第27話 登録者777人


〔ルーカスのキューシュー☆チルちゃんねる〕登録者777人 REC●ライブ中


 やっほー! こんにちルーカス!

 今日はマスターと少し足を伸ばして、背振山地に来てます!


 リンゴがたくさん生えてるところがあるんで、リンゴを収穫しにやってきました。

 ここ、温泉があるみたいなので、楽しみですね。


 え? ダンジョン?


 いや、俺らはそういうのしないんで……。



 ごめんね、俺、強い冒険者じゃないんですよう。

 自分で言ってて悲しいんだけど。

 レベル? え、概要欄に書いてるけど、8ですー。

 いいだろ、別に。

 もう何年もギルドに行ってないんだよ。

 さあ、登録申請したら?

 どうだろ10レベルくらいじゃないですかー?


 はいはい、それでも生きて行けてますよ。

 底辺冒険者、そう、マジで俺がランキング最下位なの。

 3000万人いるんだけど、だいたいいつも3000万位ですね。

 新人がやってくると、一日とか二日だけ、順位が変動するんだけど。


 なんで、って……うーん。

 そもそもが、生き物を退治するとかっていうのが苦手で。


 ほんと、冒険者なんかになっちゃって、国には申し訳ないんですけど。

 税金返せ? あー、ははは、ごめんね。


 でもね、俺も当時は結構必死で、最初は頑張ってたんだよ。

 だけど向き不向きってのがあるみたい。


 だって、未だにポイズンスネークにどうやっても勝てないんだ。



 俺もいつかマスターみたいに、店出そうかな。

 どうですかね?

 え? 一度冒険者になった者は転職できない?

 そうなの? マジで? なんで?


 本土に帰って違約金を払って還俗するか、ここで働き続けるか?

 え? レストランとかもだめなの?

 救州にだって一応店があるじゃん。

 美容室とか、病院とか。

 あれって元冒険者じゃないの?

 え? ほとんどギルド――国の派遣の人!?

 うっわ、知らなかった。


 じゃあ、ほんとに俺、冒険者にしがみついてないとだ。


 てか、家族ももらった1億円使っちゃったと思う。

 あー、そうそう、冒険者になると貰えるんだよ。

 最初に1度だけ、国から支給されるの。

 俺は本土の家族に渡しちゃった。

 いや、だってどうせここでは使えないしさ。


 あー、最近登録者さんも増えて、嬉しいんだけど、結構本土の子ども? も見てくれてるみたい。ありがとうね!


 そう、大人は分かってると思うんだけどさ。

 みんなが本土で使ってるのは『円』だけど、ここだと『ゴールド』って単位になるんだ。

 食べ物を買うにも、魔導石を買うにも、何でも『ゴールド』がいるんだ。


 家賃は要らないよ。ほとんどみんな宿屋に泊まるから。

 宿屋には、冒険者のパスを見せたら格安で泊まれるんだ。

 それでも、5ゴールドとかは要る。

 だから俺も一応モンスターを倒してそれなりに稼いだりはしてる。

 そう、スライムとか。あははは。


 モンスターの中には『核』が入ってて、これが金色なんだよね。

 これがそのまんま、ゴールドになるんだ。

 すげーたくさん稼いでるやつは、このゴールドを加工したり、交換して魔導石っていう『魔法が使えるアイテム』に変えてる。



 え? 


 冒険者が魔法が使えるのはなんでって?




 んなわけないじゃん。

 人間だぞ、俺ら。

 魔法なんか使えないよ。




 魔導石のおかげ。




 この魔導石ってのが便利で、焔を出したり、雷を操ったり、宇宙のダークマターみたいな力を集約させたり、まー、俺みたいなの底辺にはよく分からないけど、すんげーことができるらしい。


 それは、視聴者のみんなの方が詳しいかもな?

 すんげー人って、すんげーんだろ?


 だから、本土のみんなの中には、冒険者のこと魔法が使える人間って思ってる子がいるかも。

 でも、それは、誤解でーす。

 ランク1位の人も、俺も、みんな人間なんだ。


 今、ランキング1位って誰なの? ここ何年も勇者やってる人? へえ、すごいな。オニクシアスっていう人なんだ。そういう人は魔導石もいっぱい持ってるんだろうなー。

 

 俺、あんまり他の冒険者のちゃんねる見てなくてさ。

 え? なんでか?

 悲しくなるからな! 言わせんなよ。あっはっは。


 まあ、冒険者って一応言ってるけど、もう俺はたぶんほぼ一般人なんだと思う。

 昔はそれなりに落ち込んだけど、最近、それもいいかって気になってきたんだ。

 始めたころは、最強の冒険者になろうと思ってた。


 けど、俺にはむいてなかった。


 だけど、ここは好きなんだ。

 救州って書いて、キューシュー。

 ここで頑張ったら、本土が平和になるなんて、すげーと思う。


 だから俺は俺のやり方で、冒険者たちが元気になれるように力を尽くしていきたいなって。マスターと過ごしているうちに、そんなふうに思えるようになったんだ。

 この酒場に来る冒険者たちは、みんな夢みたような顔をして帰っていくからさ。


 ね、借金完済しても、俺のこと、捨てないでくださいよ、マスター。

 あははは。



 さ、それでは背振山地に突入です!

 リンゴだリンゴ!


 ここ、すんげー草が茂ってて、モンスターもうじゃうじゃいるんだよな。

 岩もいっぱいあるし。

 眼鏡橋っていう橋があってさ、なんともいえない風景です。




 人が住んでたときは、もっと賑わってたんだろうなあ。



 えーっと、リンゴ園だった場所はこのあたりかな?

 わあ、きれいだなあ。

 おお、ちゃんと残ってる!

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