友達ティミーは害獣 【ロッキー恐竜狩猟組合】
園山 ルベン
侵略的外来種「人類」
「組合長、コロニー役所から電話です」
また?
この前の補助金の件についてかしら。
数日前、
お役所は恐竜の破壊力を分かっていない。
文句を言うなら自分たちで直せ!
そもそもこの仕事を振ったのはそっちでしょ!
それでもコロニーを囲む柵の強度は、中の住人の生活の安全に関わる設備だ。悪いけどここは譲れない。
頭の中でどう言い返してやろうか考えながら、
「
「
電話を切ってまずトラックの鍵を取った。
鉄柵の修理なんかもう後回しだ。住人全員の生活に関わる。
人間が自分よりも弱い生き物だと学習した恐竜は、平気で人間の生活圏に入り込む。
縄張り争いになれば、追い出されるのは人間だ。
事務仕事はアニングさんにしてもらうことにして、被害のあった現場にはわたしが向かうことにした。いつも領収書を捌いてくれているアニングさんに仕事を押し付けるのは申し訳ないけど、この案件が終わったらわたしも組合費の集金を手伝うということで勘弁してもらおう。
「この事件って、そんなにヤバいんすか? なんだか急いでますけど」
ピックアップトラックで現場に向かう途中、
事務所から出かけようと思ったらちょうど彼が依頼受付のところにいたから、特別報酬を出すと言ってさらってきた。
「人慣れした恐竜は危険よ。サハラ支部にいたころ、人に慣れた恐竜に相棒が喰われたのよ」
「えっ? アイリーンさんの相棒って、あの人ですか?」
鈴木くんが意外そうにわたしの顔を見る。
「ええ、
今回の事案は、
トロオドンは鳥と同じくらい頭が回る。
わたしたちが元いた人新世時代にも、生ごみを隠す人間相手に知恵が回るカラスがいた。それと同じで、人間が食料を隠せば、あの子たちだって頭を使って奪いに来る。
「じゃあ駆除するってことっすか?」
「まずは森に帰ってもらう。それでも戻ってくるようなら、残念だけど駆除ね」
トラックを走らせていると、事故現場に立っている役所職員の姿が見えた。おそらくハレットさんだろう。
「え? 危険な恐竜なら、最初から駆除したほうが……」
「そうはいっても、恐竜たちからすれば、わたしたちは時代を超えてきた侵略的外来種。自然の形を変えてしまう、生態系の問題児よ。追い出された側にも言い分はあるわ」
「外来種って……」
人類も生態系の一部だからこそ、自然との付き合い方を知らないといけない。
「あなただったら、7000万年後の得体の知れない生き物が近所に現れたら、なんて言うかしら。悪いけど、わたしなら力尽くで追い出すわ」
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