いつもの電話のやり取りです?

「おーい電話鳴ってるよー」


 スマートフォンの持ち主である山口坪秋に誇らしげに教えてあげるが、当の本人は自分が知らせる前には気づいていたようだ


 「残念でした!リッツ もう出てるよ。お前の知っている人だからちゃんとスピーカにもしてるよーだ」


 知らせ主である上田律人が少し煽る様に伝えると不満そうに両頬を膨らませている。そのやり取りを通話越しに聴いている人物が笑いながら話しかけてくる


 「ハハハ二人一緒だったか。 律人と坪秋はいつも仲が良いよな。お前らのやり取りを聞いてると面白くて笑ってしまうよ。」


 その言葉を聞きいた自分達は示し合わせたわけではないのに自ずと。


 「「おはようございます片寄さん。はい仲良しです」」


 一言一句違わず発した言葉に片寄さんはゲラゲラと笑っていたが、次第に笑い声も止み、落ち着いたとほぼ同時に喋り始める


 「まぁ二人も元気そうで良かったよ。電話掛けたのはその確認だけだよ。あっ!そうだそうだスッカリ忘れるところだったよ。さっき奏でにも電話を掛けたんだ。よろしくだってさぁ」


 だいたい、いつも片寄さんから電話が来るときは、元気でいるか?と奏の伝言がセットであり、そして自分も必ず決まった質問をする


 「そうですか。奏は―」


 「アーキ 俺そろそろご飯食べてくるから〜 また来るね〜」


 「おい!人が喋ってるときに被せてくるなリッツ!」


 律人は伝えたい事を一方的に伝えると自分の部屋を出ていった。それを聞いてた片寄さんはまた笑っており本当に愉快な人だと思ってしまう。


 「本当に律人は自由奔放だな。そんなことより今から朝食なのか?今からだと学校遅刻してしまうじゃないか、大丈夫なのか?」


 不思議そうに片寄さんが質問してきた為、今日は学校が振替休日である事を伝え、先ほど妨げられた何時もしている質問をする。


 「まぁ自分らの学校の事よりも、白瀬元気そうでしたか?」


 「あぁ直接会ってないからどうか分からないけど、声だけだと元気そうだったよ」


 「そうですか。良かったです」


 自分がいつも質問する事 それは白瀬が元気であるかどうかだ ただそれだけだ。それを聞いて何か思ったり、考えたり等はない。それどころか今まではこの一連のやり取りだけで通話は終わっているが、今日はなぜか違う質問までしてしまう。


 「あの時、白瀬が音ノ川に進学するって片寄さんから教えて貰った際は驚きました。なんであの高校なんですかね。理由分かりますか?」


 「そんなの奏にしか解らないだろ、それにどんなに秋坪達のプロデューサーを担当してたからって、人様の私生活まで把握しようなんて無神経じゃないからな。そうだ!しばらく俺は仕事で電話できなくなるから、これを機会に全員で会って話をするのもいいんじゃないか。それじゃそろそろ俺も仕事だから電話切るぞ」


  片寄さんはそう言い残し電話を切ってしまう。いい機会かもしれない。 


仲が悪くてバラバラになった訳じゃないから会ってみるか。


部屋に能天気な律人が戻ってきた。






 


 







 


 


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