第5話 旅立ち Vs.変異種の大鬼②

下降超気流ダウンバーストによって吹き飛ばされた大鬼オーガが傷を再生させながら立ち上がる。


「月夜さん、ごめんね、僕のせいで傷負わせちゃって。ポーション飲んでて。」

「いえ、別に四条くんのせいではないので気に病まないでください。」

「ありがとね。気使ってくれて。」


先ほどとは別の、さらに大きな魔法陣を僕の周りに五個描く。こんな複雑な魔法陣を同時に複数描くなど、極度の集中ゾーン状態でなければできないことだ。四条はたまにこのようなゾーン状態になることがあり、ひどく自分の周りが遅く感じるのだ。


雷撃砲サンダーボルト五重ペンタス


魔法が発動し、体から魔力が減っているのがわかる。だが、今の俺の魔力は一年前の魔力量をはるかに超えている。再生が手ごわいなら、再生される前に殺しつくすか魔力切れを起こさせるだけだ。

雷撃砲サンダーボルトは文字通り紫電の速さだ。大鬼オーガといえども簡単に避けることはできず、そのまま着弾し大鬼オーガを焼き尽くす。


「グルアアアアアアア」


雄たけびをあげながら傷を再生させ、大剣を振るってくる。


「そんな甘い攻撃が今の僕に通るとでも?超電磁弾レールガン六重ヘキサ


魔法陣を描き、同時に螺旋の電磁場が作られて加速された灰銀ミスリルが音速を超えて大鬼オーガへと迫る。

着弾。すべてが大鬼オーガの内臓をグチャグチャにしながら貫通し、大鬼オーガの背中から血があふれて、即座に傷口が泡立ち、ふさがっていくが___


「きみ、魔力なくなってきたよね?大鬼オーガさん?このままチキンレースだ。どっちが先に魔力がなくなるかな?」


大鬼オーガは距離があるのはまずいとばかりに接近してきた。それを緋璃刀で冷静に対処する。身体強化を体に施し、応戦する。


「いいの?大鬼オーガくん。武器壊れちゃうよ?」


緋璃刀は魔剣だ。触れたものは。そして、それは温度の落差がすさまじいということだ。

金属疲労。急激な温度の変化によって金属に疲労がたまり、脆くなっていく。


「ガアアアアアアア」

「やっと本気を出す気になったのかな、オーガ君。」


大鬼オーガがその大剣に魔力を通す。魔力が通ったことで大剣が一気に硬く、しなやかになる。そもそもこの大剣はただの鉄製だったが、大鬼オーガの魔力下に長い時間さらされることで半分魔鉄とかしているため、大鬼オーガの魔力を通してこそ本領を発揮するのだ。

さすがにこの状態の大鬼オーガとチキンレースをするわけにはいかない。


「月夜さん!」

「はい。」


僕が戦っている間に月夜さんが作り上げた大規模な魔法。僕が戦闘していた十分間すべてを集中に費やさなければならないため、月夜さんは目を瞑っておりまったくの無防備だ。

膨大な量の魔力がその魔法陣に注がれているのがわかる。その魔力量をみて大鬼オーガが月夜さんへ攻撃を加えようとした。

大鬼オーガの攻撃に緋璃刀を滑り込ませながら叫ぶ。


「させないよ。月夜さん、やっちゃって。」


そもそも戦闘中に目を瞑るということがすでにおかしい。それを実行しているのは、僕を信頼してくれているからだろう。その信頼を裏切るわけにはいかない。一度手に身体強化を集中させ、大鬼オーガと距離をとる。


蒼炎超新星爆発ブルーエクスプロージョン


超新星爆発の中心部を大鬼オーガに合わせる。地球での知識なら、超新星爆発の中心部は摂氏十億度を超える。不完全で小さいとはいえ、その分熱を圧縮しているため、中心部は摂氏五億度は超えている。

蒼い光が僕たちの目を焼く。


ズガアアアン


光に一拍遅れて聞こえた爆発音。そして、その中には、


大鬼オーガが立っていた。体中が焼けただれようともその眼には不屈の精神が宿り、再生が始まっている。


「すごいね、大鬼オーガくん。まさか今の攻撃に耐えるとは思っていなかったよ。」


だがな、大鬼オーガくん。僕たちは去年きみに大敗した。それのリベンジのため一年も費やしたんだ。策はこれだけで終わるはずないでしょ?僕たちは良くも悪くも君を過小評価していない。


「月夜さん、プランB」

「わかっています」


今度は月夜さんが前へでて大鬼オーガと戦う。

月夜さんが黒銀刀こくぎんとうを抜いて大剣と応戦する。僕の攻めの戦い方とは違い、月夜さんは精緻な守りの剣だ。

僕が刀をあて続けた大剣の根元に月夜さんも黒銀刀こくぎんとうを当てる。これで三十七回目だ。僕の計算通りなら。あと十三回であの大剣は折れる。その間に僕は先ほどの月夜さんよりもさらに大きな魔法陣を描く。原子核から電子を引きはがし、電離気体状態プラズマにする。そして、目を瞑ってその魔法陣の魔法回路に魔力を流し込んでいく。この流し方を間違えると今までの時間はすべて無駄になる。


