捜索

「おい、しみじみしてる場合じゃねえぞ」

 キタガミさんにそう言われ、僕ははっと我に返った。

「死体は俺がなんとかする。お前はノリを探しに行け。お前の話のとおりだとすると、ノリは返り血をつけたまま歩いている可能性がある。もしかしたら被害者とやり合って怪我もしてるかもしれねえ。凶器も見た感じここにはないから、ノリが持ってる可能性は大いにある」

 なんとかってどうするんですか、と聞く間も与えられなかった。

「つまり、誰かに見つかっちゃあヤバイってことだ。こっちは気にすんな。お前ならノリの背格好をすぐに見分けられるだろう。急げ。どっか遠くへ行く前に」

 有無を言わせぬ調子に、僕は頷くほかなかった。追い立てられる形で、僕は家を出る。

 外を眺めてみたが、やはり、ノリらしき人の姿はなかった。どこへ行ってしまったのだろう。とにかく、覚えのあるところを虱潰しにあたるほかなさそうだ。

 球場、近くのゲームショップ、ゲームセンター、バッティングセンター、スーパー、本屋。僕がよく行くところはすべて回ったが、日がとっぷりと暮れても結局ノリを見つけ出すことはできなかった。当たり前といえば当たり前かもしれない。僕がよく行く場所は、ノリにとってもよく行く場所のはずだ。人目から逃れようとしているときに、馴染みの場所には行かないだろう。こうして僕が捜しに来ることも、ノリには分かっていただろうから。

 警察に捜索願を出せば一発で見つかるのかもしれないが、それができないのが歯痒い。

 あたりが暗くなっても諦めきれず、次はどこを捜しに行こうかと考えていると、電話が鳴った。ノリかと思って期待したが、キタガミさんからだった。

「はい、もしもし」

「おい、タツ。あんまり夜中にうろうろすんな、目立つから。ノリは見つかったのか」

「いえ、まだ……」

「……だろうな。見つかったら、連絡するだろうしな。今日のところは仕方ねえ。帰って来い」

「……分かりました。すぐ帰ります」

 仕方ない。ノリの捜索は、明日に持ち越しだ。

 僕は踵を返し、家路を急いだ。

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