第8話 真剣勝負

2人は円形闘技場で向かい合った。

 「さあ!お互い全力で頑張ろう!」

 「うん!望むところ!」

 2人は剣を構えた。

 2人の緊張が全体に響く。

 そして、2人同時に言った。

 「勝負!」

 サクラは初手からカグラに向かって神速・虚殺を使って急接近した。しかし、それをカグラは剣で受け止めた。

 鍔迫り合いになって、隙を探る。

 「やはり最初はそう来ると思った!」

 カグラには少し先の動きが見えているようだ。

 「そこっ!」

 カグラは、斜め上から素早く剣を振った。

 「くっ!」

 カグラの鋭くて、迷いのない攻撃に、受身を取っていたサクラの体はもつれた。

 続けて突きの攻撃が来たため、それを上手く剣で流して距離を取った。

 カグラは剣に雷を纏わせた。

 「桜庭一刀流・弐之型 雷刃らいじん

 カグラの剣撃は刃の形になって、地面を抉りながらサクラに向かって飛んでくる。

 サクラは飛んでくる刃を間一髪で避けたが、避けきれずに、左肘に掠った。血のエフェクトが出て、体力が少し減った。

 「ほう、なかなかいい動きだな」

 サクラは少し嬉しそうにした。

 再び剣を構え直す。

 サクラは初手の一撃では倒せないと考えて、どうするべきか考えた。

 真っ向から向かっても、カグラには見切られてしまう。下手に攻めることもできない状況に歯を食いしばった。

 「さあ!いつでも来い!」

 サクラは再び神速・虚殺で正面まで来ると、目の前で一瞬で後ろに回って、そこから連撃を行った。

 「ぐっ!はぁっ!」

 連撃を食らいながらも、カグラは剣を振り下ろして、サクラと距離を取った。

 「やった!私でもできるんだ!」

 「…今のは…私にも分からなかった…」

 再びカグラは立ち上がった。

 「まだこんなものではないだろう!サクラ!」

 「当たり前!」

 2人は闘技場の中央で剣を交わした。


 

 「ほう、珍しいな、カグラがあんなにワクワクしてるの!」

 「んにゃ?そうなのかニャ?」

 イザベラには喜んでるようには見えないようだ。

 「ああ!普段は落ち着いてて、あまり自分を表に出すやつじゃねぇが、今のカグラには心から楽しいって伝わってくる!」

「それは良かったニャン!」

 2人は待機場で盛り上がった。



 2人の動きはさらに加速する。アリーナの壁に激突する音がしたと思うと、違う場所で火花を散らして、地面が凹んだりした。

 激しい攻防の末、再び中央で構えた。

 「サクラは風属性か?」

 突然属性を聞かれて、サクラは困惑した。

 「え?いや、違うけど…でもなんで属性なんて聞くの…?」

 「サクラが踏み込む時、足元に風属性の魔力が働いて加速しているから、そういうものかと思ったのだが、違ったのか?」

 「そうだったの?知らなかった」

 サクラは自分が風をまとっているなんて思っていなかったようだ。

 「まあいい、次で最後といこうか!」

 「うん!」

 カグラは再び剣に雷を纏った。すると、周囲が雷雲に包まれた。

 サクラも神速・虚殺の体勢になった。

 「桜庭一刀流・参の型 落雷」

 カグラは剣を大きく振りかぶった。

 サクラは順手で剣を重ねて、首元を狙って踏み込んだ。

「はぁ!」

 カグラは間合いに入るのを見切って、剣を振り下ろした。

「せぇい!」

 2つの剣が交わった瞬間、周囲に轟音が響き渡った。

 光って、何も見えなくなった。


 光が収まると、闘技場の中央で、サクラの剣が2本とも地面に突き刺さっていて、サクラの首元にカグラの剣が添えてあった。

「私の勝ちだ」

 サクラは降参の意思を示して、勝負が終わった。

 カグラは剣を収めて、手を差し出した。

「いい勝負だった。また戦いたい!」

 サクラはカグラの手を取って、立った。

「うん!またしよう!次は負けない!」

 サクラは笑顔でそう返した。


 2人は待機場へ戻ってきた。

 待機場に戻ってきた2人を、イザベラが迎えてくれた。

 「2人ともすごかったニャ!こんな熱い戦い初めて見たニャ!」

 「お疲れさん!とてもいい勝負を見させてもらった!」

 休憩をしている最中、鍛冶屋の主が思い出したかのようにカグラに言った。

 「あぁ!そうだ!サクラは太刀を試しに来たんだ!カグラ、教えてやってくれないか?」

 カグラも思い出したかのように笑いながら返事を返した。

 「そういえばそうだったな!サクラ、行けるか?」

 サクラは迷いなく答えた。

 「もちろんです!よろしくお願いします!」

 サクラは刀に持ち替えた。

 鍛冶屋の主も大剣を持った。

 「イザベラ!今から大剣の特訓だ!行けるな!」

イザベラは目を輝かせて大剣に持ち替えた。

 「もちろんニャ!」

 元気よく答えて、待機場に入った。

 続けてカグラとサクラも入った。

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