「グルルルル」


大鬼オーガの声が聞こえる。それでも僕は魔力を流し込む。


「よし。」


魔法回路は起動した。あとは残りの魔力をすべて流し込むだけで魔法が成立する。

大鬼オーガが自分のほうに迫ってくるのが見えた。そして月夜さんはそれを止めるでもなく、その大剣の根元に横から刀をぶつける。


一閃。ついに大鬼オーガの大剣は耐えられずに切断された。


「ガアアアアアアア?」


大鬼オーガが戸惑う。その間に一気に魔力を魔法陣に流し込んだ。


「月夜さん!」


月夜さんが大鬼オーガから大きく飛び退る。


荷電粒子砲プラズマカノン


原子核から引きはがされた膨大なエネルギーをもつ電子が収束する。気体でも液体でも個体でもない「第四の状態」。それが、認識を超える速さで放たれる。エネルギーの解放。


音はない。深い、広大な森に一筋の莫大な閃光が駆け抜ける。





















「月夜さん。倒したん、だよ、ね?」


跡形もない。目の前には地面が溶けてガラス化した何もない線がどこまでも途切れることなく走っている。


「はい、あの変異種イレギュラー大鬼オーガは、再生する間もなく蒸発して死にましたね。」


一拍。僕たちは一瞬見つめあい、


崩れ落ちた。


「あー怖かった。何なのあの化け物。どんな攻撃加えても再生しやがるし。魔力すっからかんとかいつぶりだよ。」

「ほんとになんなんですか、あれ。私の本気の魔法でも再生するって意味わかんないんですけど。」

「でも、まあ、倒せてよかったね。月夜さんのおかげだよ。」

「ええ、倒せてよかったです。けど、ほとんどが倒したようなものですよ。」

「え?いま名前でよん「二年間も一緒に居ましたし、もうこれで一区切りなのですから、そろそろ名前で呼んでもいいかなとおもっただけです。いやならやめます。」」


月夜さんが名前で呼んでくれたと思ったら、少し顔を赤くしてまくしたてられた。そもそも月夜さんは正統派美人なのでかなり絵になる。二年間一緒にすごし、戦い、ご飯まで作ってもらっていた僕としては月夜さんのことが嫌いということなどないし、むしろ淡い恋心を抱いているような気もする。顔を赤くしたのは脈ありか?と一瞬思ったがそんな甘い考えは捨てた。単に男子の名前呼びに耐性がないだけだろう。


「ああいや、全然いやなんてことはないし、むしろが名前で呼んでもいいというなら僕もよぶけど…」

「じゃ、じゃあそういうことで名前で呼ぶことにしましょう誠くん。(べつに誠くんなら嫌だなんてことはないですし…)」


最後のほうが小声になっていて聞こえなかったが、顔を赤らめて何か言う紗奈さんは結構かわいかった。


「ん?最後のほうがよく聞こえなかったけれど…。それでは、改めて今後ともよろしく、紗奈さん。」

「は、はいい。今後ともよろしくお願いいたします、誠くん。」


▨▨▨▨▨


「いただきます。お、なんか今回のは豪華だね。」

「どうぞ召し上がれ。ええ、せっかくアイツを倒したのでお祝いもかねて。」

「おいしいよ。」

「ありがとうございます。けど毎回聞いてますね、それ。」

「いやだって、毎回味変えてきて飽きさせないし、普通にめちゃくちゃおいしいし。」


さっきの戦闘の後から少し紗奈さんとの距離が近くなっている気がするので、少しテンションが高いのだ。



▨▨▨▨▨


「ふーむ。」


「どうしたんですか、四条くん?」


「いやー魔法を科学的に説明できないかなって。」


「う〜んとね?取り敢えず魔力とは何かくらいは説明できるんだけど…」


「え?すごい。それで、魔力とはなんなんですか?」


「ズバリ!魔力とは人間の余剰生命力による純粋なエネルギー体であり、魔法使いとはその生命力の変換効率が一定以上高い人のことを言う。」


「へ〜そうなんですか?」


「たとえばさ、魔力を使い切ると体がだるーくなったり、意識失ったりするじゃん?たぶん、それも魔力っていうのは生命力を変換したものだからだと思うんだよね。」


「ええ、確かにそれで説明できますね。ということは、魔力を使ってお腹が空くのも魔力に変換されているからってことですよね?」


「う、うんそうだけど…」


「つまり、たくさん食べても太らない!」


「そうだけど…何か口調がおかしくなっているよ?」


「仕方ないじゃないですか。いいですか?四条くん。それは女の子の永遠の夢なんです。」


「あ、そ、そうなんだ…。」


「ええ、これはいいことを知れました。今回のことは転生する時と同じくらい感謝しますよ。」


そんなものなのかな?……




ここではすべては明かしませんが、魔力の仕組みはこんな感じです。

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