。ほとんど同じでしたから。昔の自分が言っていた事と。
彼女には人を魅了する何があると思います。片寄さんがスカウトを決めたように、自分も協力してあげたいと思いました。」
「協力してあげたい?奏、何かするのか?」
「彼女から歌を教えて欲しいと言われました。」
「教えてくれるのか!」
「明日まで待って欲しいと言いました。」
「どうしてだ?協力してあげたいんだろ」
「彼女と自分は同じ想いの持ち主です。だからです」
「よく言っている意味が分からないんだが?」
「要するに嫉妬です。
彼女はこれから歩き始め想い沢山叶える。その逆で自分は立ち止まったまま想いを叶えなれない。」
「そうか。俺は奏があの子に歌を教えてあげてほしいな。」
「そうですか。分かりました。」
「おいおい そんな軽く決めていいのか」
「別に明日まで待って欲しいと彼女に言っただけで断るなんて一言も言ってないです。ただ自分の気持ちの整理の時間です。それに夢の続きを託したいのも事実ですから。あとは内緒です。」
「なんだよ教えてくれないのか?」
「はい 内緒です」
そんな会話をしている内に自分の家に着く
片寄さんにお礼を伝え、車が走り去っていくのを見送る。
明日、彼女の反応が楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます