魔法学院編 七魔戦
第10話 ウラノス魔法学院
「ここが王都か。」
門の前で降り立ち、中に入るための列に並ぶ。
「そもそも王都は首都なのに、門番はあの数でいいんですかね。全然処理できてませんよね。」
確かに。まあ今日たまたま人数が多いだけかもしれないが。
「お、そろそろかな。」
意外と早く順番が回ってきた。兵士の手際がいいのだろう。
「次のもの。」
順番が来たので、前に出る。
「身分証を見せよ。」
Cランク冒険者の証明書の板を見せる。
「通ってよし。」
そんなに甘くていいの?まあ、一人一人念入りに確認していたら終わらないのだろう。
「あ、すみません、ウラヌス魔法学院ってどこにあるんですか?」
「入ってまっすぐ行って突き当りを右だ。早くいけ。」
忙しそうにしながらもちゃんと教えてくれた。
「ありがとうございます。」
中に入って歩いていく。
「紗奈さん、結構楽しみだね。」
「そうですね。私たちの知らない魔法が知れると思うとかなり楽しいです。」
ウラヌス魔法学院についた。受付に入っていく。
「すみません、魔法学院の試験を受けたいのですが…」
「ああ、試験希望者ですか。一般受験の方はあちらへ、貴族受験の方はあちらに行ってください。」
「えっと、推薦状があるんですけど…」
推薦状を出して見せる。
「えーっと、推薦人はノア=セアドールさん、え?の、ノア=セアドールぅ⁉す、すみません、少々お待ちください。」
めちゃくちゃ驚いている。何者なんだあの爺さん。
「なあ、紗奈さん。もしかしてあの人すごい人かな?」
「そうなんでしょうね。かなり強そうでしたし。」
「なんであんな支部にいたんだろう。」
「さあ?なんででしょうね。」
受付の人が帰ってきた。
「はい、確認が取れました。推薦人はノア=セアドールさんということですが、一応一般枠での受験となります。こちらの紙に氏名と属性を書いてください。」
えーっと、テト=スプライト、風属性っと。隣を見ると紗奈もルナ=フレアナイト、火属性と書いている。
「書けました。」
「それでは、あちらへお進みください。」
「はーい、わかりました。」
一般枠のほうへ進もうとすると、一瞬貴族枠へと進む人の背中が見えた。
「あれは…」
「どうしたんですか?」
「ほら、あの人。」
「あの人は…」
僕らは
僕らに匹敵するほどの魔力を持っているが、重要なのはそこではない。彼は
不意に、その人が振り向いた。そして、目が合う。
「あれは、どう見ても、」
「まあいいですよ。入学してから聞いてみましょう。たぶんあの人は受かりますしね。」
「確かに。僕らはまず自分の試験を受けないとね。」
指定された道を進んでいく。すると、試験官らしきおじいさんがいた。これまた強そうだ。
「まずは、魔法の威力と精度、発動時間の試験じゃ。そこの的に魔法を当ててみよ。記録は総合で測られるため、強い魔法を長い時間をかけて詠唱すれば高い点数が取れるとは限らんぞ。ちなみに的を壊せば高い点数が入るぞ。」
ほかの受験生たちが順番に的に当てていく。なるほど、これはいい試験だ。時間の制限がなく、長い詠唱をしたもの勝ちというわけではなく、逆に制限があるわけでもないため、長い詠唱をしてでも的を壊すことができるならば採算が取れる可能性もある。その場に合わせた判断を問われる試験だ。まずは、この試験の意図を理解できたかどうかで受験生はふるいにかけられるだろう。まぐれで受かる可能性はない。
僕の前の受験生の番になった。
「水よ、一陣の流れとなりて的を穿て。
いい魔法だ。詠唱は長すぎず、それでいて魔法の精度はかなり高く、威力も平均以上ある。よく試験の意図を理解している。
「次の者。」
「じゃあやってくる。」
「誠くん、頑張ってください。」
前に歩いていき、的の前に立ち、魔法陣を描く。魔法陣は雷系のものではない。今の時点であまり目立つべきではないだろう。
そして、最近開発した複合魔法の準備をする。魔法陣に別の魔法陣を組み込む。
「嵐装展開・複合攻撃術式・
嵐装展開は僕が使える風系統の最高位魔術。そのなかの魔術を組み合わせたものが
ゾルッザリザリザリザリッ
的が削られていく。質量をもった超速度の空気塊が次々と攻撃の対象をすり潰す。
的は、跡形も残らない。ただ、削られ吹き飛ばされた破片が周辺に散らばるだけだ。
「これでいいですか?」
「ふむ。いいじゃろう。では、次の者。」
「紗奈さん、頑張って。」
「わかっています、誠くん。」
紗奈さんが魔法陣を描く。あれは…何の魔法陣だ?
