花火と夏祭り(後編)
焦ったように視線をキョロキョロ動かしながら口をパクパクさせている高城。やっぱ、俺のせいだよなぁ…。思い当たることがあるけどなさすぎてわからない。
「りんごあめ、買おっか。」
驚いたように顔を上げる高崎と目が合う。「いいの?」という言葉は声にならず口だけが動いた。でもすぐに笑顔で
「うん。」
と言った。
それから俺たちはたこ焼き、ヨーヨー釣り、チョコバナナ、など屋台を楽しんだ。もうすぐ花火が上がる。海崎と晴希に連絡したが一向に既読がつく気配がない。仕方がないから二人で見ることにする。
「あのふたり既読つけないな。このままじゃ花火始まっちゃうし。はぁ、探しに行くか。」
と高城は言うが、「いいよ。」と返し高城の手を引いて歩き出す。
「え、え?」
困惑した声が後ろから聞こえてくるが、無視した。俺だけが知ってる、穴場スポット。きれいに花火が見える特別な場所。いつも夜景が綺麗に見えるから誰か知っててもおかしくないノイ誰も気づかない。
ヒュ~〜〜〜〜〜〜〜ドーーーン
ついた瞬間、大きな花火が上がった。
「わっ!きれい…すごい」
キラキラとした瞳で空を見上げる高城。座るように誘導したけどその間もずっと花火に見惚れていた。その姿は無邪気で楽しそうで。4月に出会った時を思い出した。こいつ
「桜は似合わないけど花火は似合うやつだな」
「え?ごめん、きこえなかった。」
「ふはっ。なんでもないよ。ひとりごと。」
なんか、漫画あるあるなことしちゃったな。「気になる!ねえ教えて?ねえ悠真ー!」と騒いでいる高城に目を向ける。ムスッとした顔でこちらを見ている高城はいつもと同じだった。
ヒュ~〜〜〜〜〜〜〜
「さっきまでのはなんだったんだよ」 ド〜〜〜〜〜〜〜〜ン
「え?なんて?」
「だからぁ!…あ、そうだ」
声を張り上げても聞こえないと思い、耳元で話す。
「さっきまでの挙動不審なお前はなんだったんだよって話。」
「っ!…みっ、耳元で話すなバカっ」
片耳を抑えて下を向く。耳まで赤くなっちゃてんじゃん。あ、そっか高城は耳が弱いんだった。ちょっと悪いことしたな。でもまあ仕返しだ。
ヒュ~〜〜〜〜〜〜〜
「やっぱ俺、好きなんだな、悠真のこと。…なんだ、そっか。うん。 」ド〜〜〜〜〜〜ン
「え?なんて言った?」
「いやっなんでもない!なぁ悠真、これからよろしくな」
「?急になに?」
「んっふふ。なんでもなぁい。」
上機嫌になった理由が知りたいが「なんでもないよ」「頑張るって決めたんだぁ」としか答えない。今度は俺がムスッとすることになった。
「や〜、楽しかったねぇ。」
花火が終わり、帰り道で晴希・海崎ペアと合流した。海崎は相当楽しんでつかれたのだろう、眠そうにうとうとしながら歩いている。晴希は両手いっぱいに綿あめやら金魚やら二物を持っている。晴希が言うにはすべて海崎のものらしい。
「楽しかったねぇ、じゃない!なんで急にどっか行くんだよ。」
「え〜?別によくない?ふたりとも仲直りできたっぽいしさ。」
やっぱり傍から見ても距離があったらしい。
「高城は覚悟決めた感じ?」
「…。まぁ。」
なんか俺の知らない話してる。もしかして、なにか悩みでもあったのかもしれない。んで、あのきれいな場所から花火を見て、なにかを心に決めた。それをポロッと声に出してしまい、俺に聞かれかけた。なんだ、そういうことか。これがわかってしまう俺って結構天才だな。
と思っていると、晴希が高城に顔を寄せた。耳元でなにか言っている。
「じゃあ、俺ら同盟結ぼう。」
「だねぇ。」
なんかここも仲良くなってる‥。もしかして:俺1人ぼっち?少し野次を飛ばすことにする。
「二人だけの世界入んなよ。俺もいるからな!」
「はいはい。わかってるy…いや、やっぱ理由聞きたいわ。(?)なんで二人の世界にしちゃだめか。」
ニヤニヤしながら聞く晴希。理由も何も。本人も質問内容理解してなくないか?まあふざけたいだけだろう。
「んー、そうだな…。俺の相棒だから」
「…。だな。」
「…大正解!正解おっけーおっけー。よし。うん。」
何だこの空気。顔赤くする高城。めんどくさそうにあしらうけどニヤニヤ笑う晴希。俺もそうだけどばかだな。
かくして夏祭りは終わりを迎えた。
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