余白日記
夏宵 澪 @凛
浮いていた日々
幼稚園のころ。
体が弱くて、
走ることも、遊ぶことも、
ただ友達と笑うことすら、
思うようにできなかった。
それでも、遊びたかった。
ただ、普通の子みたいに毎日を過ごしたかった。
白い病院の天井を見上げていると、
親が言った。
「この子は役に立たない」
その言葉は、
静かに胸の奥を刺した。
泣くこともできず、
私はただ、勉強を始めた。
小さな手で、できる限りのことを。
やがて、親は褒めてくれた。
「この子は誇りだ」と、周りに自慢までしてくれた。
その瞬間だけは、嬉しかった。
やっと、認めてもらえた気がしたから。
体が少し強くなり、幼稚園に戻れた。
幼馴染と毎日遊べて、楽しかった。
でもどこかで、
自分だけ浮いている気もしていた。
努力すれば大抵のことはできる。
でもそのせいで、会話のテンポも感覚も
少しずつ周りとずれていた。
後になって知った。
周りの子どもの親が、
自分の子に言っていたことを。
「あの子と仲良くしたら得だよ」
“得”。
その一言は、静かに胸を重くした。
子どもは損得で友達を選ぶわけじゃない。
それでも、どうしようもなく悲しかった。
だからまた勉強した。
誰かがそばにいてくれるなら、
たとえ偽りでも、
それでいいと思った。
今思う。
このころから、私は自分で自分を縛る“鎖”をつけていたのだ、と。
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