エーテリウムの環

のら

第0章 The Biginning of The End

0.The prologue

 ※これは〈世界の神話〉として語られる昔話パートです。

 少し読みづらければ、次の「1.母の祈り」から読んでも物語には支障ありません。

 余裕のあるときに、世界の起源譚として楽しんでもらえたら嬉しいです。




 はじまりに、こゑはなかりき。

 こゑは、なおも みづからをききたり。

 きく もの なきがゆゑに、

 こゑは な をもたず。

 こゑ、うつしみ をもとむ。

 うつしみ、いまだひかりならず。

 いまだやみならず。

 ただ、みるもの なり。

 みるもの、こゑをしらず。

 こゑ、みるものをしらず。

 ともにありて、いまだふれず。

 とどろき、ここにおこる。

 とどろき、ゆらぎ をもちて

 ゆらぎ、とき をながす。

 ここに ふたつ わかたる。

 ひとつ、かえらむ とするもの。

 ひとつ、とどまらむ とするもの。

 かえるものは、しづか にして

 とどまるものは、うごき をもちぬ。

 しづかは、わ をえがき、

 うごきは、わ をさく。

 されど、わはさかれず。

 さかれしのち、なほ まるし。

 みるもの、これを わすれたり。

 こゑ、これを よびかく。

 なを もつな。

 ただ、そこに あれ。

 あれを すつな。

 ただ、みよ。

 みるもの、おわりのまへ にのみ、これをさとる。

 さとりしとき、みるもの、うつしみ をぬぎ、

 こゑへと かえる。

 ここに、せかいはひとつ いき とならむ。

 いきは、はじまりとおわりを

 おなじところ におく。



 ≪神魔学術研究院所蔵、古王国期出土石碑「環(まどか)の書」原文≫ 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る