「
回転が加えられ超音速で発射された炎が的
紗奈がこっちに駆け寄ってきた。
「いい魔法の使い方だったね。」
「ええ、魔力の使用量を最低限に抑えました。」
そのまま二人で奥へと進む。訓練場のようなところに出た。中には、真面目そうな男性教師が立っている。
「ここでは、実
ここでもしばらくすると順番がまわってきた。
「では、次の方。」
前に出ていく。
「お前はかなりの実力があるな。それでは、始めよう。先手は譲るぞ。」
「はい、わかりました。」
魔法陣を描き、まずは嵐装展開をする。
「嵐装展開・防御術式・
まずは防御を固める。落ち着いて、体に二つ目の魔法陣を描いていく。
「させん!
男性教師が魔法を放つ。しかし、僕の嵐装展開・防御術式は簡単には破れない。そもそもこれは僕の防御術式の中でも比較的強い魔法だ。
ゾルッゾルゾルゾルッ
背筋の凍るような音が響き、
「どうしますか、先生。生半可な攻撃では僕の術式を強くするだけですし、土は削った後取り込みやすいので相性が悪いですよ?」
「ハハッ普通は風と土じゃ風が勝つんだがな。仕方ない。俺も撃てる最大の魔術を撃つよ。」
とりあえず受けてみようと思う。受けた後勝てるように、後ろ手で魔法陣を描く。
「
ガリッガリガリッ
先ほどとは全然違う。地面から生えてきた牙は、一瞬嵐装の防御術式に耐え、危うく僕に突き刺さるところだった。
「あっぶねー。強いですね、先生。僕のコレをここまで超えられたのは初めてですよ。」
だが、守り切った。そして、今先生は無防備。
「嵐装展開・攻撃術式・
先生が吹き飛ぶ。
「僕の勝ちでいいですか?」
「ああ、どう考えてもお前の勝ちだ。俺の攻撃は届かなかったしな。」
先生は、ほぼ傷を負っていなかった。咄嗟に土の鎧を出して体を守ったのだろう。
「よし、じゃあ次だ。次は…うへえ、お前の連れかよ。絶対バケモンじゃねえか。」
「大丈夫です。瞬発的に出せる火力は僕以上ですよ、先生。」
「安心できねえよ。というか、そういえばお前無詠唱だったな。」
「そうなんですよ。僕とそこにいるルナで共同開発した”魔法陣”です。自分の代わりに魔法演算させてるんですよ。」
「お前らホントに14歳かよ…戦いたくねえな。」
文句を言いながら先生は訓練場の真ん中に立つ。
「それでは行きますよ?」
「ああ、こい。」
「
深紅の炎によって作られた一発一発でさえ強い弾が700発毎秒で打ち出され、あっけなく勝敗はついた。
「やばすぎだろ。というか嬢ちゃん手加減とかないのかよ。痛たたた…」
「手加減するというのも失礼に当たるでしょう?」
「まあ、そうなんだけどな…それじゃ、帰れ。試験は終わりだ。」
「「ありがとうございました。」」
「ああ、気を付けて帰れよ。」
▨▨▨▨▨
ウラヌス魔法学院先生陣営
試験を終えて魔法学院の教師たちは困り果てていた。
「今年は粒ぞろいですねぇ。」
「そうじゃな。特に五人、やばいのがいる。」
「学院長、それで、今年の特待生はその五人ということでよろしいんですか?」
「そうだな。例年なら特待生だったはずの者も多くいるが、今年は上五人があまりにも抜けすぎている。」
試験を見ていなかったものが言う。
「学院長、その五人とは?」
「ルナ=フレアナイト、レクサ=ビショップ、テト=スプライト、シド=ルイストラ、サリー=シルフォードの五人じゃよ。ルナは平民で火属性、クロエは王女で水属性、テトは平民で風属性、シドは侯爵家次男で
「ぞ、属性不明?どういうことだ。」
「そのままの意味じゃよ。火、土、水、風、光、闇、どれでもない、謎の属性によって的が壊された。」
「そんな者がいるのか。それに、教師に
「ああ、事実だ。本当に今年は素晴らしいが大変だな。
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