第7話 答え合わせ:マスターの話



「お客様方はパーティーなのですね」


話を振ると、赤魔導士はギクッとして動きを止めた。

ああ、ついさっき知り合ってダンジョンに潜ってきた、とうなずいた。


「だけど、こいつのレベルがなかなか上がらなくて……」

「そうでしたか。ちなみにどこを?」

「七ツ釜の鍾乳洞の探索」

「ああ、そうでしたか。あそこは蛇やら百足やらがたくさん出るでしょう」

「そうなんだよ。それでポイズンスネークにやられたら、こいつ、自信なくしちゃってさ」




隣の赤魔導士に、冷えたダイダイ・ウォーターを提供する。


ダイダイというのは柑橘系のオレンジ色の実。

覚醒作用がある。



マスターはグラスを磨く。

小さな声が聞こえた。


耳が良いので、嫌でも聞こえてしまう。


「おい、なあ、お前さ、助けてやった恩ってあるだろ。金は結構ありそうだもんな……俺、マジで金ないんだよ。だからさ、悪く思うなよ」


「う、ううーん」


「つかお前、向いてねえよ、この仕事。冒険者バッジもいらねえだろ。ハハ、これがなけりゃ一生冒険者としては働けねぇな。再発行には莫大な金がかかるし……優しい俺が引導渡してやるか……待てよ。捨てるより、売ればいいよな。そうじゃねえか、大金持ちになれるかも」



赤魔導士の目がにんまりと持ち上がる。




「それ以上はおやめ下さい」

と、マスターは客をいさめた。


春先は時々いるのだ。

こういうヤカラが。



「は? なんだよ」

「私の店で犯罪行為は慎んで下さい」


赤魔導士はいきなり、

『ファイア・ボム!』

と詠唱した。



マスターはサッと身を引く。


「チッ……悪く思うなよ、俺はもうランク60だ!」



グラスが割れてはいけない。

マスターは慌ててバリアの呪文を唱える。


「ああ、びっくりしました。お客様、酔いすぎですよ」


今ならそういうことにしてもいい。

できれば勘定を済ませて、すぐに帰宅してほしい。

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