俺はやつらに自慢したいことがある
九文里
第1話 15年ぶりの同窓会
中学時代の同窓会をすることになった。もう三十も手前なのに、今更同窓会なんて。およそ十五年ぶりくらいになるだろうか。
といっても、やっぱり殆どの者は来ない。来るのは俺たちの仲間内ぐらいだ。
俺たちの学校は、中学から大学まである名門の一貫校だ。うちから他の有名大学にいく者も沢山いる。
竹石は俺たちの時代でも秀才と呼ばれる奴だった。その竹石が一流商社に入って長い間外国に行っていた、それが最近帰って来たので仲間の一人が同窓会を開こうと言い出したのだった。
竹石以外にも皆良い会社に勤めていた。
俺はというと、親の後をついで小さなスーパーの店長をしている。なので、あまり行きたくはないのだが、行くことにした。
俺はあいつらに自慢したいことがあったのだ。
同窓会の日、俺はとっておきのジャケットを着て出掛けた。
繁華街にある雑居ビル。奈落の底に落ちるような階段を降りていけば、木製の扉に当たった。そこを開くと、音楽と人の喧騒が俺の体を包んだ。
少し薄暗いような間接照明。カウンターと座席の間に立食するテーブルがあった。そのふたつの丸テーブルに見覚えのある奴らがいた。
男が五人と女が二人。
みんな大人の顔付きになっていたが、学校が大学までの一貫校だったので誰が誰か、だいたい分かった。
ただ一人名前が分からない女がいた。白いスーツを着こなしている髪の長い女だった。顔に掛かる髪の毛がやけにくねくねしていた。
「おー久しぶり。元気だったか」
那賀が俺を見て手をあげた。
こいつは良い奴だ、他人のことをよく気に掛けてくれる。今は、独立して税理士事務所をもっている。
「あれ、お前の着てるジャケットかっこいいな」
さすが那賀、気づいてくれた。そう、このジャケットなんだ。
「お前、それって今年ブリタニア王国の皇太子が結婚式で着ていたアルバート=リッチの新作ジャケットだろ。ヨーロッパで爆発的に人気になって、日本に入ってきてないのに、良く手に入ったな。高かったろう50万はしたんじゃないか」
坊っちゃん刈りをした中西が半ば興奮して言った。こいつは、昔からおしゃれに目がなかい。アルバート=リッチは、高級品で有名な男性服飾の世界ブランドだ。
ちなみに、こいつは一流の商社に勤めているが、担当は食料品らしい。
中西がそう言うと、みんなの視線が俺に集まった。
「ほんとか、凄いな」
高そうな背広を着た、髪を七三に分けた岸野が、どれと言って俺のジャケットの前をめくった。
「dear
おいと言って、俺は不機嫌な声を出した。
「でも、ロゴが違うぞ、ファルコ…、アルバート=リッチなら内ポケットの上にロゴが入っているはずだ」
「こいつは、偽物だな。お前、模造品をつかまされたな。偽物に自分の名前を入れるなんて、ちょっと引くな」
岸野は昔から嫌みな奴だった。今は、大手の機械メーカーに勤めている。
「いや、これは…」
「そうは、見えないけど」
俺の背中から声がしたので、後ろを見るとあの見知らぬ白いスーツの女が、俺のジャケットの裾をめくって半屈みでじっと見ていた。
「な、何してる…」
「しゃ…、笠垣さん、やめてください」
もう一人の女、宮崎が慌てて白いスーツの女を制止する。
宮崎は、中学から大学までずっとつるんでいた仲間なので、すぐ顔が分かった。
「ごめんね。星野君、彼女は私の会社の…」
「同期です」
笠垣という女が宮崎の言葉を制するように口を挟んだ。
──同期の割には少し老けてるような。
「ミカも佳子も来れないって言うから、私も来るのやめようと思ったんだけど、笠垣さんが同窓会って行ったことがないから行ってみたいって言うので連れてきたの。私たちの会社はアパレル関係でね、彼女も服には興味があって…」
「縫製は、丁寧だし肩口は手縫いになってる。生地もかなり良いものだわ」
笠垣は、宮崎が喋っているのもお構い無しで呟く。
「ちょっと手をあげてもらえますか?」
「はっ」
「いいから、手をあげて」
俺は彼女が何をしたいのか分からなかったが右手を肩ぐらいまで上げた。
「もっと高く」
「ええ」
偉そうだなと思いつつ、右腕を真っ直ぐ高く伸ばした。
「あっ」と宮崎が声を漏らした。
「えっ、何?」
「じゃあ、あなた手を上げて」
今度は岸野に向かって言った。
岸野もわけが分からず右手を高く上げた。
「ああ…」
その様子を見た宮崎がまた声を漏らした。
「何だよ…」
岸野が不審がって、笠垣の言葉を待った。
そこに、竹石が遅れてやってきてみんなの注目を集めた。
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