第11話 原田教授の講義
「そうかあ。良い再会だったね」
「本当に。学生の頃からのまあ、悪友だったかも知れませんが、根は真面目だったんで、何とか立ち直ってくれて良かったです。」
「そうだね。」
「何でも、学校辞めた後はその日暮らしだったみたいですが、その子が来てから仕事も始めたらしいです。バーテンでしたが」
「そうなんだ。」
「まあ、何だか怪しい仕事では有りますが、そこで若い子にアドバイスとかしてたみたいです。やっぱり形は変わっても根っからの教師ですね。ナミは。」
「そうだね。」
今日はナミの話題のおかげか、増田くんの調子も良さそうだ。
もう少し話を聞いてみよう。
「ナミも新たな愛で救われたみたいだね。」
「はい。」
「増田くんも、愛を凄く大切にしてるね」
「そうです。」
「人によって1番大切な物って色々あるよね。例えば正義、誇り、名誉、お金…増田くんは何故愛なんだろう?」
「その事について、気付かせてくれた人がいます。」
「へえ!どんな人?」
「それは…」
○○○○○○○○○○
俺は学生の頃、客員教授で心理学を教えに来ていた原田と言う人と仲良くなった。
原田さんは丸メガネで、年は40代後半だったが、詳しい年齢は忘れてしまった。
俺のいた大学以外でも色々教えに行ってたみたいだ。著者も出している。
原田さんは面白い考察なんかする人で、兎角分かりにくい、カタイ話になりがちな心理学を色んな角度から面白く解説してくれる人だった。
その考え方は家庭教師の時や塾を開業して子供に分かりやすく、興味を持って貰える教え方の参考に凄くなった。
大学の講義以外でもよく訪ねて雑談をしていた。
卒業した後もたまに会ってくれて雑談してくれた。
この日は原田さんが好きなジャズ喫茶で軽く飲みながら話をした。
「ライブハウスみたいなギャーギャーした感じは苦手でしたが、落ち着きますね。」
「生演奏ってやっぱ良いよね。でも増田くんまだ若いしこう言う所つまらないかなって思ったけど」
「いえいえ、メインは原田さんと話がしたいんで。」
「ははは、有難う」
「今日はどんなお話してくれますか?」
「そうだなあ…あっ、今からゲストの歌手が歌うみたいだよ」
「ホントだ…暫く聴きますか…」
そう言って歌い終わるまで聴いていた。
「さっきのどうだった?」
「うーん、首から提げてる宝石に目が行ってました。」
「ははは!まあ俺もだけど!凄かったね。歌が耳に入らなかったね」
「全くです。」
「あのネックレスなら郊外なら一軒建つ位の土地位は買えそうだね。」
「そうでしょうねえ。まあ俺が一生かけて頑張れば貯まるくらいの値段ですかね。」
「そうだね、まあ普通はそう言う実用的な物に変えるよね。」
「土地に変えられる程の価値のある物をただ飾りとして首からぶら下げて歌ってる。無欲か見栄っ張りどちらでしょうね?」
「彼女の場合は多分後者だろうね。無欲ならあんなネックレス入らないよ。」
「やっぱりそうでしょうねえ。」
「そもそも人が1番大切に思う価値とは…」
「お!原田さんの講義が始まるな。楽しみ。」
「誇り、名誉、愛…金みたいな形の無い、具体性の無い物を1番に考える人も多い。」
「ですね。」
「まあ、そう言ったものは探せば大なり小なり何処にでも転がってる。」
「はい。でもその大の方は中々見つけて手に入れるのは大変だと思います。」
「そうだな。さっきのネックレスの宝石も人工的に作ろうと思えば似た物は作れるが、それは価値がない。」
「ですね。まあ普通なら人工的な方をこう言うラフな仕事では装飾には使いそうですが。」
「でも、彼女の場合は本物の宝石にこそ価値がある。例えば俺の1番の価値が誇りだとする。論文で認められる事がその誇りだとする。」
「はい。」
「認められる為に心血注いで人生をかけて取り組んで評価を得た物と、賄賂を使って簡単に評価を得た物、同じ誇りは手に入るが俺が欲しい誇りは前者だろう。」
「分かります。全く同意見です。」
「そもそも、1番だと思う指針は何処から生まれる?」
「やはり、自分…それぞれの人の中からでしょうかね?」
「そうだな。そして、生まれた自分だけの価値は大概1人では埋められない。人からも、周りからも集めて埋めていく。そうやって生きていくのが人間って性かなって思ってる。」
「成る程…」
俺の1番の価値は愛だと思う。
本物の愛に価値があると思う。
俺は生まれた時から何か大切なものが欠けている実感が常にある。
それを埋める為に俺は愛を生み出し、与えて、人から沢山集めていく。
今まで無意識にしていた。
でも、これが俺が生きていく性だって確信した。
「お前はこの後どうする?俺はそろそろ帰る」
「俺はこの後人と会う約束があるんです。」
「そうか…まあ遅い時間だし程々にな。」
「はい。また会えるのを楽しみにしています。」
この後、ショウと待ち合わせていた。
最近では主に向精神薬を買っていた
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