第4話 願い
「……これは、見事な青空ですね……」
「……ええ、本当に」
それから、数日経て。
家の外にて、空を眺めつつ爽やかな微笑で呟く
「……それでは、私はこれで。名残惜しい気持ちは山々ですが、再び雨を願ってしまう前に去ってしまわなければなりませんので。これまで、本当にありがとうございました、
「……ええ、それが宜しいでしょう。ご達者で、翠明さま」
その後、ほどなく恭しく頭を下げ謝意を告げる翠明さま。そして、再び柔らかな微笑を浮かべゆっくりと去っていきます。そんな彼の遠ざかる背を、ひとまずほっと安堵を覚えつつ見送る私で。
「……無事、到着なさったでしょうか」
それから、半日ほど経た夕暮れ時。
格子越しに広がる茜色の空を眺めながら、そっと呟きを零します。久方ぶりに一人となった、不思議なほどに広く感じるこの小さな家の中で。……今、どこにいるのでしょう? 無事、目的の場所へ到着していると良いのですが。
ですが、少なくともこの村は既に出ているのは間違いないでしょう。そのことに、改めてほっと安堵を覚えます。これでもう、仮に雨が降っても彼が危険に巻き込まれることはありませんから。なので、これでもう――
「……うっ、ゔっ……」
ふと、嗚咽が零れ出る。すると、
――トントン。
「…………へっ?」
すると、ふと鼓膜を揺らす音。そして、それは何処か覚えのある音。衝撃に目を見開き、稲妻の如く扉へと駆けゆっくりと扉を開きます。すると――
「……大変申し訳ありません、澄玲さま。もし宜しければ、一晩泊めていただけないでしょうか?」
そう、あの日と同じ柔らかな微笑で尋ねる見目麗しき男性の姿があって。
「…………あの、どうして……」
そう、覚束ない口調で尋ねる私。……いったい、どうしてここに? だって、雨は先ほど降ったばかり……なのに、今彼がここにいるのは甚だ不可解で――
「……やはり、そういうことでしたか」
「……へっ?」
そんな困惑の
「……心から強く願うことで、実際に雨を降らせる
「……へっ? あ、はい……なので、きっとこの雨も私の願いにより……」
「……ですが、だとしたら今の状況に些か説明がつかないかと。何故なら、本来なら私は今頃とうにこの村を後にしているはずですし、澄玲さまご自身もそのようにお考えだったかと思われます。ならば、私が戻って来ることを願ってくださっていたとしても、もはや雨が降ることを願う理由はないものかと」
「……確かに、そうですね……」
すると、柔和に微笑みそう告げる翠明さま。……確かに、それはそうかも。仮に雨が降っても、もう戻って来ることはない――確かに、私はそのように考えていたのですから。……だとしたら、偶然? ……いえ、でもこの降り方は私が願った際のものとほぼ同様ですし……いえ、それ以前にどうして翠明さまはお戻りに――
「……日照りで困っていた方々を救うべく、雨を願うことで本当に……もちろん、それか貴女の本心であることは疑う余地もありません。貴女は、本当に優しく暖かなお心の持ち主なので」
「……へっ? あっ、いえそんなことは……」
「……ですが、そもそもそれは誰の望みだったのでしょう? その時々の状況にて、最も雨を欲していたのはどなただったのでしょう」
「……誰の、望み……っ!! ……まさか」
すると、柔和に微笑みそう口にする翠明さま。……誰の、望み……それは、もはや考えるまでもなく、あまりにも明確で――
「……ええ、澄玲さま。恐らくですが……貴女のお
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