リーゼとテルア

チェンカ☆1159

エピソード0

憧れとの再会

 なんでこんなことになったんだろう……

 やたら可愛い声の通り魔に刺されたおれは、現在転生してマステライード家のご子息アグロス様のメイドとして生きている。

 おれ前世男だったんだけど!?

 なんで女になった上にメイドなんてしなくちゃいけないんだろう。

 いやまぁ、アグロス様には拾ってもらった恩があるよ?あるけども。

 なんか他の使用人達には遊ばれてる感じなんだよなぁ。特に料理長のソルネさんや騎士長のチモカナさんにはよくビンタされたり蹴飛ばされたりするし。

 今日だってソルネさんに暇だと思われて食材の買い出しに駆り出されてるし。一応これでも仕事あるんだけどな。

「よう、そこのメイドさん、うちの店寄ってかない?」

 突然女性に呼び止められた。その相手の格好を見ておれは愕然とする。

 彼女は網タイツと露出度の高いコスチュームを身に纏い、頭からは紫のうさ耳を生やしている。要するにバニーガールの姿をしていた。

「そ、その格好……」

「あーこれ?バニーガール。俺が元々いた世界だと男ウケ良くてさ」

「え、あの、もしかして前世持ちだったり?」

「前世持ちじゃねぇよ。転移してきたんだ。そっちは?」

「あ、えっと、自分は転生して来ました」

「マジか。名前とか聞いていい?」

「あ、えっと、テルアです」

「俺は一応リーゼって名乗ってる。よろしくな」

「は、はい。というか、その口調……」

「実はよ、俺転移前は男だったんだ。でもこっち来たらなんでか女になっててよー」

「あ、同じです。おれも前世は男でした」

「あ、やっぱ?そんな気がしたから話しかけてみた」

「そうでしたか……」

 話していてなんとなく思ったことが一つ。それは、このリーゼさんの話し方が前世で憧れていたあの人によく似ていることだった。

「そんな、まさかなぁ……」

「ん?どうかした?」

「あ、いや、こっちの話です」

「そうか。じゃあこっちから聞いても良い?」

「はい、なんでしょう?」

「前世、『甘照鶯』って名前で活動してたりしないか?」

「どっ、どうしてその名前を。まさか――」

「そのまさかだよ。俺『リセッター』」

「リセッターさん!?」

 思わず叫んでしまう。だってそれは、おれが前世で仲良くさせてもらっていて、その上憧れ続けた存在だったから。

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