第2話 人生の汚点を

俺達は名木山めぐみの挨拶を受けてから教室に向かう。

それから俺は幸春と別れうろ覚えの席に腰かける。

名木山めぐみは職員室に用事だったらしい。

俺達に柔和な顔で挨拶をして直ぐに去って行った。


「...」


名木山めぐみと同クラスっていうのもな...。

逃げ場が無い。

俺は盛大に溜息を吐きながら廊下を見る。

それから外を見ていると幸春がやって来て「やっぱり可愛いよな」と言った。

俺は「なにがだ?」と聞く。

すると「すっとぼけんなよ」と苦笑い。


「彼女だよ。名木山さん」

「...確かにな」

「なんだよお前。あれ程「いい女だよな」って言ってた癖に」

「減退したんだよ」

「何がだよ。...一日でそういうの枯れるもんか?」

「そうだな。俺の場合はな」


幸春は「そんなもんかねー」と悩みながら腕を組む。

俺は(事実だがな)と考える。

あくまで俺はもう名木山にはなんの想いも無い。

何故なら俺は浮気された。

棄てられたしな。


「なら別の女を探したらどうなんだ」

「良いかもな。でも暫くは良いかもしれない」

「意味が分からんわ」

「そうか?」


そうして話しているとドアが開いた。

それから「お兄ちゃん。先輩」と声がした。

幸春が「なんだよお前...もう直ぐホームルームだぞ」と言う。

だがそれを無視して俺に向いてくるメル。


「先輩。放課後空いてます?」

「なんだってんだよお前。放課後は俺と遊ぶ予定だぞ」

「うるさいよ。お兄ちゃん」

「あくまで理不尽だろ」

「良いから黙って」


それから思いっきり冷めた目をするメル。

俺は苦笑いを浮かべながらその姿を見ているとメルが「先輩。どうですか?」と笑みを浮かべる。

その姿を見てから「分かった。じゃあ放課後にな」と苦笑い。

幸春がやれやれな感じをしていた。


「先輩。ありがとうございます」

「いや。たまには幸春意外と遊びたいしな」

「なんだそりゃお前」


そして俺達は笑い合う。

それから俺は手のひらを見た。

そうしてからぐっと握りしめた。

大丈夫。

俺は...大丈夫。

PTSDみたいになっているけど。



そしてその日は何事もなく放課後を迎えた。

すると放課後になって立ち上がろうとした俺の前に「あの」と女子が来た。

それは...名木山めぐみだった。

なんだコイツ。


「名木山。何か用か」

「...何もないです...が。その...放課後空いてますか?」

「すまない。放課後は用事で埋まった」

「そ、そうですか」


ぶっきらぼうに答える。

それから引き下がる名木山めぐみ。

俺はその姿を見てから鞄を持つ。

そして幸春に「じゃあな」と挨拶をした。

幸春は「ああ」と笑みを浮かべて俺を見送ってくれた。



それから俺は校門に向かう。

そして校門前にメルが立っていた。

俺を待っていた様に見えた。

その姿に「お待たせ」と言いながらメルを見る。

メルは「いえ」とはにかんだ。


「先輩を待ってました」

「だろうな。お待たせしたな」

「まあでも少しだけしか待ってないですけど」

「本当か?なら良いけど」

「はい。大丈夫です」


メルはニコニコしながら俺を見る。

それから俺はそんなメルを見ながら「じゃあ行こうか」と言う。

するとメルは「はい」と嬉しそうに返事をした。

そしてメルは付いて来る。


「無難ですけどゲームセンターに付き合ってくれますか」

「え?ゲームセンターか?なんで?」

「プリクラの写真を追加したいんです」

「プリクラか」

「はい。先輩と撮った分を追加したくて」

「ああ...は?なんで?」

「大切な先輩ですから。ね?」


メルがよく分からない事を言っている。

そんなメルはウインクしながら俺を見ていた。

俺はそんな姿に(まさかな)と思いながらもそのまま頷いてから了承し返事をした。



13年ぶりのゲームセンター。

そんな撮ったプリクラは馬鹿さがにじみ出ている感じのものになった。

俺は苦笑しながらメルと一緒に撮ったプリクラを見る。

そして俺はお手洗い?に行ったメルを待つ様に椅子に腰かけていた。


「...」


不思議なものだ。

何故俺はタイムリープしてしまったのだろうか。

この世界に。

13年前の...高校時代に。

分からない。


「とは言って考えてもな」


そんな事をポツリと考えながら名木山めぐみを思い出す。

名木山めぐみとの婚約生活。

5年に渡ったのになぁ。

何故他人のマツタケを求めたのか。


「はぁ...」


盛大に溜息を吐く。

それから俺は天井を見上げたり騒がしい店内を見渡す。

そうしているとスマホが震えた。


(すいません。少し混んでいますので)


その言葉を見てから俺は(了解)と打ってから立ち上がる。

すると(ありがとうございます)と返事が来た。

キャラもののスタンプと一緒に。

俺はそのメッセージを見てから苦笑した。

それから俺は自販機に歩いて行く。

そして飲み物を買った。


「懐かしいなこの炭酸。2015年に廃盤になったんだけど」


そんな事を呟きながら苦笑しつつ俺は炭酸を飲む。

それから俺は空を見上げる。

そして俺は欠伸をしながら炭酸を持ってから席に戻る。

するとメルが戻って来ていた。


「ああ。メル」

「先輩。お待たせです。あ。その炭酸...私も買おうかな」

「そうだな。買ってきたら良いんじゃないか。奢ろうか」

「いや。私は自分で買います」


メルは微笑みながら自販機に買いに向かう。

しかしまあなんというか。

なんかデートの様な感じだった。


まさかな。

そんな感情はもう抱かないつもりだし。

メルがそんな感情を抱くとは思えないし。

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